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妖精の詩  作者: 南雲司
21/24

なし崩し

妖精の歌21


【騎竜】天空の城

 鞍には嵩の短い背凭れが付いていて、そこから肩ベルト腰ベルトを締める。ぴったりと座って居れば風竜の魔法で落ちる事は無いのだが、腰が浮けば保証は出来ない。


「インメルマンいくぞ!」

 小隊長が叫ぶ。遠話缶は煩わしいので載せていない。風竜に乗っていれば、なぜか、声が届く。竜に命ずれば、城の女王にすら届く。

「さん、に、いち、今!」

 四騎の騎竜が一斉に上昇に入る。


 インメルマンは宙返りの頂点で背面から、ロールを打って通常姿勢に戻す、急旋回の一種だ。編隊でそれをやる。

 訓練は仕上げに入っている様だ。



【陥落】南西諸島

 迎撃に出た百隻余りの船団はほんの十数分程で壊滅した。

 総ての船が沈められずに済んだのは、明らかな逃走姿勢を見せた船、白旗を揚げた船が標的から外されたからだ。


 アマーリの父チムタカ頭領(アジ)は一番の大船に乗っていた。

 真っ先に沈められ、真っ先に戦死した。


 その日の内にオリジナル軍は、本島に上陸し、陥落させた。

 しかし、島嶼部全域を掌握するのには一週間程掛かった。

 島の数が多かったからである。


 だが、この大陸の戦力を上方修正する必要が出てきた。

 二機の円盤機が出て来たからである。

 20ミリガトリング砲で撃墜するのは容易ではあったが、

 上陸する部隊には十分な対空兵装が必要になる。



【援軍要請】キオト

 近い所以でオリジナル軍の動向は、すぐに知る処となった。

 ありったけの軍団を国境に移動させる。

 イェードゥ新領を抱えている諸国に援軍を要請する。

 キオトが抜かれれば、イェードゥ新領は蹂躙される事になる。

 要請に応じる国は多いだろう。



【ロクヨン式】東大陸

 威力の足りないハチキュウから旧式のロクヨンに小銃が変わった。旧式とは言うが、性能が落ちる訳ではない。

 口径を小さくし威力を落とした分、取り回しの良くなったハチキュウが、新式となっただけだ。


 威力が有り過ぎる為、連射の時にフルロード(全装薬)弾を使用すると反動が大きく、ジャミング(弾詰まり)も時に発生する。だが、弱装弾では亜人相手には威力が足りない。

 フルロードを単射か点射(三点バースト)で使う事に為る。

 これなら、人形(ひとがた)のトカゲを一撃で倒せるだろう。



【選抜】キーナン公国

 キーナンには、早い内に突入作戦に参加出来るか、打診があった。勿論、否やは無い。既に選抜は済ませ、作戦を待つばかりだ。


 なので、木目(シャオ)からの出動要請に、寸暇を入れず、部隊を送る事が出来た。


「何故、余が出陣出来んのだ」

 公はそうぼやいて、側近を苦笑させた。



【大拠点】西大陸

 ほぼ平らな草原は、少しの労力で航空基地と化す。大拠点となる。

 遊牧民を平定し終えた後、建設機材、資材が大量に送られてきた。戦闘車両も、平行して召喚される。

 大陸全土を支配するのは時間の問題だ。



【影響】キーナン大学

 南西諸島が陥落した事は、遠話缶の普及の所以で翌日には大陸全土に知れ渡っていた。

「おい、止めろよ、死ぬぞ」トムオス

 親友のアマーリが義勇兵の志願書を書いているのを見つけた。


「俺は親父の仇を取らなきゃならないんだ、

 頭領の息子だからな」アマーリ

「大学で兵器開発とかしてた方が効率的じゃないかな?」カーシャ

「アピールって奴さ」肩を竦めてアマーリ

「こっちの方が良いぜ」クォタ


 クォタの差し出したのは、キーナン陸軍の大学に向けた臨時技術士官募集のペラだった。大学に在籍したままで仕官し、戦後復学が可能と為っていた。


 その時カーシャの転移石がブルブル震えた。

