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戦う無能おっさん  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第148話 変態には変態を

 19時。右手に黒カバンを持った黒いスーツ姿のアイが、帰路を装い人の目が少ないところを徘徊していた。しかし、2時間経っても目的の犯人には遭遇しなかった。不自然さを出さずに周囲を警戒しながらの移動したことで、確実にアイの神経はすり減っていく。そんな時、異様に高い魔力反応を近くで感じた。それは自身の前方のベージュ色コートでマスク・サングラスをした人間から発せられている。アイはその人間への警戒態勢を強めつつ、逃がさないように周辺の逃走経路の目視確認と自身の足の強化を行う。

アイはその人間が犯人だと確信した。その理由は、その人間がアイの方を向くや否や、いやらしい手つきでエアパイ揉みをし始めたからだ。


(来るなら来なさい!)


 護身用の警棒を構え、防御面でも準備万端なアイ。

 だったが、急に目の前が真っ暗になる。消えゆく意識の中で薄っすらと見えたのは後ろに立っていた黒いフード男の薄ら笑いする姿だった。



~~~


 とある町の倉庫にて。

 

目を覚ますアイ。が、目隠しされているので真っ暗の状態。椅子に縛られた状態で座らされ、手足には錠がつけられていた。


(どうやら拘束されたみたいね。あっさり捕まっちゃうなんて情けないなぁ…)


 凡太に強気な発言したことを思い出しちょっと恥ずかしくなるアイ。

 とりあえず、逃げられないか色々試してみる。

 体に力を入れようとするもうまく力が入らない。そのとき自身がかなりの疲労状態であることに気づく。魔力も大分減っている感じだった。何らかの手段で体力・魔力が大幅に消耗させられたらしい。


(くそっ!これじゃ、何もできないわ)


 力が入らない中でも、精一杯もがくアイ。それに気づいた何者かがアイに話しかける。


「どうやらお目覚めのようですね」

「誰?もしかして胸揉み消し事件の犯人さん?」

「犯人と呼ばれて私が犯人ですって答える馬鹿はいませんよ。私はただの一般人です」

「この状況で一般人と答える馬鹿もいないわよ。一般人だったらすぐに助けを呼ぶか拘束を解いてくれるはずだもの。ねぇ、お馬鹿な犯人さん」

「ははは。これは一本とられました。でも、その言葉遣いは気をつけた方がいいですよ。穏便な犯人でなかったら今頃痛い目に合わされちゃうと思いますしね」


 アイは事件の調査内容から犯人が穏便な性格であることを知っていた。それを利用し敢えて踏み込んだ発言をすることで犯人の更なる特徴や手掛かりとなるようなものを見つけ出そうとしていたのだ。


「じゃあ、気をつけなくていいわね。あなたは穏便で臆病で拘束する以外何もできない人だもの」

「その通り。よくご存じじゃないですか」

(煽ってはいるけど、綺麗に受け流される。特に目立った隙も見せてくれないしこの男、事件の内容はともかく賢いわね)

「ところで、ここはあなた一人しかいないの?もう一人はどこへいったの?」


 アイは気を失う前、目の前にいた人間と後ろにいた人間の2人を見た。事件当初、犯人は単独犯かと思われたが、実は2人いたという事実。今までこれを知り得なかったのは、被害者女性が警戒態勢を取らなかった為である。一瞬で相手を気絶させる技術を男は持っていたのだ。しか、今回のアイは警戒態勢を取っていた為、かろうじて男の気絶攻撃に数秒耐え、その姿を目撃することができたのだ。


「もう一人?私は最初から一人ですよ」

「嘘言わないで!私は倒れる時、確かに2人見たわ!ベージュ色のコートの人と黒いフードの人よ」

「ああ。あれはカラクリ人形ですよ。ベージュ色のコートの方です」

「人形?でも、魔力反応があったし、動きも人間そのものだったわよ?」

「特注品でしてね。魔力を放出できる仕様になっているんですよ。あと、私自身の改造も加わって、より精密な動きができる完成された仕上がりになっているのです」


 人形の精度の高さを褒められたことで少し上機嫌になる男。声が少し上ずっていた。


「さて、おしゃべりはこの辺にして本題と行きましょうか」


 男の本題とは…言うまでもなくあれだろう。


「すみませんが、胸を揉ませてくれませんか?」


(やられた…)


 アイは犯人のペースに呑まれてしまったことを後悔する。もう少し情報を絞り出したかったが、この尋問が始まってしまえば、決められたパターンの応答が繰り返されるだけで、何の進展も起きないことが明白だったからだ。

考えを巡らすも、この尋問を遮断する良い案が思い浮かばない。話題を変えたとしてもこの賢い犯人のことだ「そんなことより」と切り出して何事もなかったように軌道修正をしてくるだろう。こちらの情報を少しでも引き出したいという狙いが見抜かれている可能性だってある。よって、不自然な話の引き延ばしは無効にされる確率が高い。


(こんなとき、どうすれば…)


 諦めかけたその時、アイに逆転の一手が浮かぶ。

 その一手を言葉にして言い放つ。


「揉んでいいわよ」

「どうしてもダメで…って、ええぇぇ!!」


 自らパターンに入っていた犯人が、突然の肯定により動揺する。

 アイの逆転の一手とは要求を呑むことであった。これによりパターン化された未来が変わる。それにより、新たな情報が得られて事件解決が進展すると考えたのだ。自身の胸より、市民の安全を優先した行動。仕事の名誉を守る為、自身の胸の名誉を犠牲にした勇気ある行動である。


「いいのですか?本当に?」

「いいわよ」

「やったぁ!ちなみにここには誰も助けに来ませんよ?あなたについていた発信機はここに移動する前に外させてもらいましたからね」

(やっぱり。道理でまだ誰も取り押さえに来ないわけだわ)


 もう一つの対抗手段。アイが話をできるだけ引き延ばそうとしていたのは、このことを期待してだったがその線は断たれた。


「それにしても、2個もつけているだなんて随分と用意周到ですね」

(2個?私がつけていたのは1個だけのはずよ)

「さてさて。許可も頂いたところで存分と揉ませて頂きますか」


 アイの疑問が解かれることなく、犯人の欲望が解かれ両手をワキワキしながらアイの胸めがけて接近していく。


(あーあ…。どうせ揉まれるんだったら最初はあいつがよかったなぁ)

 

アイの小さな願望は叶うことなく、いやらしい動きの手がアイの胸に触れようとした…


そのとき、


何かが犯人の手元にめがけて飛んでくる。


慌ててかわす犯人。


 コツン…


 地面に何か落ちたような音がする。


「小石?」犯人が落ちたものを確認する。と、同時に小石が飛んできた方向を振り向く。


「誰だ、お前は!」

「価値のない者に名乗る必要はない…」


(この声…どうしてあんたがここにいるのよ)


「そして…価値のない者に価値のある者の胸を揉む資格はない!」


 胸を揉みたい変態に対抗できるのは、同じく胸を揉みたい宣言をした変態のみ。

きしくもこの窮地に登場したのは…

世間から絶賛認定された変態支持率NO1の真の変態……


おっぱい隊長だ!!


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