第6話 ノーキンという男
3日目朝。
この村では木造建築の家やテントなど各々が好きなものを家としているようで統一感はない。
村共同の風呂場や料理スペース、トイレ、井戸など一通り揃っていた。
水田の他にも養鶏所があり、朝早くにいけば卵を恵んでもらえる。
食事は料理スペースの隣にみんなが集まって座れる食堂があるので、自分で料理したものをそこで食べている。
凡太は昨日と同じように料理スペースで食べ物を分けてもらい自炊している。
今朝のメニューはダイズンスープとサラダ、ゆで卵×2だ。
凡太は昔不摂生で体調を壊してから、食事に気をつけるようになった。それ以降は糖質は控え、毎食タンパク質20gを摂取する習慣を身につけた。
朝食が終わったところで、今日はサムウライ村の情報について調べた。
サムウライは鍛冶が盛んな村で村人が愛用している剣はすべてここで作られている。剣は鋼製。使用武器について、兵器などは持ち合わせておらず、剣でのみ戦う。
大きな戦力として、ノーキン・パウワというヤミモト軍団を指揮する隊長がいる。ヤミモトの次に強い大男。そんな実力者の上にスキルまで所有している。
そのスキル名は“強乱圧迫”。自分から半径50m以内の生物を強制的に恐怖状態にする効果。強力なスキルだが、発動の維持に自身の体力と魔力がかなり消費され、最大10分が限界らしい。噂によると最初は1秒だったのを激しい筋トレ・脳トレによってそこまで伸ばしたのだとか。その弛まぬ努力に対しては敵ながら敬意を表したい。
次にこのスキルの効果対象となるのは、自分より能力の劣る生物である。現段階で対象外なのはヤミモトだけなので、実質全員に有効な非常に厄介なスキルだ。その厄介さは敵だけでなく味方にも及ぶ。彼はよく味方のいるところでもこのスキルを使うので厄介者扱いされており、最近では戦闘以外の日常生活でも距離を取られているようだ。それにしても“スキルは隠しておくことが基本”と、昨日スグニが言っていたにもかかわらず、なぜこの男のスキルが知り得たのか。それは「男は隠し事などせん」という彼の信念により、スキルをまる見えにしてくれていたからだ。
(この堅物脳筋野郎め。でも、嫌いじゃないんだよな。このタイプ)
現在ガンバールの村周辺に彼らの偵察部隊を目撃したと、スグニから報告があった為、迂闊に村を出れないような状況になっている。そんなわけで有力な情報はほとんど得られなくなった。なお、スグニは2日目の朝からアークの偵察に向かったようだ。スグニの負担が増えるが、今後とも偵察を続けてほしい。
サムウライの情報まとめの結論。どう考えても敗北濃厚だ。特にノーキンの情報がやば過ぎた。多分この人は、自らが最前線で戦い奮闘することで部下に勇気と活力を与える鼓舞型上司タイプだから、後方にいることはないだろう。それどころか、単騎で向かってくることも考えられる。
「あーもう、ノーキン、ノーキン! 最後はノーキンでお仕舞いだよ!」
駄々をこねる子供のようにのたうち回った。