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妖精の詩  作者: 南雲司
5/24

不具合

妖精の歌5

[承前]


 虚空には鈍色の巨大な円筒が浮いていた

 寸詰まりのドラム缶の様でもあった

 ゆっくりと回転している

 暗紫色の球体はその中心で大気と水を作っていた


 世界を滅ぼした災害は、大量の魔素を産み出した

 球体はそれを元手に必要のない星々を消し

 更に大量の魔素を手に入れた

 時間軸のほぼ独立した泡宇宙を作り出した


[ワクーラ]キオト

 キオトはツァロータに数名の空軍武官を派遣することにした。ウーシャラークと太守に売った円盤機には幾つもの改良部分があって、実戦でどうなのか知るためである。


 出立の段になって空厰から技官が割り込んできた。

「どうしても、この目で視たくて」

 視たい物には、イバーラクだけではなく、潜在的な友軍であるキーナンの新兵器も含まれるのだろう。


 技官はワクーラと名乗った。痩せぎすの三十代半ばの愛想の良い男だ。それが時折鋭い眼を見せるのを、武官達は知っている。

 他の技官が匙を投げた[シャオの魔石]で円盤機を作り上げたのはこの男なのだ。


「自己紹介、必要ないでしょう?ワクーラ技師」

 ここには知らぬ者など居ないのだから、武官の一人はそうからかった。


[遅れてくる騎兵隊]ウーシャラーク

 ウーシャラークが派遣したのは母艦に搭載された航空隊だけではない。が、未だ到着してはいない。距離が離れている所以で騎馬だけの編成ではある。が、急がせても馬が潰れてしまう。どうしても一定の時間はかかるのだ。


「なに最後の最後に、颯爽と現れて喝采を浴びるのが、俺達の仕事さ」

 指揮官は焦っていない。尤も焦りや戸惑いを悟られるようでは、騎兵大隊の指揮官は、務まらないのではあるが。


[余波]小さなダンジョン

 木目(シャオ)は集まった幹部達を確認する。

 話に付いて来れるかは判らないが、来て貰わないと形にならないマスターアリスは、居る。

 滞在中のオルファ姫も、居る。


 ある意味機密になるのだから、部外者は外すべきなのだが、ドロシーに言って置くのを忘れた。今更追い出すのも賓客であってみれば憚られる。

 なので方眉を上げるだけにして黙認する。


 中尉達は三人。残りの二人は人形達を伴ってカンウー軍に参加している。

 其々の部署の幹部達が数人。

 プロシージャは姫君達の椅子になっているプロシーを除けば、ドロシーだけだ。リンクを繋いでおけば、此処に居なくても差し支えないからだ。


「この極最近のガンマバーストは、勇者召喚の余波である可能性が高い」シャオは切り出した。


[不具合]漂泊のダンジョン

「これって慣性制御、削った痕じゃない?」B

「学生が自分等で慣性制御式、発見したって事?」A

「誰かが付け足して、不味いから削ったとかかも?」B

「元のボードの式、視ないと」C

「不具合の原因ぽい」B


 バグ取りなら、お任せ、のBが言うと説得力がある。恐らく此れが原因で上手く動かないのだろう。

 しかも、学生等が自分等で発見したのなら、如何にコードに引っ掛かるからとは言え、削除するのはモラルとしてどうなの、と言う問題もある。


 三娘はシャオに問い合わせる事にした。でないと先に進めない。


 三娘の問い合わせに驚いたシャオは、元の術式を読んでみた。未熟ではあるが、確かにこれは慣性制御だ。斥力だけでは上手く動かないので修正を重ねる内、偶然発見したのだろう。

