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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第2章 サムウライ村救済編
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第38話 策のおさらい

レオ、ゲール、ムサシマル、拘束中のアークは闘技場へ向かって走って移動中。

なおアークの方はタイヤ引きのタイヤのように、ムサシマルに引きずられていた

「そういえば、闘技場の方はどうなっているでしょうか」

「おそらく奴がすでに策の全容を皆に説明していているかもしれん。もう隠す必要はないからな」

「なるほど。ではこちらの報告をするのも楽しみですね」

「左様。そのときこそ礼を言わせてもらうぞ」

「ええ、存分に」

「あのーもう少し優しく運んでくれぬか…」

「最近耳が遠くてな。全く聞こえぬ」


1名を除き、闘技場での合流を楽しみにする一同。


そして到着。


しかし、予想外の場面に遭遇。


祝杯ムードで盛り上がっている場面を想像していた一同は唖然とする。


なんと凡太とバンガルがアイの前で正座させられ、激しい説教を受けていた。

カレンは絶句。モーブは安定のモブ化。シェパンは助け舟を出したいと思っているが、うまく入るタイミングが掴めずに漕ぎ出せないでいた。

全体的に反省会のような雰囲気で祝杯ムードとは程遠い緊張感が溢れ、とてもじゃないが新参者が入れないものとなっていた。

それに悪い意味で呼応するように説教を受けていない人達も反省しているようだった。

あまりの剣幕に誰もレオ達の帰還に気がついていない。


そして説教は現在も進行中。


「だから、何でそういう大事なことを皆に伝えておかないのよ!万が一失敗した場合の立て直しには周りの助けが必要でしょ!」

「すみません、アイさん。あと、その注意は今ので12回目です」

「うるさいわね。あんたみたいな馬鹿には後100回は説明が必要でしょ?まだ残り88回あるわよ。あとさん付けすんな」

「あのー今回の一件は全て俺の責任だからバンガルさんはもう解放してあげてもいいんじゃないかな」

「駄目よ。今回の様に村の存亡が関わる大事な情報はバンガルさんが村長として村人全員にを周知させておく必要があったわ。これは村長としてあるまじき職務放棄よ!」

「返す言葉もございません…」

「だからバンガルさんは悪くないって。気を使って俺がやり易いようにわざとスルーしてくれていただけだと思うし」

「いいんだ、ボンタ。俺がやりたくてやったことだ。それに俺は村長だ。村人の全責任は俺がとる。もちろんお前の責任もな、ボンタ。だから説教は俺一人で十分だ。ボンタを開放してやってくれ、アイ」

「バンガルさん、あなたって人は…しかし、ここだけは譲れない。俺こそが今回の責任者であり、説教を受けるべき対象者だ!だからバンガルさ――」

「うるさいなぁ!勝手に友情を膨らませて説教から逃げようとしないでくれる?」

「「すみません」」 

((ばれたか…))


シェパンがついに説教の隙をついて会話への侵入を成功させる。


「もうこの辺にしといたら?馬鹿にこれ以上言ってもこっちが疲れるだけだよ。そんなことより今後について話そうよ。ほら、まだ本物のアークも見つかっていないことだし」

「確かにそうですね。シェパンさんの言う通り今は馬鹿に構うよりかはそっちの方を優先すべきですね」

「そうでしょ?ではその件について考えようじゃないか」

「はい、分かりました」


先程の凡太とバンガルへの口調とは正反対の丁寧な口調でシェパンに接するアイ。一応シェパンはレオの仲の良い友人として認識されており、尊敬もされているからだ、凡太と違って。


これから身振り、手振り、目振りを使ったコミュ上級者の無音・無声会話が始まる。


(これで妖精騒動の借りは返しましたよ)

(借りが何かよく分らんがありがとう)

(分らんのかい!一から説明してやろうか?)

(怖い!バンガルさん助けて!)

(え?ここで俺?まぁシェパンよ、とりあえず落ち着こうか)

(部外者が口挟まないでくれます?)

