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戦う無能おっさん  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第198話 無意味な遊び

 兄弟が見守る中、息を切らせながらイコロイが特大気弾を作成した。


「あんな馬鹿でかい気弾でどうやって遊ぶんだろう?」

「知らん。お手玉するにしてはデカすぎるし、玉転がしとか?」

「転がしている時にこけたら死んじゃうっての」

「だよねぇ。なら違うか」

 

 ケラケラと笑いながら話す兄弟。2人とも遊びがこれから始まるという事に疑問を持たなかったので、緊張感のない気楽な雰囲気だった。それはイコロイが凡太達に気弾を放ってからも続く。 


「どういう遊びだろう。当たるギリギリでかわしてスリルを楽しむ度胸試しみたいなものかな?」

「こえぇ~。当たったらタダじゃすまないのに。凄い人が考える事ってわけが分からんな」

「同感だよ」


 気弾の速さが誰でもすぐにかわせるくらい遅いのを見て、攻撃目的でないことが分かり、完全に何らかの遊びだと確信した。

 

イコロイが高速移動し、3人が並列する。


「イコロイさんも並んだぞ?ということは本当に度胸試のような事をするっぽいね」

「マジか。やっぱりあの人達、頭おかしいよ」

「いや、これは案外良い修行になっているかもしれんぞ」

「どういうこと?」

「タイラさんの試合のスタイルは知っているだろ?」

「ああ。相手をありえないくらい強化してわざと瞬殺されるってやつね」

「そう。それをやるには何が必要になると思う?」

「まず相手を強化する為に結構な魔力量が必要だろ。それから…あっ、そうか!相手の強化された攻撃を生身で受けることになるからその痛みや恐怖に対抗するための度胸が必要なんだ」

「そういうこと。だから、それを磨くのにこの遊びはうってつけなのさ」

「なるほど。だからいつも威風堂々とぶっ飛ばされることができるんだな。改めて凄い人だと思ったよ」

「俺も。まさか遊びにまで修行要素を組み込んでいるとは思わなかったし」


 度胸試し遊びを称賛する兄弟だったが、この後予想外のことが起こる。

 なんと、3人が特大気弾に向かって気弾をうちこみ始めたのだ。


「えっ?度胸試しは…?気弾をあんなにうちこんで打ち消そうとでもしているのか?でも打ち消す意味が分からない。よければ済む話でしょ。なんでわざわざ疲れることをしているんだろう?」

「俺に聞くなって。俺もわけわからなくなっているんだから。ってか、3人共すでに呼吸が大分荒くなってないか?」

「ほんとだ。ということは本気で打ち消そうとしているってことだな。…つまり、これがあの人たちの遊びって事か?特大気弾に気弾をうちこんで相殺させよう的な」

「マジで理解できんな。遊びってもっと楽しくやるものだろ?でもこれは目の前から来る恐怖に必死になって立ち向かう苦行にしかみえないんだが。どこが遊びなんだよ」

「あの人たちは頭のネジがぶっ飛んじゃっているんだからまともに考えようとするだけ無駄だよ」


 デンが“そういえば”というような顔をして納得した。沼にハマる前に割り切ればいい。どうやらフリーズ対策はばっちりなようだ。


「それにしても今一番きついのはイコロイさんだ。特大気弾をつくるのにごっそり魔力を持っていかれたし。今の魔力量も凄いけどつくる前と比べると弱々しい。無理矢理捻り出している感じだ」

「確かにきつそうだな。でもきついのはあの2人もだよ。修行後ろくに休憩もしてない中挑んでいるし」

「まぁそうだけどやはりイコロイさんの方が凄い。あの弱々しい状態でもジョウより威力が高い気弾をうちこめているしな。それにしても、今のジョウの気弾は俺の気弾より数倍威力が高そうだし、それだけジョウとの差があってイコロイさんとの差はもっとあるって思うとへこむよなぁ」

「おい、へこむ前にあれを見て見ろ」


 ドンが指差した先に凡太がいた。デンは凡太の様子を注意深く観察。

そして、気づく。


「気弾の威力が…弱い。しかも俺よりも」


 遥かに弱い威力の気弾を見て、さっきまでへこんでいた気持ちが消え、同情するような気持になる。


「失礼だけどあの威力じゃ打ち消しに全く役に立たないと思う。みたところあの特大気弾の打ち消しの貢献度はイコロイさんが8割でジョウが2割ってところだ。タイラさんは…申し訳ないけど1割以下だと思う。しかも俺みたいな素人の目でもそれがはっきりわかるんだからタイラさんがこの現状に気づいていないはずがない。どうしてこんな無意味なことを続けられるんだ?」

「俺も最初はそう思った。だが、“無意味”ではない」

「無意味じゃないってどういうことだよ」


 それを聞いたドンが顎でクイッと3人の方を示したので、デンはもう一度観察に戻る。


「イコロイちゃん、君の全力はそんなものなの?疲れたなら下がっていていいよ?後は俺とジョウで何とかするから」

「黙れ!お前の方こそバテバテじゃないか。ってか、お前の攻撃は弱すぎて話にならん。邪魔だから下がっていろ。ジョウも弱いが、ギリギリ許容範囲だから特別に補助を許可する」

「頼っていただいてうれしいのですけど、あの気弾をうち消すには3人全員の力が必要です。どうか俺に力を貸してくれませんか?」

「もちろん貸すさ。というかジョウには借りっぱなしだから貸さざるを得まいて。まぁイコロイはケチだから貸さなくてもいいよ。大人しく下がってな」

「補助の分際で言うようになったね。いいだろう、特別に僕の力を貸してあげるよ。それにしてもさっきから雑魚がピチピチと跳ねてうるさいな。雑魚は黙ってその辺の池で泳いでいろ」

「ピチピチ!」特大気弾に念動弾をうちこみながら、イコロイを肩でこづく。

「寄って来るな!鬱陶しい」


 イコロイの言動こそは怒っているものの、顔は少し嬉しそうだった。それを察したジョウも嬉しくなる。どういうわけかこのやり取りをしてから3人のうちこみが少し強くなっていた。

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