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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第3章 フレイフ王国救済編
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第61話 デジャヴ

ワレスにアイの状況を聞いたところ、城内での監禁はしているが拘束することなく自由に生活させているらしい。

レオ一人狙いだったということだ。


改心したワレスから食事会に招待された。

ワレスに村で報告を済ませたら行くことを伝え、先に城の方へ戻ってもらった。


凡太とレオは村に戻った。

村の出入口ではモーブとレイナが待っていた。奥の方に村人全員の姿が見えたのは気のせいだろう。


凡太が親指を立てるとモーブが頷く。

通じたようだ。


そこへレイナが物凄い勢いで近づいてくる。


「おうふっ!」


ラグビーのタックルをくらうような形で凡太が倒される。


(制止を聞かずに行ったことをよっぽど怒っていたんだろう。甘んじて受け入れますとも)


タックル後のレイナは凡太の胸に顔を埋めて黙ったままだ。

凡太も反省の為、黙ったまま。

5分後ようやくレイナが顔をあげ、2人とも立ち上がる。

レイナの目が真っ赤だ。


(目を充血させるほどとは…想像以上にお怒りの様子。一先ず謝っておこう)


「ごめんなさい…」

「本当に反省していますか?遅いから…心配してたんですよ…」


鼻声で泣きそうな顔のレイナに拍子抜けした顔をする凡太。


「大袈裟だよ。たかが無能一人が危険にさらされただけだろ?何の問題もないじゃん」


ボグッ


「はうっ!」


レイナから腹に1発入れられる。


ボグッ、ボグォ!!


「はうっ、はうわっ!!」


その後なぜかレオとモーブからも腹に1発入れられる。


「なんで殴られたの…?」

「どうしようもない人だからです」


そう答えたレイナの言葉にレオとモーブが力強く頷く。



この後、アイを心配していた村人達にアイはフレイフ王国に招かれており、今からそれを迎えに行くという強引な嘘をついた。

何かを察する村人とそうでない村人がいたが、アイが無事ということを知れただけで満足だったらしくそれ以上の追求はされなかった。


軽く休憩をとり、王国へ向かう2人。

城へ着いたのは夕方頃。

案内され食事会会場に向かう。

会場は体育館くらい広さ。

そこにはレオの父である王と母である妃、錚々たる顔ぶれの方々(今回も教育長は欠席)や騎士達、城で働く人達がスーツやドレス姿で集まっていた。

凡太とレオもスーツ姿に着替えさせられていた。

食事は洋食中心のビュッフェ形式だった。


「今日は思う存分楽しんでいってくれ」


ワレスの一言が食事会開始の合図となり、皆が楽しく話し出す。

そこへ赤いドレスの美女が走ってレオ達の下へやってくる。

アイだ。


(今日はドレス効果もあって美しいな。あんなに急いで…レオのことがよっぽど心配だったんだな。兄妹水入らずの時間を邪魔するわけにはいかないし、モブは黙って去るのみよ)


いつものように隅の方へ移動を開始する。

そしてアイが心配だった相手に抱き着く。


「ずっと心配してたんだから…」


泣き出すアイ。


(あのー相手間違えていませんか?私はただのおっさんですよ。レオはあちらです)


美女に急に抱き着かれたおっさんが予想外の展開に混乱し始めている。


「あんたはいつも自分のことより他人のことを優先するからいつ犠牲になって死んじゃうか分からないもの…生きていてくれて良かったぁ…」


まだ泣き続ける。


(嫌いな奴に情が入り過ぎでは?…なるほど。俺はこの娘にとってのペットなんだ。自分のペットが急に死んだりしたら悲しい。愛着を持たれていたわけだ。まずいな…愛着を持たれては今後の縛りプレイ攻略時に支障がでる。無価値でないと死に辛いではないか。急いで嫌われなくては…しかしどうやって…)


目をつむり、思考を回転させ、起死回生の策を練る。

目が開かれた。この間5秒。


(抱き着き返せばいいんだ。そうすれば抱き着き状態が強制解除され、いつものキモイからの殴られパターンに発展できる。今回はおまけに臭い台詞も混ぜてやる。これでよりキモさを増強することができる。我ながら見事な策よ…)


深呼吸。


(いくぞ…)


ギュッ


抱き着き返す。

アイの身体が若干強張る。


「大切な人が居るのだからそう簡単に死ねないさ。今まで離れていてごめん。もう離さないよ」

(見たか。これがキモさの最高点よ)


ギュッ


ドヤ顔のおっさんに攻撃が入る。

いつもの拳ではない。

なんと抱き着き返し返し攻撃だ。


「私も…もう離さない」

泣いたままさらに抱き着きの密着度をあげるアイ。


(どうしてこうなった…。誰か、た、助けてぇー!)


周りを見ると2人の様子をみて祝福するように拍手したり、感動して見守る人がいた。

その一人にレオも混じっていた。


(そうだ。君は俺の勇者だろ?勇者ならこの危機から俺を救ってくれ!)