 それを担当した誰かが、コードに引っ掛かるので削り、斥力だけでなんとか動く様に作り替えたのかも知れない。


 しかし、学生達に発見されたのなら、もうこれは大学の知識の一つとして認めるべきだろう。


 内規を見直す必要があるようだ。


 シャオは頭を振って、森の主だった者に慣性制御の基本式が、コードから外されるべき物になった、と念話を送った。

 と同時に、三娘にメイデン開発から手を退いても良いと伝えた。慣性制御が使えるなら、改良の為の人材は幾らでもいる。別に三娘である必要はない。


 即座に木目シャオからリクエストが届いた。三娘を欲しいと。


[衆義]イバーラク空軍の事情

 イバーラク空軍内は完全に割れていた。

 拡張政策に就くにせよ、森との連携が必要がある、と言う慎重派が主導権を握ったが良いが、ツァロータを保持すべきとする者と、解放するべきとする者で衆義が纏まらず、動くに動けなかった。


 また軍府ごとサスケラ女王に降ろうと言う動きも活発化していて、首脳部は神経を尖らせていた。そうなると自分等の行った粛清を自らが受ける羽目に成るだろう。女王にとって彼等は裏切り者であり犯罪者であろうからだ。

 密かに二度目の粛清の準備を始めた。


 しかし、


 以前クーデター成功の隠れた要因となっていた、

 女性士官達は事の成り行き、

 つまりサルーを始めとする

 当時の首脳陣の暗殺からのクーデター、


 に、


 戸惑い恐れ、

 現在の上層部に不信を抱いていた。

 いや、

 嫌悪すら覚えていた。


[ロックバグ]ツァロータ王

 四騎のロックバグが隠蔽を解いた。ツァロータ王の猟兵団と接触したからである。


「これが噂の騎乗ゴーレムか」

 ツァロータ王は猟兵団の制服の森人風の迷彩装束に、身を包んでいた。ゆったりしているとは言え、実戦用の衣服だ。歩きぶりや身振りの切れ、肉付きの具合で普段から鍛えているだろう事が、視て取れた。


「陛下の護衛を命じられて居ります」

 小隊指揮官の中尉は誇らしげだ。

 小火器が相手なら、盾として十分な働きが出来る。山沿いの離脱するルート上に戦車は居ないだろう。

 そして、この王は守るに値すると直感もしている。


 並んだロックバグを順繰りに巡り撫で、指の関節でコンコン叩き、威厳のある顔つきを維持しようとして失敗し、口許が緩みっぱなしの五十代の子供のようなおっさんが、ツァロータ王である。


[特殊戦]猟兵団の戦い

 密やかに忍び寄り、歩哨の喉を掻き切る。

 それが、攻撃の合図だ。

 そして、反撃を受ける前に撤収する。

 猟兵団にも特殊戦の訓練を受けた者が、少なからずいた。


「今時、弩か。ツァロータは余程戦費が逼迫していると見える!」

 輜重を焼かれたイバーラク軍の指揮官は、悔し紛れに大声で騙るが、兵隊は皆知っている。


 ツァロータ兵が使ったのは、特殊戦用の連発式弩だ。寧ろ、俺達が使っている歩兵銃より余程高価な、精兵用の装備なのだ。


 イバーラクは後方から次第に神経を磨り減らしていく。


[合流]カンウー軍一個小隊

 キーナンの騎乗ゴーレムに先を越されたとは言え、速度が圧倒的に違う、悔しがることではない。カンウー軍の一個小隊も十分な速やかさで合流してきた。

 森製の新型遠話缶を携えており、三か国軍との緊密なゴニョゴニョが可能に成った。


「お久し振りです」

 先行していた義勇軍の指揮官が挨拶に来た。

 僅か一個小隊とは言えカンウー軍の最精鋭からの選抜である。その指揮官も、つとに知られた大尉で、名をビリウと言う。勇将とも知将とも言えないが守備に定評のある良将だ。


 義勇軍の指揮官は、予備役の中尉。正式な要請前であったので内々の召集で集められた兵の一人である。ビリウとは面識があるらしかった。


 夕刻の軍義で、三か国軍陣の裏側に回り込んでカンウー領に入るルートを取ることが決まった。


[探し物とパターン]三娘

「思い出した?」B

「んー」A

「何の話し?」C

 暇になった事とて、新たにCを加えて再開された「探し物」は、直ぐに中断された。


『大至急、小さなダンジョンにお出でください、木目様がお呼びです』ドロシー


「ダメダメパターンきたー・゜・(つД`)・゜・」ABC


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