第20話 最適・効率的な修行を考えよう ※読飛OK。ほぼ運動雑学
凡太はゼノンから魔力について教わった時から、魔力と脳が密接な関係にあることを睨んで、ある仮説を立てていた。それは、脳細胞を増やすことで魔力も増やせるのではないかということである。
脳の神経細胞 (ニューロン)の量をそれの餌といわれている脳由来神経栄養因子(BDNF)で増やし、数週間で死んでしまうといわれているニューロンに学習( 新しいことを学ぶこと )負荷を加えることで神経回路に組み込み、生き残りやすくすることで脳細胞の増築を目指す。学習負荷に関しては、新技の研究と発明により促す予定だ。
BDNFは高強度の運動( 最大心拍数の75%以上。といわれても意味不明だと思うので連続100mダッシュ・間30秒休息・10本目で、呼吸のピッチがめちゃくちゃ早くなっているときの状態を想像してほしい )で増えるらしいので、インターバル系を多めにした修行メニューになる予定だ。なお、高強度運動ではヒト成長ホルモン(HGH)という細胞の機能低下を防ぐホルモンが出る為、一石二鳥である。
ちなみに、自分の最大心拍数のときが運動強度100%となる。よく知られている最大心拍数の計算(220-年齢)では個人差が多すぎるのであまり当てにならない。昔ランニングクラブの練習で50歳の人(最大心拍数170)がいて、心拍数190くらいで10分持ちこたえていたことがあった。100%以上は無酸素運動なので、もしこの計算が正しければありえないことだ。だが、最大心拍数の計算は別として心拍数180以上ならそこそこ本気だと分かる目安にはなるので、これと呼吸のピッチや他の疲労表現を観察して全力かどうかを判断したいと思う。なお、この世界にはスキルボードと同じタイプのボードに時間やタイマー、1キロあたりのスピード、総距離、心拍数などを表示するハイテクな魔法がある(なんというご都合主義)。
注意しなくてはいけない点は、コルチゾールの大量発生だ。これは我々の起床前に血圧調整を行い、朝起こしてくれるものと聞くと良い奴風に聞こえるが、ストレスホルモンと呼ばれており、ストレスを感じた時に発生し、過剰に発生すると脳の海馬をガンガン死滅させるらしい。うつ病の人やストレス過多の人が急に記憶力が悪くなったと感じるのはこの為だろう。海馬の死滅=脳細胞の減少で魔力の低下に直結するので、修行者のメンタルケアも行う必要もある。一応HGHでコルチゾールの暴走を食い止められるので、高強度運動の定期実行を維持できれば、この問題はある程度緩和されるだろう。
あと、高強度運動によって身体能力も大幅強化が見込めるので、一石三鳥である。
高強度運動の中でも昔から人気なのがタバタ式トレーニングだ。タバタさんが開発したインターバルトレーニングで20秒全力運動・10秒休憩を8セット(計4分)行うものだ。
効果として最大酸素摂取量(持久力)の早期増加がみこめる。しかし、これの効果を得る全力運動のレベルが高いため、実際にちゃんとできている人が少ないのでも有名だ。動画投稿サイトで、プロアスリートや駅伝選手がタバタ式をやっている動画と一般の人がタバタ式を紹介する動画を見比べてみてほしい。トレーニング後の呼吸のピッチがまるで違うのだ。運動時間はたった4分で楽勝かと思いきや、それくらい死ぬ気で追い込んでやっと効果にありつけるといった、実は超難度の超過酷トレーニングである。
聞くところによると、筋肉損傷や疲労を回復させる魔法があるらしい。しかし、回復魔法の魔力消費量はかなり多く、1日1回が限度だとか。ガンバール村の総人口は30人なので修行者を除くなら1日29回使用可能=29回タバタ式ができるということになる。
なお、トレーニングの種目に全力連続魔法を入れる予定はない。理由は高強度トレーニング中に酸欠状態になるからだ。この状態では脳内でのイメージがおろそかになり、魔法が使えなくなるため向いていないと考えた。
ウォーミングアップ方法についても軽く触れておく。10年前から静的ストレッチと動的ストレッチという言葉がちらほら使われ出している。静的ストレッチは皆さんがよく運動前にやるストレッチとしてイメージするアキレス腱を伸ばしたり、背筋を伸ばしたりする筋を伸ばす系のやつだ。ところが、運動前にこれをするとカチコチに固まった筋を伸ばすことになるから筋を痛めてしまう可能性があるため動的ストレッチを運動前にやることが推薦されるようになった。
動的ストレッチは肩を回したり、足の股関節を回すような関節に動作を加えるストレッチだ。これにより、関節が温まり、周辺の筋の血流もよくなりカチコチもある程度緩和される。この後に軽く高ピッチのジョギングを最低10分以上すれば、アップ終了となる。いかにさっさと体を痛めることなく温めるかが肝。なので、アップもしてないのにいきなりタバタ式をやるのは危険だということだ。それにタバタ式では心拍85%以上が目安だ。アップなしでいきなり100m自己ベスト以上で走れと言われても誰もできないはずだ。だから、タバタ式自体は4分で終わるが、アップで最低10分はかかるから実質14分以上かかることになる。
以上、長くなったが一言でまとめると“効率よく能力を上げられる高強度運動を回復魔法を使いながら休み休みやっていくよ”だ。




