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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第6章 無能な王編
359/360

第359話 嫌われる努力

 城、凡太の自室にて。


「お目覚めかい?」

「あぁ…って、何この状況!?」


手足が縄で拘束され、身動きが取れない。


「こうでもしないと腕落としちゃうでしょ?」

「…まさかぁ。 自分の事大好きな俺が、体を傷つけるなんて恐ろしい事できるわけないでしょ」

「そうかなぁ?」ソッと俺の腰くらいの所に座る。

「そうそう! だから早くこの拘束を解きなさい!」

「アイちゃんとレイナが戻ってきたらね」

「どういう事?」

「これから君の1日監視をやってもらうって事」

「1日って…。ん…?まさかそれって寝る時も?」

「そう」

「なんてこった…」


(たかだか腕を落とすかどうかを監視する為に1日拘束させるのは無駄過ぎない? 2人は有能なんだからさぁ…。あぁ…、俺なんかの為にそこまで気を配らないといけなくさせているのが申し訳なさすぎる…。何か打開策は……そうだっ!)


「このまま牢屋にぶち込んでくれ。牢屋なら看守もいるし、拘束した状態のままなら寝る時の監視はいらないだろ?」


 メアリーが『そう来たか』を含む苦笑いをみせたので『勝った』の意を込めた笑みを浮かべる。が―—


「看守は忙しい。君みたいなめんどくさい人間を監視し続けるほど暇じゃないんだ。これ以上彼等の負担を増やさないでほしい」

「ぐぅ…、そうだな…。ん?だとすると、アイやレイナにも負担になるから、2人に頼むのもいけないのでは?」

「2人にとって君の監視は苦にならないから大丈夫。だって君は大して影響力もないちっぽけな存在なわけしょ? 優秀な2人なら君みたいな無能の監視もちっぽけな仕事になるから、ついで仕事の様に片付けてくれるさ」

「し、しかし…」


 そうこう言っている間に2人が到着。メアリーが2人に状況説明するのを見ながら思考する凡太。


(どう行動しようが2人の負担になるんだよなぁ…。それなら一層、どうしようもないって諦めてしまって…いいや、ダメだ。諦めるわけにはいかない…! くそ、頭が働かない。…落ち着け、こういう時はルーティンをこなしながら頭を整理するんだ)


と、凡太がやる事を決めたタイミングで、メアリーが「ではよろしく頼むよ」と、2人の肩を叩いて部屋を出て行く。


ドアが閉まった後。


「荷物はどこに置けばいいかな?」

「部屋の隅にでも」と答えながら、2人の荷物を移動。


(軽っ、日帰りかな? なんてことはさておき――)


「これから走りに行くんだけど、監視でついて来てくれるかな?」

「ええ」「はい」


(監視は1人でもいいのに2人なのは、お互いの不公平感をなくす為かな。相変わらず、2人共優しいね。そんな2人だから俺のめんどくさい頼みも聞いてくれたんだろう。普通に考えて、今から一日監視という重労働が控えていたら断るか嫌な顔するわな)


 気を遣わせている事を重々と承知し、罪悪感がのしかかる中でトレ用の服に着替える。


(やっぱり2人に俺の監視は勿体なさ過ぎるよなぁ。あの適材適所配置の鬼・メアリーがミスるなんて珍しい。疲れているのかな? …そういえば最近、事務作業の傍ら、横でため息つきながら俺の肩によくもたれかかってきていた。今思えばあれは間違いなく疲労のサイン。後で原因をそれとなく聞いてみるか。しかし、隣に居て異常に気づかないなんて上司…いや、王失格じゃね? はぁ…)


 メアリーのため息が時間差で伝染しつつ着替え終了。2人はまだ着替え中なので、もも上げしながら待つ。


(さておき、2人を俺の監視役から外すにはどうしたら? 2人共責任感が強過ぎるから、ストレートに『監視役、別の人に頼むから』って言っても『任せれたのだからやり切る』って言いそうだし…。最近は一日でも早く王をやめさせてもらえる様に、色んな人にめんどくさい事を言ったり、頭のおかしい事を言って嫌われる努力はしてきた。特に2人にはその負荷が大きかったはず。しかもよく隣で気持ち悪くニタニタ笑ってたし。あんな事されたら誰だって距離を取る。キモ過ぎるから。それなのに何で2人は離れないのか不思議だ。いくら護衛兼仕事補佐の責任が発生しているといっても限度がある。あっ、これに関しては以前『あんたの様なゴミを相手にできるのは私くらいだから』って言ってたな。レイナも似たような事を言っていたっけ。何せ2人は俺という害悪を自分達で管理し、封じ込める事で多方面に迷惑がいかない様に管理しているというわけだ。存在自体が害悪とか、もう死ぬしかないね。まぁ近々死ぬ予定だからそれはいいとして、問題は2人がその近々まで我慢しないといけないといけない事。改善するにはやはり、2人の強責任感が邪魔だよなぁ…。となれば、2人を監視役から外すにはそれを破壊する必要があるな。で、それを破壊するには『もうこんな奴、監視する価値もないわ』って、責任感が及ばないくらい嫌われるのが一番早いのだが…うーん、どうやってめちゃくちゃ嫌われようか)


