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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第2章 サムウライ村救済編
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第41話 終わりと始まり

凡太はアークと会話する中で、この男がどのような戦略を練ってくるタイプか、またどれほど賢いかを分析していた。その分析ではこの男ではサムウライの束縛を遂行し成功させるための知略が足りないという結果が出た。そこからアークを誘導し、束縛を遂行した人物が存在するという推論に至った。

そしてその推論の結論が今、目の前にある。

少年の風貌からは想像できないくらいの強さの片鱗を放つ化け物のことだ。


「お前の話していた歴史書(ラノベ)では俺達のようなただ者は今後どうなる確率が高いんだ?」

「瞬殺される。そしてその無様なやられっぷりは、今後レオ達(主人公側)が劇的な勝利をする為の引き立て役となる」

「そいつを聞いて安心した。我々ただ者にとっては最高の栄誉じゃないか」

「同感。さぁ、無様に散ろうか」

(ラノベのテンプレ通りだ。目の前の敵を討伐したと思った後に真の敵が登場し、主人公以外の死んでも良いどうでもいいキャラを蹂躙する、敵の強さインフレイベント。そしてその通りなら、この後レオやアイなど主人公サイドのインフレがあるはずだ)


「さて、そろそろかな。それじゃいくよ」


先程から何か遅延魔法を詠唱しており、その時間が整ったことを知らせる少年。


身構える二人。


そして、


「何勘違いしているの?帰るだけだよ。”終わりにする”とはそういう意味さ」

「え?」


円柱の光が少年を包む。

転移魔法だ。

急な幕引きに呆然とする2人を無視し続ける。


「別に今の君達を殺したところで何の利益もないし、面白くもないしね」


「それに殺そうと思えばいつでも殺せるし…」


ゾクッ


少年らしからぬとてつもない殺気を放つ。


(本当に立ちションしとくべきだった。もれそうだぜ…)


「いずれまた会おう。次に会ったときはもっと面白くなっていることを期待しているよ」

そう言い残し、円柱の光と共に消えていった。



次に会った時に面白く(強く)なっていなければ殺される。

いずれとは明日かもしれない。 

すぐに強くなる必要がある。

ただ、強くなるのは俺じゃなくていい。

俺の力などたかが知れている。自分の弱さは自分が一番理解している。

だから、俺は強くなりそうな人の時間稼ぎやちょっとした手助けができればそれでいい。

強くなりそうな人を確実に強くするのだ。

その方法を学びたい。

というわけで、明日からヤミモトさんに弟子入りだ。


凡太の中で今後の方針が完成した。


(走っていようが、歩いていようが、立ち止まっていようがどの道殺されるなら、立ち止まる以外の方がまだマシだ)


独特な消去法により、行動する事を選んだ凡太は早々に方針を進める為、サムウライに向かって歩き出した。


「さて、その前にとりあえず立ちションの続きでもするか」

「俺はもう、済んでいる」

「まさか…モーブ、おまえ…」

(震えていたのはそういう…)


察した親友はすかさずフォローを入れる。


「このことは水に流そうじゃないか、小便だけに」

「さすが我が親友。恩に着る」

「うん。まぁ恩を着る前に着るものを洗濯しないとな」


この後、モーブのズボンを水で流し、洗濯してから魔法で乾かした。



~~~



サムウライ広場に2人が帰還。

もう午前5時くらいになり、朝日が昇りかけ外は薄っすら明るくなってきていた。

宴の方も終了し、片付けが始まっていた。


レオ、アイが2人に気づき寄ってくる。


「連れションにしては長すぎじゃない?」

「いやー溜めに溜めていたからな。ほら、ギロチン怖かったし」

「で、何があったのですか?」

(察し早っ!もう彼からは何も隠せる気がしないよ)

凡太はレオのいつもの反応に恐怖を感じつつ、黒幕の件を話した。


「また陰でコソコソやっていたの?散々説教したばかりだよね?」

「待てアイ、恐らくボンタさん達は…」

「ええ。私達に危険が及ばないように気遣ってくれたのは分かってる。でもやっぱりムカつくのよ、そうやって勝手に自分達で背負う姿勢が」


拗ねるアイを一時放置し、話を進める委員長レオ。


「今後の方針はボンタさんのことだからもう立てていますよね?」

「うん。早速ヤミモトさんに修行のお願いをしに行くつもりだよ」

「そうですか。僕達も行っていいですか?」

「もちろん。大歓迎だよ!」

「末永くよろしくされているから、今回も仕方なくよ。ありがたく思いなさい」

「うん。ありがとう」

(戦力に主人公とヒロインゲット。これで無駄死に率大幅減。かばい死に率大幅増。縛りプレイのクリアへ着実に近づいたぞ)


誰もが忘れかけていた高難度縛りプレイを凡太はしっかりと覚えていた。

隙あればその条件を整えていくひた向きさは無能でなければ評価されていただろう。



