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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第3章 フレイフ王国救済編
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第63話 お見送り

朝、城前。

凡太、レオ、アイ、レオの父母兄、騎士達が集まっていた。


「本当に戻ってくるつもりはないのだな」

「はい。もう決めたことなので」

「お前さえよければ、いつでも相応の地位と場所を与えるぞ?」

「昨夜も言いましたが、僕には既に相応の地位と場所があるので不必要です」

「分かった。体に気をつけてな」

「はい。兄上こそ、お元気で」


レオがワレスと別れの言葉を言う後ろでアイが父母に別れを言っていた。

こうして王国を後にするレオ達。


その姿を見て昨夜言っていたことを思い出し、父にそれを確認するワレス。


「レオの今後の方針である“(ボンタ)の勇者兼護衛兵として側にいる”ということはやはり本気だったということですね」

「最初聞いたときは驚いたが、その言葉を言った昨夜のレオの顔と先程のレオの顔はどちらも覚悟を決めている顔だった。二言はないだろう」

「そうですね…。私はレオの人生をめちゃくちゃにした大罪人。その罪滅ぼしの為、今後は全力でサポートし、願いを叶えてやる義務があるのです。そして弟のあの可愛い笑顔を守り抜くことが私の使命です!手始めに武器・防具などの最先端性能のものを揃えて送るつもりです。それから――」

「う、うむ。頑張るのだぞ」

(改心したのはいいが、前よりひどくなってないか?)


洗脳が解け、陰のブラコンが本来の陽のブラコンとなったのはよかったが、今まで抑えられていた陽側が爆発した模様。

レオの苦労は今後も変わらないだろう。

今度は悪い意味ではなく良い意味で。


レオ達を見送る騎士達が昨日の決闘を振り返っていた。

「レオ様は本当に強かった。まるで勝てる気はしなかったよな」

「ああ…。反対に少し申し訳ないがタイラ殿には全く負ける気がしなかった。そのおかげか、気分よく戦えていた気がする」

「俺もだ。そういえば、あまりにも自分の思い通りに攻撃が当たるものだから調子に乗って攻めまくっていたなぁ」

「自分の思い通り…?まさかな」何かに違和感を覚える。

「どうした?」

「いや…俺達の思い通りになるように攻撃にわざと当たりにいったのではと思ってな」

「ありえないだろ。あの時のタイラ殿は体力切れ寸前だったはずだ。そんな人がわざと当たりにいってただでさえ少ない体力をさらに少なくする理由がなかろう」

「そうなのだが、タイラ殿の最優先目的が足止めであることを考えると最適行動だと思わないか?」

「つまり…俺達を気持ちよくする為の接待戦闘をやっていたとでもいうのか?余力のないあの状況でだぞ!?ありえないだろ!」

「だからまさかと思ったんだよ。真意がどうであれ結果的に足止めは成功させられた。俺達は勝負には勝ったが試合には負けた形になったのは事実だ」

「俺達はレオ様と戦うまでには全員がほぼ魔力切れで身体強化魔法を使えない状態にしただけでも十分な功績なのに、そこからさらに体力と時間を削れるだけ削った…」

「しかもこちらの負傷者はなし…成果としてこれ以上に完璧な足止めはない。もしや最初からここまですることが本当の狙いだったのか?」

「「…まさかな!」」 


二人は顔を見合わせ笑う。


「あのギリギリの状況下で味方のことを気遣い足止めするだけでも大変なのに我々のことまで気遣うことなんてできるわけがないだろう」

「そ、そうだよな。ちょっと疲れていたからか妄想が過ぎた。すまんな」


こうして苦笑いをしつつ、急いで会話を切り上げる2人。

まるで凡太の本当の狙いを認め、それに恐怖し隠すように。



~~~


神役所。

設定課、調整ルーム。

ここは神達が管理する数百種の異世界における環境や異世界生物の設定などを管理し、調整する場所。設定課スタッフが数10名でスキルボードのような半透明モニターをみてキーボードのようなもので設定を打ち込んでいる。

ここで調整することにより過度なチートや圧倒的な力を持つものや過度な弱者を生まれにくくし、異世界内のバランスをとるのが目的だ。


事務上司が設定課チーフと話している。

「調子はどうですか?」

「相変わらずですよ…昨日もレベル80の魔物が当然変異で現れてなんとか処理しきったところです」

「お疲れ様です…」


忙しさは事務の方と同じようだ。


「そういえば、この前の平さんの活躍は観ましたか?最近嫌なことが多くて彼の活躍を観ることが唯一の癒しなのです…」

「そうでしたか。彼を見ているとこちらも頑張りたくなるというか活力が湧いてきますよねぇ。分かります」


凡太のプチ人気は健在のようだ


「癒して貰っているお礼として今度彼の世界に丁度良い設定の魔物を出現させ効率的に能力向上の為の経験値を稼いでもらおうと計画しているのです」

「そりゃいいですね。ただ、神AIの判別には引っかからないようにしてくださいね」

「分かっていますよ。引っかかれば彼が消えて癒しもなくなってしまう。なので、いつもより慎重にやらせてもらいます…」

「なら安心ですね。魔物の件、楽しみにしています。では」


チーフに別れを告げ、調整ルームを後にする。

出たところで熟女神が立っていた。


「さっきの話面白そうねぇ。私もあの子のファンだから楽しみだわぁ」

「お前か…。いいか、平さんには手を出すなよ。1カ月前、お前の気に入ったと言っていた男が理不尽な強さの魔物に惨殺されたばかりだからな。あのときはバグってことで済まされたが本当はお前が何かやったのだろう?」

「どちらでもよくなぁい?あの程度で死ぬならそれまでの子だったという事でしょ?」

「違う。彼は勇者覚醒間近だった優秀な人材だった。あと半年もすればあの魔物に勝てるだけの飛躍を見せただろう。お前がその芽を早めに摘まなければな…」

そう言って、熟女神を睨む。


「済んだ事だしもういいじゃない。いくらでも転生・転移者の替えはいるのだし、また育てればいいのよぉ。そしたらまた遊べるしぃ」

ニヤリと笑う。


(こいつがやったことで確定だな。この女、嫌いだわ)

「もう一度言っておくが、平さんには絶対手を出すなよ。いいな?」

「はいはい。分かりましたぁ」


事務上司は自分の仕事へ戻っていった。


~3時間後~

調整ルームでチーフが凡太のレベルアップ用の魔物を調整中。


「レベル51くらいがベストだろう。こいつが平さんにやられるところが楽しみだ」


設定完了したらしく一息つく為、休憩室に向かう。

その入れ替わりで誰かがルームに入っていった…のは気のせいだろう。

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