 2人の着替え終了。


「ごめん、待った?」

「全然。むしろ存分にアップができてよかった。ありがとう」

「そう。で、どこを走るの?」

「城の内回り。外だと外敵が多いから2人の負担がハンパなくなるからな」

「うーん、それよりも――」

「俺の監視の方が負担になるって事だろ? 存じていますとも」

「お、分かってんじゃん」

「分かっていながらやらせるとは最低ですね」


(とか言いながら距離詰めて来るのは何? パーソナルスペースないんだけど。あ、もしかして、ゴミはパーソナルじゃないからスペースは必要ないって意味かな? …分かってんじゃん!)


「2人は最低かもだけど俺は最高だよ」

「あっそ」「そうですか」


(間を開けてからの返事って事は――)


 ニチャァ


(引いてるって事だよなぁ? よっしゃよっしゃ。この調子でどんどん嫌われるぞ)


 廊下を3人で移動中。


(考えてみたが、順当に嫌われるなら、やはりハラスメントは外せないよな)


 凡太は現代に居た頃の職場の嫌な上司の行動を思い出す。その中で必要以上に若い女性事務員にボディタッチして『これはスキンシップ。緊張を解く為にやっているだけだから』と良い事している風に装う記憶がピックアップされた。もしこの上司に少しでも相手を気遣う感情があるならば、この時の女性の笑顔が引きつっていたり、声色がおかしいといった挙動から、自分がストレスを与えているのに気づく事ができただろう。


(男性から女性へのボディタッチは、相当好感度が高くないと嫌われる。だから、友好関係があまりない状態でやればセクハラだと思われやすいんだよなぁ。仕事でちょっと話すくらいだったら初対面とほぼ変わらないし、そりゃ嫌われますって)


 現にその上司は女性社員達の中でセクハラ上司認定されており、嫌われていた。この模範的な実例を使い、凡太はもうひと嫌われを狙う様だ。


(だけど、その呈でアイに抱き着いた時、嫌われなかったんだよなぁ…。もしかしたらこの世界では)欧米の様にハグやほっぺにキスが挨拶として認識されているのかもしれない。では、どうすれば…)


 頭を抱えた時、ふとラノベの一場面を思い出す。


(謎にモテまくる主人公…なぜか出会ってすぐに女の子の好感度がMAXになるっていうご都合展開…確か、その手の主人公はよく開幕ナデポをしていたっけ。本来そんな行動しようもんなら、即嫌われるに決まっているのになぜか好かれるんだよなぁ。……。待て、これは使えるかも…)


 自分にはハーレム主人公の要素が何一つないという事。それは自分にご都合展開がお刈らない事の証明となる。つまり――


(俺が撫でれば確実に嫌われるという事だ…!)


 思いついたら即行動。右隣に居たアイの頭を撫でる。フワフワとした髪が弾力を持ち、掌にその感触を残した。


「急に何なの?」


(声に力強さがある。明らかに嫌悪から来る緊張の様なものだな。順調順調。ここで激キモ返答を追加だぁ…)


「急に触りたくなったからつい…」

「…ッ!」


(はい、絶句頂きました! 分かりやすい拒絶反応、ありがとうございます! この調子で畳みかけるぞぉ)


「にしてもアイの髪、フワフワで気持ちいいな。暫く撫でててもいい?」


(我ながら凄まじいキモさよ…。どれ、お次の『キモいんだよ。二度と触んな!』はまだかな? で、そこからの強烈グーパンも頂きたい所だねぇ) 


 完璧に予想できるが故に発生するニチャリ顔。

心して待つ。


「あっそ、好きにすれば?」


ナデナデ…


 ナデ…


 …


(なんでだ!普通グーパンの1つや2つお見舞いする所だろ? それくらい心の中は嫌悪感で溢れかえっているはずなのにどうして…。くそっ!俯いていて表情が分からない。でも、俯いているのは我慢や拒絶の反応だっていうのは分かる。だから、嫌われているのは確かなんだ。…ならば、ここで退くわけにはいかない…!)


 失速したナデナデが復活。再びアイの頭の上で凡太の手が行き来する。


(そういえばレイナは何してるんだろ? 相棒がキモ男に好き勝手やられているのに見て見ぬふりはよくないと思うぞ)


 チラリ


(眉間にシワを寄せている!? 明らかな嫌悪反応を示しているのに、なぜ止めようとしない。こっちは横やりグーパン大歓迎なのに!)


 撫でながら待つが、一向にグーパンは来ない。それどころか罵声すらも。ただただ凡太の撫でる手を睨むだけ。この異様な緊迫状況が1分、2分と続いていくにつれ、凡太の精神が先に根をあげてしまい、無心でアイの頭を撫でる機械人間と化したのだった。

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