第14話 無能の智将?
戦が終わり2日後。
ガブッガブッ
「痛ぇ!何だ?」
凡太が目を覚ますと目の前は真っ暗だった。
その暗闇を作り出していたのはホゲ。そして、真っ暗な空間はホゲの口の中だったのである。
「甘噛みならまだしも、激噛みは勘弁してくれ!」
そう言って、ホゲを引き剝がす。
ホゲは少し残念そうだ。
「おや、ようやくお目覚めですか」
アイがいた。
「あ、どうも。ところで――」
「では、私は訓練があるのでこれで」
凡太の気絶していた間の村の状況を聞こうとしたが、アイはすぐに行ってしまった。
(何か会話を避けるように出て行ったけど、もしかして嫌われてる?)
小さな疑問を抱えつつも状況確認の為、テントを出た。
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「戻って来たということはボンタさんが目を覚ましたってことか?」
「はい…」
レオの問いにアイが答える。
アイが何か浮かばない返事をしたのを察してレオが質問する。
「恥ずかしくなって、礼を言いそびれたのか?」
黙って頷くアイ。
この2日間は命の恩人である凡太の看病をすると言い出し、訓練を休んで付きっ切りで看病していた。
(そんなに献身的なのに、どうしてこうも奥手なのだろう。まぁその心理的な事をしっかり教えてやらなかった僕にも責任があるな)
双方別理由で落ち込む兄妹であったが、いつまでもそうしているわけにはいかない為、訓練を再開した。
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凡太は少し驚いていた。
(村人達の対応がおかしい)
一応皆普通に接してくれるが、どこかよそよそしいのだ。
(戦は結局他力本願な感じで決着ついたから、あいつ全然使えねーとか陰で言われているんだろうなぁ)
自分が疎まれ、嫌われている可能性がある。
普通なら落ち込む場面だが、この男は違った。
(いいぞ、いいぞ。一応この村での恩を返した後は、いつまでもこの村に厄介になるのは迷惑がかかるから、いずれ村を出る計画を立ててたんだよなぁ。村から出るとき呼び止められるのも面倒だし、村人の評価を最大まで下げておく必要があったから、順調に嫌われているようで何より。まぁ無能だから役立たずのお荷物ポジションが確定しているし、その点は余裕だわな。ガハハ!無能万歳!)
嫌われて喜ぶ変態無能おっさん。彼がMに目覚める日も近い……のか
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「よぉ、ボンタが起きたんだってな」
村人が嬉しそうに話す。
「ああ。しかも起きて早速、情報収集を始めていたぜ」
「さすが、我が村きっての策略家よ。またどでかい計画を練っているやもしれんな」
「違いないな。俺、この前会話したんだけど、緊張しちゃってうまくしゃべれなかったよ。何か見透かされている気がしちゃってさ」
「俺も俺も」
さて、この村人の奇妙な反応の原因はなんだろうか?
答えは2日前、バンガルとニゲルが勝手に誇張勘違いをした雑談内容を皆に伝えていたからである。それが人から人へ伝わることでどんどん誇張され、今や村最高の智将の評価を得るに至った。
こうして片や無能と信じるもの、片や智将と信じるもの達の終わりのない勘違い合戦が静かに始まったのであった。