全力で救助信号を目にのせて発するがレオには届かず笑顔で返されるだけだった。

というか、レオも少し泣いていた。


(勇者でも敵わないものがこの世に存在していただなんて…)


こうして勇者に見捨てられた男はただただ状況に流されていった。


~10分後~


流された男の左腕は抱き着かれた状態。

2人はその状態のままビュッフェを食べていた。

レオは父母兄と親子水入らずで話していた。


「あの家族団欒空間に混ざらなくていいのか?」

「いいのよ。こっちに来ている間はずっとおしゃべりしていたから」

(この誘拐期間は拘束されるどころか、ただ娘として歓迎されていただけか。ワレスさんの狙いは本当にレオだけだったってわけだ。)


「少し行儀悪いぞ」

「しょうがないじゃない。離れたくないんだから。はい、あーん」

「モグモグ…しょうがなくない。ほら、ソースがドレスに少しこぼれたよ」


ハンカチで丁寧にふく。その姿を笑顔で見つめられる。


「あっちに美味しそうなものあるよ。いこう」

「あ、ちょっと。まだ食べていたのに」


(まずいな…流されていたらテンプレのような良い雰囲気に巻き込まれてしまっている。急いで策を練らねば…)


移動中、腕越しにアイの胸の感触が伝わる。

ドレスにより胸元がいつもより露出されているのと、抱き着きの高密着により伝わりやすくなっていたのだ。


(これだ…胸が当たっていることを指摘すればスケベ・キモイからの殴られパターンに発展できる。今回はおまけに臭い台詞も混ぜてやる。これでよりキモさを増強することができる。我ながら見事な策よ…)


デジャヴ感を出しながら男がタイミングを計る。


(いくぞ…)


「胸が当たるくらい近くにいてくれてありがとう。一番大切な人と一番近くで過ごせて幸せな時間だったよ」

(見たか。これがキモさの極限点よ)


ギュッ


ドヤ顔のおっさんに攻撃が入る。

いつもの拳ではない。

なんと抱き着き増し増し攻撃だ。


「嫌がられているのかと思ってた。そっか…幸せだったんだ…。だったらもっと近くにいないとね」

幸福感が増した笑顔のままさらに抱き着きの密着度をあげるアイ。


(どうしてまたこうなった…。誰か、助けてぇー!)


周りには誰も、レオすらもおらず孤立状態の2人。

先程から周りの人達はこの2人の様子をみて邪魔をしないように距離を取っていた。


(万事急須。もはや受け入れるしかあるまい)


開き直る方向へ。


(そういえば、アイはレオのことどう思っているのだろうか。直接は聞いたことなかったし本心は不明のままだったんだよね。聞いてみるか)


「そういえば、アイには好きな人はいるの?」

「…いるよ」 俯きながらそう答えた。


(兄妹ルート確定。レオよ。一足先に祝福するぞ)


「よかった。これで両想いだな」

「それってどういう意味?」

「そのままの意味だけど。両方がお互いの事を好きっていう…」

「あんたもそうだったんだ…嬉しい…」

「泣くほどなのか?何なら俺が2人に出会った当初からその可能性はあったぞ」

「そうかもね…。最初に会ったときからあんたには何か違ったものを感じていたのかもしれない」


(“あんた”ってレオじゃなくて?あー恋のキューピット役的な。それで何か違ったものを感じたわけか)


「これからは俺が責任をもって(2人を)幸せにしてやるから覚悟しとけよ」

「うん!覚悟しとくね」


泣き笑いするアイ。悲しさよりも嬉しさが勝っているようで何よりだ。


各々想い人に対し違いはあるが両想い自体は成立したのであった。



食事会の賑わいが少し落ち着いた頃。

レオが特別教育長のところへ歩いて行った。


「お久しぶりです」

「こちらこそ久しぶりです。見違えるほど成長しましたね」

「ありがとうございます。ちょっと昔話に花を咲かせませんか?」

「いいですね。あなたの成長の経緯を聞くのは勉強になりそうだ」


そう言って外に特別教育長を連れ出す。

もちろんセットで付き人がついていった。

静かな場所で花を咲かせるようだ。


凡太の方は今や左腕専用防具のようになったアイを装着しながら、珍しく会場の全出席者に挨拶回りをしていた。

人見知り脱却の為、心でも入れ替えたのだろうか?


1時間後、凡太が丁度挨拶回りを終えたタイミングでレオとセット2人が会場に帰ってきた。


凡太がふと何かに気づく。


この展開は…


「ちょっと立ちションに行ってくる」


尿意に気づいただけだった模様。


「着いてきちゃ駄目だからね。恥ずかしいから」

「駄目と言われても着いていくわ。恥ずかしいのは我慢しなさい」

「つれないね。僕も混ぜてよ」


女性もいるが大丈夫だろうか。

そんな心配を余所に仲良く立ちションにいく3人であった。

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