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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第2章 サムウライ村救済編
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第40話 ただ者とただ者でない者

サムウライ村の近くの森林。

甲冑姿のアークの護衛兵が1人、その森林の奥深くを歩いていた。


そこへ凡太とモーブが現れる。


「あなたも立ちションですか?よかったら私達の連れションに参加しませんか?」

「いえ、結構です。尿意の方はないので」

「それは残念。大勢での立ちションは背徳感が増してたまらないというのに」

「では、私は先を急いでいますのでこれで…」

「あなた、アークの護衛兵の方でしたよね?他の護衛兵の方はまだアークの近くにいるというのにどうしてあなただけがこのような場所にいるのですか?」

「アーク様が近くの森で落とし物をされたということだったので辺りを散策し、調べていたのです」

「それにしては随分と遠くまで来ますね」

「意外としつこいね、君は」


凡太のネチネチした追い込みに嫌気がさしたのか、急に怒りの態度を露わにする護衛兵。


「すみません。それだけが私の唯一の長所なもので。誠に申し訳ないのですがもう少しこの長所アピールに付き合って頂けませんか?」


護衛兵が凡太の煽りにさらに怒るかと思いきや急に冷静になり、静かに言葉を発した。


「いつから気づいていたの?」

「”気づく”とは?それではまるで自分が今回のサムウライ村の束縛案件の黒幕だったというような言葉ではないですか」

「白々しい鎌かけをするね。どうせ知っていて私をのせただけだろ?」

「ばれました?」

「ははっ。やはり君は、ただ者ではないな」

「いいえ、ただ者です。ただ者だからこそ自分とは正反対なあなたの異質さにすぐに気付けたのです」

「なるほど。で、その異質さとは?」

「あなたは護衛兵という役目の割に偽アークが追い込まれていた際、他の護衛兵が近くまで来て護っていたのに反し、遠くのアイとモーブの方へ加勢に行きましたよね?護衛兵なら護衛対象者の近くにいることが鉄則だ」

「確かに異質だね。しかし妙なのはなぜそこ(護衛兵)に最初から注目していたかという点だ。黒幕となれば300人もいる村人すべてが対象となる。その中からどうしてそこを選び、注目したの?」

「それはアークの能力の低さにあります。アークは明らかにサムウライの村人達より戦闘能力は低いです。いくら人質のような弱みを持っているといっても何かの拍子に反撃でもされようものならたちまちやられていたでしょう」

「…まぁそうかな。それで?」

「ですから弱みが近くにない状態のアークは常に無防備だったという事になります。ところが、無防備な割になぜかアークはいつも余裕がある態度をとっていた。それはつまり、近くに何かアークを安心させるサムウライの村人達より強い力の存在があったことに他ならない。それを踏まえてアークの近くをみてみると、あら不思議。いつも護衛兵の皆さんがいるではありませんか」

「なるほどね。それで気づいたんだ。フフフ、道理で試合中もこちら側に視線を感じたわけだ」

「ああ、ボンタには試合前から護衛兵に変な動きがないか見張っておくように言われていたからな」

「もちろん宴中もずっと見張らせてもらいました。とても抜け出しやすい空気だったので正直いつ動くか分からず、ずっと緊張していましたよ」

「さすがだね。やはりただ者ではなかった」

「だからただ者ですって。ただ者でない者とは、本人は意識してないのに弱者に恐れや絶望、劣等感などを与える存在です。あなたからはそれを強く感じました。今話しているこの瞬間もね。だから、あなたの方だったんだ、”ただ者ではない者”は。そしてこの状況下でのただ者でない者となればそれはもう黒幕しかありえない」

「同感だ。ただ者なら注目されることなく、そこにいるはずだがひたすら存在を省略されるからな」

「やめるんだ、モーブ。それ以上の説明は俺達ただ者にとっては辛辣過ぎる。現に今ちょっと泣きそうになった」

「すまん、親友よ」

「いいってことよ。もう既に泣いているからな…」


こうして2人が独特な空気でしゃべっていたところに、ただ者でない者が割り込む。


「いやー天晴!ここまで言い当てられるともう演技していてもしょうがないよね」


急に笑い出すただ者でない者。

そして雰囲気が変わる。明らかに嫌な方向へだ。


「そろそろ時間が惜しくなってきたのでさっさと終わらせてもらうよ」


体内から何かが溢れるように甲冑が膨らみ破れた。

中から全身黒ローブ、身長155㎝程の小柄で華奢な黒髪短髪の少年が現れた。

凡太には詳しくは分からなかったが、何やらその少年の力が急激に増したらしい。

横にいたモーブの震える状態を見て容易にそうであると想像できたから。

モーブにはノーキンほどではないが第6感のようなもので対象の能力を精密に推量することができた。だからこそ、その想像が正しいものだと認識できたのだ。


「どう?勝てそう?」

「無理だな。お前1人を逃がすので精一杯だろう」

「待て待て。犠牲になる気満々じゃないか。価値のある奴が価値のない奴の為に犠牲になるのは超無駄死にだって親に教わらなかったのか?」

「残念だが教わらなかったよ。さらに残念なことだが、価値のない奴とは俺のことだ。親友1人も満足に救えないような奴だからな。そして、俺はお前を価値のある奴と判断している。つまり、超無駄死にではなくなって犠牲が成り立つというわけだ」

「おい、何勝ち誇った顔してるんだよ。俺以上に価値のない人間などこの世に存在しない。俺こそがNO1の無価値人間だ!」

「いや俺だね、俺こそがNO1だ!」

「いや、俺だ!!」

「そろそろ始めてもいいかな?」


この時、凡太とモーブが顔を見合わせ互いに頷く。

どうやら互いの中で答えが出たようだ。

そして二人が声を揃えて同じ言葉を発する。


「「2人で足掻けれるだけ足掻き抜く!!」」

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