~~~



広場奥で村長会議中のバンガル、ムサシマル、ノーキンを発見して先程の黒幕の件を説明した。


「…なんと、そのような黒幕が存在していたとは」

「少年の姿か…残念ながらそのような強者のことは存じておりませぬ」

「にしても、また勝手に知らないところで無茶していたパターンか。…まぁとにかく無事に帰って来てくれてよかったよ」

「本当に運が良かったです。私達も瞬殺を覚悟していましたから。それはそうとやはり誰も彼の情報を知らないようですね」


3人が首を縦に振る。


「では今回の作戦の裏景品であるアークさんに聞いてみましょう」

「お前…まさかこの為にアークを殺さずに拘束しろって指示を出していたのか?相変わらず抜かりないな」

「さて、何のことでしょう?ただ単に人殺しが嫌だっただけでたまたまですよ」

「…まぁそういうことにしておこう。それじゃさっさと聞き出そうぜ」


そして、7人はアークの拘束してある牢獄に向かう。

小さな一軒家の中にお馴染みの鉄格子の檻が4つあり、広さは6畳ほど。

中にはトイレと丸机、仮眠用のマットのようなものが一つずつあった。

現在檻は3つ空いていて、残りの1つにアークが手錠をさせられて檻の中にいた。

それは特殊な手錠で、つけている者は魔法が使えなくなるという。


「どうも、気分はどうですか?」

「最悪じゃ。さっさと出さんか。どうせ儂は非力じゃ、出したところで何も出来ぬ」

「随分と卑屈になりましたな。以前はあんなに威厳があったのに」

「うるさい。全く鬱陶しい事この上ないわい。…さっさと要件を言え」

「話が分かるみたいで助かります。では単刀直入に。あなたの上司の能力やスキル、今後の予定などをあらかた教えてほしいです」

「そんな事、言えるはずがなかろう…」


アークが震え出す。やはりあの少年がとんでもない強者というのは事実なようだ。


「いいんですか?そんなこと言って。2度とここを出られませんよ」


そう言って凡太がアークに追い込みをかけようとしたその時。

アークが小刻みに震え出し、苦しみ出す。


「おい、どうした?まだ何もやってないぞ?」


そして口から泡を吐き、白目になって気絶するアーク。

その後、何時間待っても意識はなく、精神崩壊したような抜け状態のままだった。


一度牢屋から出て集まる一同。

そして、アークの様子から推測されることを口にする凡太。それを聞くバンガル。


「アークは自らあの状態になるような度胸はないだろうし、そうしたのはおそらくあの少年でしょう」

「つまり何らかの手段でアークの周辺の盗聴をしていたということか」

「そうです。自分の情報が洩れそうな空気を察するや否や、すぐにアークをしゃべれない状態にしたと考えられます。となるとかなり厄介な敵です。この世界では弱体化や精神攻撃系の魔法は無効化させるのでおそらく彼のスキルでしょう。しかも遠隔なのでさらに厄介です」

「一難去ってまた一難ってことか。全く気が休まらないな」

「それに関しては大丈夫だと思います。向こうの狙いは多分私でしょうし、私の近くにいなければ多少は安全だと思います」

「それは大丈夫と言わないの。一応皆あんたに救われているんだから、すぐに死なれては困るのよ」

アイの言葉に頷く凡太以外の一同。


「ごめんな。弱いせいで気を遣わせて。…あ、そうだった。その弱いのを何とかしようと修行を申し込みに来ていたんだった。ヤミモトさん、改めてお願いしたいのですが、俺とアイ、レオ君、モーブに修行をつけて頂くことはできないでしょうか」

凡太がムサシマルにお願いしますと頭を下げたのを見て、他の3人も頭を下げた。


「もちろん良いとも。で、いつからにする?」

安堵する4人。

「明日からでお願いします」

「うむ。承知した」


こうして、修行の申し出は無事に通った。



~~~


サムウライ村出入口門前。


「お世話になりました。宴楽しかったです。それではまた明日会いましょう、さようなら!」

急ぐように別れの挨拶をして明日の準備の為、そのまま村へ直帰するガンバール村一同。

それを見送るムサシマルとノーキン。


「ムサシマル殿。あのことはタイラ殿に言わなくてよかったのですか」

「あーあのことかだったらまだよい」


”あのこと”とは。


時間と場面を宴中の両村長の所に戻す。



~~~


ムサシマルとバンガルが会話中。

「タイラ殿をこの村の村長に任命したいのだがよろしいかな」

「俺は別に構いませんよ」

「それはよかった。先程は彼にうまくかわされてしまったが、彼が村を救った事実は消えぬ故。それに我が村の住人すべてもそれに賛同している」


凡太は知らなかった。

ムサシマル、及びサムウライ村人はムサシマル直伝の高い知略を持つクッション型集団であった為、すり替え工作が全く効いてなかったことに。

そして彼らはまんまと凡太に乗せられ喜んでいたふりをしていたことにも。

乗せられていたのは凡太の方だった。

完全に上手を取られていたのだ。


「しかし、彼の性格は少し難しい。おそらくこちらが村長になってほしいと言ってもすぐに断りそうだ。自分の評価が上がることを嫌っているようだし」

「よくご存じで。ただ、あいつは結構お調子者のところもあるのでそれを利用するのも手ですよ」

「なるほど。今ので少しうまく事を進められるような流れが浮かんできた。感謝する」

「いえ、私は何も。ではボンタの村長の件、期待していますよ」

「ああ、任せてくれ」



~~~



時はガンバール村一同の見送りシーンに戻る。


「タイラ殿の村長の件に関しては明日進められるのでな」

「ということはもう既に彼をうまく誘導する流れが浮かんだということですな」

「左様。明日が楽しみだな」

「私もです」



こうして長い一日が終わらずに朝になり、明るい日々は続いていて行くのであった。

まるでこれから起こるであろう凡太の苦悩を指し示すかのように。

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