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戦う無能おっさん  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第181話 マ・タンゴ狩りのレベッカ

 レベッカと凡太は森の奥に進み続け、タンゴのいる湿地に到着。当然ながらその周りにはマ・タンゴがひしめき合っていた。


「おっ!来た来た。あれがマ・タンゴ狩りのレベッカさんだよ」

「少女じゃないか!まだ幼いというのに大したものだ」

「全くだよ。前に見に来た時は俺もそうして驚いていたものよ」

「後ろの冴えない男は誰だ?」

「多分付き人だと思う。レベッカさんは強いのだから保護者というのはおかしいことだし」

「少女の付き人…ひょっとしてロリコンか?」

「かもね。何か楽しそうにレベッカさんと話しているし」

「男として、ああはなりたくないものだ」

「全くだ」


 このロリコン否定派の2人は探索者。貴重な植物や鉱石などを採取して町におろすことを仕事にしている。探索業界では少女ながらマ・タンゴを倒してタンゴの体液採取をするレベッカが密かに話題になっていた。なので、最近は採取日になるとこの2人のようにそれを観戦しに来る探索者が増えていた。今日はこの2人のみ。普段は4~6人ほどいるので少ない方だ。ちなみに探索者達は凡太がレベッカに強化魔法を使っているとは思っていない。強化魔法は本来自身にかけるもので他人にかけることはないという固定概念を持っているからだ。


 ギャラリーが少ない事を確認したレベッカは少し安心する。本人は見世物としてやっているわけでもないし、人見知りなので恥ずかしい思いをしていたからだ。反対に凡太の方は少しガッカリした顔をする。


「今日は人少ないな。残念」

「何で残念がっているのよ…。私達の目的は体液採取でしょ?討伐ショーじゃないんだから」

「討伐ショー…なかなか良いアイデアだな。今度やらないか?」

「勘弁してよね。私が人見知りだって知っているでしょ?」

「だったら尚更すべきだよ。慣れることは克服の第一歩だからね」

「それもそうね…って乗せられないわよ!どうせ私の知名度と世間の評価が上がることが嬉しいからやりたいだけでしょ?」

「ちぇっ、バレたか」

「あなたの魂胆は全てお見通しよ。さぁ今日もとっとと採取して帰りましょう」


 その言葉を発したレベッカは呆れた顔をしているかと思いきや、嬉しそうな顔をしていた。この男の提案は根本的にレベッカに対して有益だと判断したものが選ばれる。つまり自己中心的な考えでなく、レベッカを中心に考えていると事だ。数カ月の付き合いで凡太の思いやりに嫌でも気づくようになっていた。


「嬉しそうだね。何かいいことあったの?」

「ちょっとね」(相変わらず自分がその要因になっていることには気づいてないようね)

「そうか。何に喜んだのかは分からないけどレベッカのその顔見ると俺も嬉しいよ」

「そ、そう」(無自覚で言っているのを知っているから余計に質が悪いわ)

 凡太の一言に顔を赤くしながら怯むレベッカ。まずいと思い慌てて切り返す。

「さすがはロリコンね」(これでうまくごまかせたかしら?)

「だろ?」

「誇る顔すんな。褒めるつもりで言っていないわよ?」

「そうなの?俺はそう思ったんだけど」

「そういうところ本当に変態よね」顔の赤さが消えガッカリした表情をする。

「心得ております!」敬礼する変態。

「心得ているなら直しなさいよ」

「重症だから無理かも…ってか、別に俺がロリコンで変態だろうがレベッカの幸せな顔を拝めるし、直す必要はないと思っているよ。レベッカが幸せか幸せじゃないか、そこが重要なところだしな」真顔で答える変態紳士。

「そ、そう。じゃあ今回は大目に見てあげる」再び顔を赤くして顔をそらす。

「ありがとうございます!」


 会話をしつつも凡太がレベッカに強化魔法をかけていく。粗方強化が済んだところでレベッカがマ・タンゴ集団の真ん前に高速移動し、凡太の念動弾より数倍も威力のある気弾を拳から繰り出す。吹き飛ばされるマ・タンゴが別のマ・タンゴに当たり相殺するように消滅していく。さすがにもう何十回とやったことなので慣れたもの。レベッカはまるでその辺の道を散歩するかのように余裕の表情で倒していく。それを見て「今日も調子よさそうだね」と凡太が呟く。

 反対に探索者2人はこの光景を見慣れていないので驚いていた。特に初見だった人は目が飛び出そうなほど見開いて驚く。


「あ、あれが少女の動きか!?」

 背後のマ・タンゴの攻撃をかわしながら連弾を放つ離れ業を見ながら言う。

「前見て驚き尽くしたはずだけど、まだ尽きないね」と隣の男。

「一体彼女はどうやってこれほどの力を…。攻撃の威力と移動速度がまるででたらめじゃないか」

「きっと幼少の頃からずっと厳しい訓練をしてきたのだろう。あの強さから考えるに師は勇者級の強さの人だと思う」

「違いないな。でなければあの強さは納得できん。師はどんな人なんだろうな」

「まぁあの付き人ではないことは確かでしょ」

「それもそうだな」


 そう言って凡太の方を見て皮肉笑いする2人。その目には弱々しい気弾を放つ姿が映っていた。その気弾はマ・タンゴに当たっていたがダメージを全く与えられていない様子だった。2人はそれを見て凡太が相当な弱者であると推測し『彼がレベッカの師であることはありえない』という確証を得たのだ。

 相当な弱者という点は当たっていたが、当たっていない点がある。そのことに彼らが気づくにはもう少し偏見をなくす必要があるだろう。


 ちなみに偏見がないとこういう反応をする。


(ちょうど私に攻撃を仕掛けようとしたマ・タンゴが態勢をちょっと崩している。別にあの攻撃が当たってもどうってことないんだけど…。本当に過保護なんだから)


 そう言いながら凡太の方をチラッと見て微笑むレベッカ。

 凡太の気弾は相手にダメージを与えることが目的ではなく、端からレベッカの戦闘補助の為である。レベッカの周囲で攻撃が入りそうなマ・タンゴを中心に気弾を当てて体勢を崩して戦闘状況をより優位にしていたのだ。

 

レベッカがまた嬉しそうな顔をする。それに気づいた凡太も嬉しそうな顔をする。まるで2人の心が通じ合っているかのように。

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