 木目(シャオ)からだった。

『大至急この間のメンバーで、小さなダンジョンに来て欲しい』


【南方派遣軍】神樹の森

 サスケラから準備が出来たと、連絡があった。

 突入部隊を早速召集するにしても、連携の為の訓練は必要だ。

 一週間から十日は視ないといけない。


 遅滞を目的とした軍団が編成され、一部が出動した。

 母艦二(せき)、護衛艦五(せき)のユグダ郡打撃部隊、

 武功艦ヴァルハラを旗艦とする母艦二(せき)編成の森空軍、

 ユグダ郡母艦には鷲型が、森の母艦には、其々(それぞれ)丸太と木馬が載っている。

 目的地はキオト、島嶼との距離から言って、すぐにも敵が侵攻してくるだろう。


 サルーは後続だ。装甲の脆弱な輸送艦に陸上部隊を詰め込んでいる処だ。終わり次第出撃する事になる。


 突入部隊の手配を終えた木目(シャオ)に樹母様の一人からリンクが繋がった。

『突入作戦前倒し!決行は今日!集められるだけ急いで集めて!』A



【ゴーレムマスター】歪なダンジョン

「俺、人形遣いなんだよね?」虎治

「はい、間違いなく」コア

「なんで皆ゴーレムマスターって言うんだろ」虎治

「一般人には、ゴーレムと人形の違いは判り難いですから」

「どう違うの?」

「ゴーレムはぶきっちょで、人形は可愛いです」

「そかー」

 いつもの様に、虎治が騙されている所に、木目(シャオ)から連絡が来た。


『大至急、人形部隊とワルキューレを各一個小隊、用意して。

 準備出来次第、漂泊に送る』



【捕囚】小さなダンジョン・漂泊のダンジョン

 ドロシーは帰還して直ぐにアリスの様子を見に行った。

 アリスは寝ていた。しかし、何か変だ。傍らに侍るプロシーも、アリスの側でペタンと座り込んでいるウィローも、只の置物のようだ。

「プヨ!」

 ドロシーは叫んだ。何かがあったのだ!


「お母様方、小さなダンジョンのマスターが、オリジナルの捕囚に成りました」JIN

「はぁー、!?なにそれ!」ABC

「早急に救出する必要があります。思念体の状態で高エネルギー情報子に依る解析を受けています」

「むちゃくちゃヤバイじゃん!」B

「眷族三体が防御を試みていますが、長くは持ちません」

「ショタ!門の準備!」C

 行ける者だけで行くしかない。

 Aは木目(シャオ)に連絡を取る。

「突入作戦前倒し!決行は今日!」


「キャシー!慣性爆弾、大急ぎで量産、作れるだけ作って」B

「効果的な爆発ポイントも大至急計算!連続で爆発させるのも計算に入れる」C

「なに考えてる」B

「壊さずに軌道から弾き飛ばす」C


「転移要請ありました。ショタ様お願いします!」二号機

「こ、こ、こっちもですー」初号機


 一つの門からは騎竜三騎、

 もう一つから、ロックバグとメイデンが、

 漂泊のダンジョンに入ってきた。


 続々と転移要請が入る。雑多な部隊が、それでも、如何にも精鋭らしく、整然と隊列を組んで後続の邪魔に為らぬよう、機敏に移動する。


「死に戻りアミュと、じさま式隠蔽魔石はこちら!

 持ってない方!取りに来てくださーい!」キャシーの誰か

「新型歩兵銃エーケーと弾薬セットは此方!」別の誰か

 いつ、拵えたのか、幟を背中に括り着けている。

 その隣には[取説係]の腕章の捻り鉢巻姿のキャシー達

 なんで捻り鉢巻?

「御茶にお菓子ーおせんにキャラメルー」カート押してるキャシー

 ロリガラスの指揮でブラスバンドやってるキャシー達や

 その音楽に合わせ軽業ダンスのチアリーダーキャシー達もいる。


「虎治来た!先陣おね!作戦開始!」C

 まだ総ての部隊が揃った訳ではない。だが、一刻を争うのだ。


 なし崩し突入作戦は開始された。


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