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戦う無能おっさん  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第116話 最弱の魔物VS最弱の無能

 闘技場に到着し、受付で許可書を渡す。ミーラと別れ、そのまま待合室に向かう。現在討伐試験を受けている人の次が凡太の番となる。


 待合室でスライムについて考える。


(スライムはとにかく強いだろう。強さの基準を数値化するのに、グレントンの最終形態を1とすると、1以上は確定だ。グレントンの第四形態以降はレオの能力があったから対抗できたけど今の俺では第三形態の相手が精一杯。つまり、0.6以下でないと相手にならないわけだから…あれ?いきなり詰んでね?)


 考えた結果、自身の敗北が確定する。


(王国の人達みたいに手加減してくれれば何とかなるかも)


 マイナス思考の彼が珍しく希望的推測をする。よほど動揺しているらしい。


 今回の討伐試験の目的は実戦での持久力向上。凡太の戦闘力は皆無なので、実戦では味方のバフに回るしかない。バフ役は味方に使う魔力を最大限にしなくてはならない為、自身に使う魔力は最小限にする必要がある。つまり、自身に強化魔法を使わずに、長時間敵の攻撃をかわしながら味方の強化を行うのがベスト。よって、今回の試験ではスライム相手に自身への強化魔法無し(そもそも使えない)で制限時間をフルに使って時間切れで終わるというのが理想だ。そもそも凡太には魔物を討伐するほどの威力のある技がないので、個人での討伐となれば最初からそれ一択しかない。


 ドアのノックと共に試験官が待合室に入ってくる。


「お待たせしました。どうぞ、こちらへ」

「はい」


 試験官に連れられ、会場に向かう。そのまま会場に入り、中央に立つ。闘技場外周に魔物が外部へ逃げられないように強力な防御特化型の結界魔法がかけられていた。よく見ると観客席側にも魔物の攻撃がこないように結界がしてあった。


 観客席にはミーラや学園長、特待生など数十人来ていた。


(ミーラはともかく他の人が観戦している理由が分からないですけど…。あー、全員優越感に浸ろうってわけね。まぁ、そういうことならしっかり楽しんでいってくださいよ。最高の展開なら瞬殺されますんで)


 闘技場の出入口で、医療班が数名待機していた。彼らは試験者の安全を考慮して配置されている。しかし、凡太の目には観客同様、冷やかしに来ている輩にしか見えていなかった。


 数分後、出入口奥から試験官が押してくる台車に乗り、体の周りに結界を張られた状態のスライムが登場する。半透明の緑色で、楕円のアンパンを人間サイズまで大きくしたような形だった。みための質感は予想通りプニプニしていて柔らかそうだった。

 台車を置き、試験管と審判が外周にはられた結界外まで出ていく。静まり返る会場。


 そして、


「はじめ!」


 審判の合図と共に結界が解かれる。結界から出たスライムは急に目の前から消える。だが、虚像探知によって凡太の視界には入らなかったが、拡大した触覚により場所を特定される。凡太の背後から3mのところ。


(スライムが高速移動するとか聞いたことねーぞ。さすがこの世界のスライムだな)


 試験前から新天地移行テンプレで学習していた甲斐があり、このスライムの速さをみても動じなかった。むしろ、最初から本気を出され瞬殺されることも予想していたので少しホッとしたくらいだ。そんな凡太に向かってスライムが液体を飛ばしてくる。この液体も凄いスピードだ。


(どう考えてもあたったらまずいやつでしょ)


 液体は速すぎることが仇となり凡太の反射でかわされる。

 よけた後の液体は地面に吸収された。


(足止め用の粘度の高いやつではない。となると、強酸か強アルカリかな?毒液の可能性もあるし…)


 凡太が液体性質の目視分析をしていると、スライムが急に高く跳ね上がり、結界にぶつかろうとしていた。


(逃げようとしているのかな?)


 間の抜けたことを思っていると、スライムが結界に衝突。そのまま結界がゴムの様に伸びていく。引きちぎれると思うほど伸びて、最大限まで弾力を溜めたところで一瞬静止。そして、弾力が一気に解放され、パチンコのようにスライムが放たれる。もの凄い速さだ。凡太は寸前のところで回避に成功する。


(危ねー。当たっていれば即戦闘不能だった)


 スライムが地面に衝突。その勢いを地面に吸収させる前に再び跳ね上がる。まるでスーパーボールのように。そして、跳ね上がりつつも器用に液体を飛ばしてくる。結界を利用したバウンド攻撃と液体攻撃。これが繰り返される。どうやらこれがスライムの戦闘スタイルらしい。


(跳ね返ってきても速度が上がるわけではないからかわせる。瞬間移動してくる魔改造的に比べれば優しいもんよ)


 かわし続けて3分。スライムの攻撃パターンを理解し、凡太が的当ての要領でかわしながら念動弾を当てていく。念動弾はスライムに命中しているが、様子は変わらないので正直効いているかは分からないが、それでいいのだ。念動弾は相手を倒す目的の技ではなく、相手の魔力を削る時間稼ぎ目的の技。できるだけ多く当てる事が目的なのだ。


 こうして凡太の回避+念動弾パターンが30分繰り返される。

すると、急にスライムが分裂する。分裂体も当然のように目の前から消え、同じようにバウンド液体攻撃を仕掛けてくる。これも速度が上がっているわけではないので、なんなく回避に成功する。こうして、2体分の攻撃をかわすこととなった。


 凡太は険しい表情をする。


(スライムは本来、分裂が得意な生物。それが30分やってたった1匹だなんて…。全く、嫌になるねぇ)


 凡太は分裂が得意な生物なら最低でも1000匹に分裂すると思っていた。得意技を駆使してこなしのは相手に余裕があるという事。仮に1000匹分裂を実力の100%とするなら、1匹は0. 1%なので力量差は歴然だ。この相手に対し、どこまで時間稼ぎをしながら削れるか。時間と共に精神も削りながら粘るのであった。

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