第51話 放置系奴隷
商店前でモーブと合流。
奴隷購入の経緯を話すとすんなりと受け入れる。
だてにこの無能の親友をやっているわけではないようだ。
モーブと自己紹介を交わすもここでも頷くだけのアルバート。
一行はホスゲータに乗りガンバール村を目指して町を出た。
町を出ていく凡太達の様子を窺う怪しい黒いフード姿の2人組。
「あれはどこから来た者たち達だ?」
「ガンバール村という小さな村からだそうです」
「一応探りを入れてみるか…」
どうやら呪いの奴隷購入の件でプチ有名人になった為、変な人達に目をつけられた模様。
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少々口元が膨らんだホゲオにはアルバートが乗っていた。
もう一匹のホスゲータにはモーブが乗っている。
凡太はどこにいったのか?
そう。ホゲオの口の中である。
ホゲオはこのスタイルにしてからすこぶる調子が良く、行よりも休憩時間を短縮しかつ、快調な速度で飛ばした。その為、行は5時間かかった道のりを、帰りは3時間で制覇して見せた。
ガンバール村に着くと、凡太はホゲオの口から吐き出され血まみれ状態で失神していた。急いでモーブによる治癒魔法が開始され大事には至らずにすんだ。
そしてホゲオらホスゲータは満足したように飼育所の方に戻っていった。
その足のままバンガルのテントまで行き、測定器を渡した。
「随分と変わったお土産だな」アルバートを見てバンガルが言う。
「すみません。ついほしくなったもので」
「気にするな。元々依頼料として渡したお金だったから。ちゃんと使ってくれたようでうれしいよ」
「ありがとうございます。また機会があればその時こそ…」グッと目に力を入れる。
「いらんいらん」
こうしておつかいは本当の意味で終了した。
凡太のテントへのベッド輸送をモーブに手伝ってもらい、その後礼を言って別れた。
アルバートに村の公共施設の場所を案内した後、夕食だけは一緒に食べることをお願いし、どこかへ一人で向かう凡太。
まさかの主人が何の命令も出さずに奴隷を放置する行動にアルバートはびっくりしたが、そのまま村を散策した。
凡太はどこへいったのか?
そう。ストーカーである。彼はアルバートの行動が気になり彼女の行動を物陰からコソコソと尾行する。
(あの人はあれで尾行のつもりなのでしょうか?)
尾行はもちろんアルバートにばれていた。
アルバートは凡太から貸してもらった長袖の白いシャツと黒い長ズボンに着替え、村に新しくつくられた訓練場(テニスコート3個分の広さ)で素振りを始めた。
1時間ほど素振りや筋トレをやった後休憩。
凡太はそれを見届け、尾行を終了した。
(見られっぱなしは好きじゃないので、今度はこちらが尾行させていただきましょうか)
こうして反対に尾行される側になった凡太。
アルバートの隠蔽魔法を使った尾行技術はなかなかのもので当然凡太は気づけなった。
村はずれの森の少し開けた場所でモーブに見守られる形で何か訓練を始める。
「的当て開始。まずは1個から」
そう言うと球体を起動させる。瞬間、
球体が消えた。
そしてかろうじて目に映る瞬間移動をもの凄い速さで繰り返す球体から、半透明の空気弾のようなものが飛ばされていた。
この弾も球体本体ほどではないがなかなかの速さだ。
対する凡太はその空気弾を紙一重でかわしつつ、両手から半透明の弾を出し球体に当てていった。
いや、当てるというよりか球体から当たりに行っているような感じだった。
まるでそこに球体が移動することを知っているかのように吸い込まれるように当たるからだ。
そして一定量弾を当てると球体が制止した。
今ので起動から3分といったところだろうか。
「続いて2個同時、いきます」
(は?)
アルバートが驚くことなどお構いなしに球体を起動させ、再び球体との攻防を開始する。さすがに今度はきついらしく顔が歪んでいる。
(こんなでたらめな速度の球体に攻撃を当てることなどできっこない。それにあの球体の攻撃をすべてかわすなんて…私の全盛期でもできたか怪しいところです)
さらに凡太がそれほど身体能力が高いわけでもなく、身体強化魔法を使っていない点も彼の異常さを際立たせた。
先程よりも激しく腕を振り、念動弾を大量発生させ当てていく。
そして一定量当て切り、球体2個が停止。
「4分58秒。ギリギリだったか、あぶねー」
膝に手を乗せながら荒い呼吸で言う。
息が整ったところで、
「3個目いくぞ」
(嘘でしょ…)
アルバートが引く中、3個同時に球体を起動させる。
球体3個の攻撃を平面ではかわしきれないと見るや否や、跳躍して空中でかわし始める。
しかも、自身の攻撃を放ちながらである。
(あれが本当に人間の可能な動きなのでしょうか…)
空中を回転しながら瞬間移動する球体3個分の攻撃をかわしつつ、的確に自身の攻撃を当てに行く姿をみれば誰でもそう思うだろう。
凡太は何千回と的当てをする中で確実に球体の行動パターンを体で覚えていったのだ。この動きはその努力の賜物である。
「さすがにきつすぎる…」
そう言うとズボンのポケットからスイッチを取り出し押す。
すると球体3個が停止した。
スイッチを押すことで停止信号が球体に対して出されるようだ。
「2分弱で3個の着弾平均22回か。全然駄目だな…」
「2か月前は2個のクリアも数回できた程度だし、3個では即気絶だった。この結果は上出来ではないか?」
「うーん。何か別の攻撃回数を増やす手段があれば…とにかく足掻ける余地はありそうだし、出来はまだまだだよ」
「そうか。ではまだまだ努力しないとな」
「辛いけどそうするしかないよね。モヤモヤするし。もう諦めるのを諦めたよ…」
この後モーブが2個に挑戦しクリアしていた。
アルバートはそんな2人の姿を訓練が終わるまで呆然と眺め続けるのであった。
夜20時、食堂にて。
「この人はアルバート・レイナシアンさん。訳あって一緒に暮らすことになった。俺は頼りないから皆が頼りだ。至らないところがあったらよろしく頼む」
凡太と共にアルバートも頭を下げる。
「あんた以上に至らない人間はいないだろうし大丈夫でしょう。私はユーシア・アイといいます。あいつに変なことされなかったですか?何かあったらすぐ私に言ってくださいね。制裁を加えますから」
「何かなくても加えられている気がしますけど…」
「今何かあったので早速加えさせてもらってもいいかな?」
「今日はいつもより随分と攻撃認可が早いですね」
「早いに越したことはないでしょ」
色々と加えられる姿をレオやモーブが慣れた様子で無視しながら食事を続ける。
「僕はユーシア・レオといいます。アイの兄です。よろしくお願いします」
レオが頭を下げるのに呼応するようにアルバートも頭を下げる。
(呪いのことで不快になり距離をとられると思いましたが、移民の村だけあって寛大ですね)
誰も異質な自分の事を特に問い正すことなく、いつも通りを続ける周りの雰囲気に安心する。
こうして、ガンバール村は今日も平和に一日を終えたのであった。
凡太を除いて。




