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戦う無能おっさん  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第189話 呪い魔法の開発

 早朝。メアリーの寝室。

 メアリーは起床したと同時に激痛で顔を歪ます。激痛の原因はメサイヤにかけられた呪いである。メサイヤが去り際にメアリーと話し合っていた内容は「お前に呪いをかけるのと国民全員を皆殺しにするのはどっちがいい?」という質問だった。もちろんメアリーは自分に呪いをかけることを選択。それを聞き「つまらんな。興がそがれたわ」と言って呪いをかけて帰っていった。幸か不幸かこの発言で国民の命は守られたのであった。

 呪いの性質はアポリクスの呪いのような力の半減や容姿への影響はなかった。代わりに常時頭痛や動く度に体に激痛が走るなど痛覚系の影響があった。

メアリーは気を遣われるのが嫌いな性格だった為、この日以降激痛を顔に出さないように生活していた。痛覚緩和の魔法はあって試してみたが、ほとんど効果がなく、自身の精神力がひたすら削られていく一方だった。

そんな時、あるKY男からお願いをされる。


「メアリーさん、今新魔法の開発をしているんですけど試験モニターの1人になってくれませんか?」

「別にいいのだけど、どうして私なの?」


精神的に辛い状態なので遠回しに断れないか模索した結果の精一杯の逃げの返答。


「色んなタイプの人に試すことでデータの幅を大きくして、より信用性を高めたいのです」

「なるほど。そういうことなら喜んで手を貸そう」

「ありがとうございます」


 男の妥当な解答に逃げの返答が一蹴され、精神的苦痛が増すことになったメアリーだった。


「で、どういう魔法なんだい?」

「呪いをかける魔法です」

「なんだって?」


自身が呪いを受けて苦しんでいる時に、また呪いをかけられるなんて。しかも今度は味方からの呪い。皮肉じみた事象にメアリーは運命を呪おうとした。


「以前私の仲間が呪いにかかっていた時、私は何もできませんでした。そうなるのはもう嫌だったので、何か解決策を見つけてやろうと決心したのです。ところが、呪いを解く方法や魔法はあまり研究されていない状況でした。そこで“毒を以て毒を制す”という言葉の通り、まずは呪いの方から研究してみることにしたのです。呪いを試しながら、それと対になる呪文や薬を製作するというのが目的で、かなりリスクの高い研究でしたが、幸いにも現在はケガ人や呪い状態のものはおらず、特効薬を生産できました」

「もう特効薬まで生産できているの?凄いじゃないか」

「まだ特定の人物しか試しておらず、効果が多様化されるかは確定できていませんけどね。なので、このことはくれぐれも内密にお願いします」

「分かったよ。で、いつ頃その試験を手伝えばいいんだい?」

「メアリーさんが都合の良い時間であれば、いつでも大丈夫です」

「では、明後日の夕方頃で」

「分かりました。お待ちしております」



 国の事務作業がある程度片付いた午後16時ごろに研究所に向かう。

 受付に来たことをあの男に伝えてもらい呼び出す


「メアリーさん、わざわざ来ていただきありがとうございます。ささっ、試験室はこっちです」


 男に案内されながら試験室に着く。そこは長細い机と椅子が2つ並んだ8畳ほどの個室だった。メアリーが椅子に座らされ、対面に男が座る。机の上には薬の入った小皿が5つ並んでいた。


「では、早速始めますよ」 

「ああ」


 男がテレビのリモコンのような長細い紙に向かって魔力を込め始める。いわゆる呪術札というやつだろう。紙の中央には分かりやすく“呪”という文字が大きく書かれていた。

 しばらくすると、メアリーに向かいなにやら薄い気のようなものが入っていき、今度は別の薄い気が出ていった。しばらくそんな良く分からない事象が繰り返される。


「どうですか?何か体に変化はありましたか?」

「いや、何も」

「そうですか。とにかく少しでも苦痛を感じたらすぐに言ってくださいね」

「分かった」


 メアリーは正直面くらっていた。呪いをかけられるということで苦痛を覚悟していたが、苦痛があるどころか全くなかったのだ。それどころか体が少し軽くなったと感じるくらいだ。このことから、呪いの魔法の進歩にはまだまだ時間がかかりそうだと残念な予想をする。


この後、呪いかけ試験は20分続いたが、メアリーの体調は変わらずだった。


「残念だね。全く問題なかった。むしろ少しだけ元気になった気さえしたよ」


 メアリーは久々にちょっとだけ激痛が和らいだことに気が緩み、男のやる気をそぐような失言をしてしまったことに気づき、思わず手で口を覆う。そして、すぐに謝罪の言葉を付け足そうとすると……


「いやー残念!まぁ一回目じゃうまくいかないのも当然か。メアリーさん、また後日試験をお願いできませんか?」

「…もちろん構わないよ」

「よかった。あ、一応害はなかったにしろ、後で発症するタイプかも知れませんので薬は飲んでいってください」

「分かった」


 男のやる気がなくなるどころか無駄に上昇していたことに安堵しながら薬を飲むメアリー。こうして週3回ペースで呪い試験に付き合わされることになった。

 現在。その試験が始まってから1カ月経過したところだが、依然としてどれだけメアリーに呪いをかけても無害なままだった。代わりに男の顔が苦悩で歪んでいったのは言うまでもない。

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