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戦う無能おっさん  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
175/355

第175話 仲間第一号

 天使が去ってから2時間後、凡太が目を覚ます。


「やっとお目覚めか」

「ん?イコロイか。天使達は…いない。ということは倒したって事か」

「倒してはいないよ。どういうわけか奴らが勝手に去っていっただけさ」

「きっとイコロイの強さにビビったからだと思う。さすがだな」

「やめろ、皮肉にしか聞こえん」

「皮肉じゃないって。ってかこれでまたイコロイに恩ができたって事かぁ。また返さないとな」

「君が勝手に参入してきて勝手に恩だと思っただけだから別にカウントしなくてもよくないか?あと、今回僕は何もやっていない。だからわざわざそれに恩を感じなくてもいいよ」

「参入は自己責任だしカウントされるよ。恩を感じた時点で返さないといけなくなるしそれを捻じ曲げるわけにはいかん」

「相変わらず頭堅いな」

「それほどでもある」

「誇るな、鬱陶しい。あ、そうそう。今回の礼だ、受け取れ」


 そう言ってイコロイから銀色の腕輪を渡される。

礼が何に対する礼なのかという疑問よりも腕輪に対する興味が勝ったので、それに対し質問した。


「この腕輪って何?」

「蘇生腕輪といって使うと死んだ者を一度だけ生き返らせることができる」

「そんな大事なものもらえないよ」

「まぁ話を最後まで聞け。自分の腕に腕輪をつけた状態で死んだ者に10秒以上触れると蘇生ができる。蘇生後、その腕輪に封印された妖精から難題を出される。それを一週間以内にクリアしなければ使った者が死ぬこととなる。ちなみに難題の内容はその者が絶対に無理だと思っている事から選択・出題されるので実質クリアは不可能。そんなわけで死の腕輪とも呼ばれている」

「使った者が死ぬ蘇生腕輪だって…?」

(さすがにリスクの高さを聞いて臆したかな?)

「素晴らしい!リスクなしの蘇生なんぞぶっ飛び過ぎていて怪しすぎると思ったし、この方が断然効果が信用できるよ。それに無価値の俺が使えばノーリスクだし最高じゃん」ビビるどころか喜ぶ凡太。

「君はそういう奴だったな…」呆れるイコロイ

「こんな有用なもの本当に貰ってもいいのか?」

「ああ。使用に困っていた厄介品だからむしろ貰ってくれると助かるよ。それに君の方が有効活用できそうだしね。あと、重要な事を言い忘れていた。死者の魂が近くにないと蘇生は不可。魂がその辺に滞在するのは死んでから20秒くらいだから、その時間内に使わないといけないことに注意しろよ」

「20秒以内に生き返らせなきゃいけないってことね、分かったよ。ありがとな」

「それはそうと、持っておくなら奥の手みたいにしていた方が面白いから誰にも気づかれないようにすべきだよね。で、すぐに使えた方がいいからできるだけ近いところ…」


 そう言ってイコロイが顎に手を当て思考する。数秒後何かをひらめき、凡太に向かって魔法を唱え始める。唱え終わると、凡太の腹に黒い穴が開く。


「簡単な亜空間魔法だ。腹を触って『閉じろ』と言えば閉じて、もう一度腹を触って『開け』と言えば開く。3回開閉したら2度と開くことはできないから取り出し忘れに注意しろよ」


 そう言って凡太の手から腕輪を奪い取り穴の中に放り込む。


「閉じろ。おおー本当だ。穴が消えた」


はしゃぐ凡太だったが、同時に一つ疑問が浮かんだ。


「ってか、この魔法強くないか?例えば敵の腕をこの中に突っ込んだ状態で閉じれば簡単に部位破壊できるんじゃ…」

「残念。生き物を亜空間に入れることはできないんだよ。だから“簡単”な魔法なんだ。まぁそもそも君以外は魔法無効化が働いて効かないんだけどね」

「ですよねー」


 少しホッとする凡太。敵も同じように使用してきたらたまったものじゃないと思ったからだ。


「そういえばイコロイって天王って奴に従っていたんだよね?」

「ああ。そうだが」

「天王ってどれくらい強いんだ?」

「うーん。強さはよく分からないかな。魔力・体力は僕の方が上だけど、一度も勝てたことがない。そういう味では強いって事なのかも。戦闘時何らかのスキルを使っている事は分かるんだけど未だにそれが分からないんだ。直属の部下に聞いても知らないって言っていたから、誰にも情報を漏らしていないと思う…っておい! なんでニヤニヤしているんだ? 少し絶望する場面だっただろ?」

「いや、魔力・体力が極大なイメージを持っていたからちょっと安心してたんだよ。あと、それだけ情報漏洩がないように徹底しているくらいだから、スキルのネタさえつかんでしまえば充分勝てそうだしね」

「気楽でいいね、馬鹿は」

「馬鹿はいいぞぉ。お前も馬鹿になれ」

「気が向いたらね」

「ところで新たな目標ができたんだけど聞いてくれるか?」

「奇遇だね。僕も丁度新しい目標ができたところだよ」


 2人は微笑みながら同時に目標宣言する。


「「天王を倒す!」」


 今回の件で黒幕がはっきりした。フレイフ王国の件もおそらく天王がウルザに指令を出して行っていたことが推測される。放っておけば、またどこかの国で新たな圧政や殺戮が始まってしまう。もしかしたら既に始まっているかもしれない。人間同士が争うのはどの世界でもよくあることで、自我や価値観が無くならない限り絶対起こる事だと認識していたので仕方がない事。しかし、人間外となれば話は別だ。第三者が首を突っ込んで圧倒的な力を持ってめちゃくちゃにしていくのは一方的過ぎてバランスが悪い。バランスを取るにはこの元凶・天王を倒す必要がある。


『この世界のバランス調整』


凡太は神から与えられた生に対する恩を神の仕事を手伝う事で返そうとしていた。


 イコロイにとって天王はライバルのような存在でそれほど倒す必要性もなかったが、ただの修行仲間の一人がそれを倒そうとしている事を察して協力することを決意した。偶然にもその仲間はイコロイが生涯でできた仲間第一号だったので、その決意はより固くなった。

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