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戦う無能おっさん  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第179話 変態の監視は疲れるもの

 寮に戻った3人。レイナとアイが寝間着に着替えようと服を脱ぎ出したので、凡太が黙って後ろを向いて目を閉じる。2人が変装していた頃は着替える時に寝室を利用して凡太に見られないようにしていた。凡太はその様子から『2人ともシャイなんだな』と認識。しかし、正体がバレて変装する必要が無くなってからは凡太の前で堂々と着替え出すようになった。「おーい、変態がガン見していますよ」と忠告するも「あっそ」「問題ないです」と流される。この反応に対して凡太は自分が2人にとって価値の無い者と認識されているようでうれしくなるというマゾ反応を見せた。ともあれ今は凡太の方が2人の前で着替えるのが恥ずかしくなってシャイ具合が入れ替わっていた。


「着替え終わったよー」後ろからギューッと抱き着くアイ。

(そのスキンシップはどうにかならんもんかね)


アイの行動に赤面しながら心の中で返答するシャイ男。


「俺も着替えたいんだけど…」

「うん。なら早く着替えなよ」

「離れてくれないと着替えられないんだけど」

「えー」

(なるほどな)


 自身へのスキンシップは好意的なものではなく着替えを遅らせて困らせるという嫌がらせ目的であることを再認識し『嫌われていてよかった』と一安心する男。

最近公共の場から、プライベート空間に戻るとアイからこのようなスキンシップを受けることが確実に増えている。その為、こうなった時の対処法もちゃんと見つけ出していた。


「離れてくれないと今すぐキスするぞ」


 男がそう言うとアイは必ず抱き着く力を緩めて目を閉じてくれるのでこの隙に脱出する。この現象はアイが発言に対しドン引きして力が抜けた為に発生したと解釈している。

脱出後アイは決まって「もー」と言って怒りの混じった表情になる。これに対し凡太は『キモ男がキスとかマジキモいんですけど』と先程の発言に対して怒っているものと認識していた。しかし、着替えた後またしても抱き着いてくることに関しては納得のいく理解ができていない。通常ムカついたり、ドン引きさせられたりした人間にそのような行動をとることはありえないからだ。ついでにレイナの『やれやれ』といった表情も理解不能だった。『本来ならレイナも一緒になってドン引きしているはずなんだけどなぁ』と予想が外れている現状に頭を悩ます。


 寝室。散歩途中に願いとして受け取ったマッサージをアイに施していた。


「うー、極楽極楽」

「お客様、おっさんみたいになっていますよ」

「別にいいじゃない、気持ちいいんだから。それより、村にいた頃よりもマッサージうまくなったね」

「ああ。アイやレイナの他にレベッカやマリアさん、ジョウにもしているしな.。それだけやっていればさすがにコツも掴むさ」

「へぇー優しいね」

「優しい?今の会話のどこにその要素があったんだ?単に俺が自分のマッサージ技術を磨く為に皆を利用させてもらっているだけの話だぞ」

「そこそこ」眠気に襲われながらぼんやりと呟くアイ。

「そこってどこ?ああ、ごめん。そこが効くって意味か。よしきた」さっきの箇所を揉みなおす。

「違う違う」

「違った?ごめん。よく分からなくなったからまた効いた箇所があったら教えてくれ」

「分かったぁ…」ゆっくりと脱力していくアイ。落ちる寸前だ。


 数分後、アイが完全に眠りに落ちる。そっと掛布団をかけて寝室を後にした。


 居間ではソファでレイナが読書していた。「何か飲む?」と聞くと本を見ながら首を横に振ったので飲み終わったコップをシレっと持ち去り洗う。洗った後、レイナの隣に座るとレイナがソファの背もたれから背を外し、器用に凡太を背もたれ代わりにして読書を続けてくる。前までは向かいの席に座っていたのだが、毎回レイナがこちら側に移動してわざわざ隣に座って来るのでそれを見込んで最近は最初から隣に座るようになった。

 先程よりも若干嬉しそうな顔で読書するレイナを見て『面白い内容が書いてあるページになったんだろうな』とか『ソファの背もたれを使っていた方が休まるのになぁ』と思いつつも、ノートを広げて授業内容の復習を行う。大体30分ほどすると本のページをめくる音がしなくなるかわりにレイナの静かな寝息がしてくるので、起こさないように慎重に抱きかかえて寝室のベッドに寝かせる。

 この後もう30分勉強した後、居間を軽く清掃して凡太も寝室のベッドで寝る。

ベッドの並び順は奥がレイナ、真ん中が凡太、手前がアイとなっている。2人の正体がバレた時「女性2人の寝室に男いたらまずくない?」と凡太が珍しく常識的な発言をして居間で寝ることを懇願したが「それでは疲れがとれないでしょ」と却下されて今に至る。一応最後のあがきで「真ん中のベッドだけは勘弁してくれ」と懇願するもこれも却下される。二人曰く「変態危険人物は真ん中に置いて監視すべきだから」という理由だそうだ。これには凡太も納得がいき素直に聞き入れた。

 しかし、最近はそんな変態に理解不能なことが度々起こっていた。夜中に目を覚ますと決まってアイやレイナのどちらかが隣で寝ているのだ。アイはおっちょこちょいなところもあるのでトイレから戻ってきたとき寝ぼけてベッドを間違えただけだと推測できたが、レイナは違う。『きっと相当疲れているのだろう』と心配しつつ抱きかかえて自分のベッドに戻してあげた。

ちなみにアイはさらにおっちょこちょいな性格なのか凡太を完全に抱き枕と勘違いしているようでずっと抱き着いて離れてくれない。よって、元のベッドに戻してあげることもできずにそのまま朝を迎えることになってしまう。このこともあり、最近は夜中にトイレに行かなくて済むように寝る前にしっかりと用を足すようにしている。


 早朝、アイと凡太が起床する。この日隣で寝ていたのはアイ。朝目覚めたときに嫌いな男の顔が目の前にあったら通常なら思い切り顔面にグーパンをお見舞いするところだがなぜかそうならずお互いに「おはよう」と挨拶する。ちなみに凡太はアイが隣で寝ているパターンの時は毎回起きた時に殴り殺される覚悟をしている。挨拶後『今日も生き延びられて良かった。神様ありがとうございます』と感謝してから起き上がるようだ。

 レイナパターンの時はレイナがまだ寝ているか起きて目が合っても顔を赤くして再び寝るだけなので命の心配はしていない。むしろ顔を赤くしたレイナに対し『風邪かな?』と逆に心配してその日のレイナの体調に気を配るくらいだ。

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