(…だってよ)

(ちょ…こっちに戻さないでくださいよ。そして距離をとろうとしないで、逃げないで。カムバーック)

「あんたらさっきから何してんの?」

無声上級コミュの異様さに嫌気がさし、ツッコミを捻じ込むアイ。

説教が再開すると思われたその時。


「おーい!皆、今帰ったよ。本物のアークを連れてね」

「兄さん!?」


レオがまるで今来たかのように割って入った。

空気察しイケメンによる神タイミング参入だ。


そしてことの全容を最初から説明する凡太(ちなみにアイの説教中に説明したのを含めると本日これで8回目)。


話し手、凡太。

聞き手、バンガル。


「まず、サムウライの人々がアークに従わざるを得ない拘束力を持つ”人質のようなもの”が何かとその隠し場所を特定させる為、警戒心の強いアークのそれを弱くする必要がありました。その為には慌てさせる必要があると考えました」

「それでアークを危機に追い込むような今回の状況をつくり出したってことか」

「そうです。ただアークの周りにはいつも護衛兵が数人いて、しかも必要となれば村人たちを盾にするような命令を例の人質を使って出すだろうと考えました。そこで盾を無効化できれば良いと考え、サムウライ全員の弱体化策をとろうと考えたのです。弱体化できれば、こちらの力でも拘束することができむやみに怪我させることなく、アークの危機だけを誘える状況をつくれますしね」

「だが、そこが難点だったんじゃないのか?知っての通り、俺達には弱体化魔法が効かないし、致死毒に対しても探知・解毒が可能だ」

「そう。だからこそ、魔法以外の弱体化策。そして毒なら遅延性の毒でなければ駄目だと考えました。そしてこの3カ月の期間。これらが合わさって思いついたのが現代弱体化魔法の糖尿病でした」

「そのトウニョウ病ってのはどんな病気…魔法なんだ?」

「簡単に言うと体の内部破壊系の魔法で、大幅な体力・身体能力の低下が見込めます。実は昔私もこの弱体化魔法の影響を受けたことがありまして、丁度その時に弱体化を大いに実感した期間というのが3カ月後だったのです。なお、これはまだ初期段階の為、症状は浅く、食生活を改善すれば完治可能です。さすがに完治不能なものをサムウライの方々に受けさせるのはまずいですからね」

「弱体化のギリギリのラインが3カ月という期間だったわけだな。それでその弱体化魔法の起爆剤が大量に作っていた菓子ブレドーということか」

「そうです。ですので、シェパン君には今日輸送したもの限りで、もう大量生産をやめるように伝えました」

「ところで致死量毒入り菓子ブレドーなんてつくっていたそうじゃないか。結局あれは何の為だったんだ?」

「それは是非私から話させてくれぬか」

「なぜムサシマル殿が?…ではお願いします」


ムサシマルは、特製ブレドーについての説明をした(第37話参照)。


それを聞いた各々が感想を漏らす。


「3日前の偵察時、ゲール達がわざと見つかるようにしていたのはその為だったか…で、今回の頼み事っていうのがアークの拘束か。良いとこ取りじゃないか。羨ましいな、もう!」

「拗ねるなよ。…しょうがない。今度何かおごってやるよ」

「絶対だからな!忘れんなよ」



(さすがボンタさん!)

特製ブレドーのオチがピークに達した瞬間、シェパンは目をクワッと見開いていた。



「今度はジョークであってジョークでなかったということでしたか。いやームサシマル殿とタイラ殿には見事な一本、いや二本を決められましたなぁ」

「だから、最初から美味いと言っておったであろうが」

「はい、御見それいたしました」


気絶から回復し、笑顔で会話に参加するノーキン。


「ちょっと待って…あなたも菓子ブレドーを3ヶ月間食べていたということですよね。ということは…」

「ええ、その通りです。弱体化はしっかりしていましたよ。ですが、負けは負け。自分の状態を一々土俵に上げていては埒が開きませんし、見苦しい。勝負はもっと清々しく行うものです。それに最後は勝者らしい素晴らしい一撃でしたよ」

「…ありがとうございます」


弱体化の状態でアイとあれほどの死闘を繰り広げたノーキンの底知れぬ能力の高さにドン引きしつつも、素直に称賛を受け入れるアイ。


「さて、皆の衆。私からある男に礼を伝えたいと思う。その男は我が村を救ってくれた英雄だ。私はそのものに敬意を称したい。私は今回の事件の失態の責任をとり村長を辞退し、新たにその男にその座を譲りたいと思う。皆もそれでよいか?」

「御意!!」

この場のサムウライ村人全員が返答した。


「その男の名は――」


「ヤミモト・ムサシマルさんです!!」


凡太の急なフェードインによるムサシマル宣言。

この展開に驚く、ムサシマルと村人達。


その展開をつくり出した男は、ムサシマルの横に立ち何かを話すようだ。


そう。


その男の名を呼ぶ必要はない。


名に価値はないからだ。


故にその男は無能と呼ばれるのだ。

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