表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精の詩  作者: 南雲司
2/24

燃える鋼鉄

[火気厳禁]

 綿火薬の増産に必要な硝酸が逼迫し始めていた。元々錬金術絡みのセルロイド製造に使われているくらいだから、それなりの生産量は在る筈なのだが、製造元である坑洞が増産を渋っているのだ。理由は分からない。

 イバーラク軍部は錬金術組合に依頼した。硝石から作り出すには硫酸が要る。アンモニアから直接作り出す方策を錬金術師達は探り始めていた。


「触媒ってバナジウムだっけ?」A。

 神樹の森でも硝酸の逼迫は問題に成りつつあった。図面の引き渡しに訪れていた三娘は、森工厰の技官から相談を受けた。


「適当な金属に付与すればなんでも良いんじゃね?」B。

「その手があったか」A。

「高圧高温対策も真空圧縮で出来るぽい」C。

「一番の肝の冷却行程にも使えるねー」A。

「余分なNOは、繊維構造体使ってフィルタリングすれば」B。

 技官はメモを取るのに必死である。てか、何でそんな事を知ってる、三娘よ。


[病葉(わくらば)]

 荒野であっても、春は来る。薄汚れた褐色の灌木もそれなりに芽吹き、その事を教えてくれる。小さなダンジョンの春を確認する様に空を舞っていたドローン達が奇妙な物を見付けた。


「こりゃ、なんだ?」

 ガイコツ中尉の発言が、居合わせた者達の代弁となった。

 恐らく灌木であろうそれの画像は、襤褸を纏っている様にも見えた。その襤褸は、拡大してみると葉肉がボロボロに落ちて、ねじ曲がった葉脈、しかしそれでも結構な量のしわくちゃな葉肉を残した巨大な数枚の葉だ、と言う事が分かる。


「アーカイブから去年の今頃の奴を探してみて」

 木目シャオがプロシーに指示する。この結節点に一番馴染んでいるプロシーでなければ探し切れないだろう。

「ありました」

 見付かった同じ灌木の過去は、何の変哲もない普通の雑木だった。


[鼓動]

 ツァロータで小さな暴動が何度か起きた。

 イバーラク兵が適当に選び出した首謀者の首が幾つか晒された。

 その内の一つが市井をおとない民と交わる事を楽しむ

 王族の物だった事から、事態は急転する。


 その王族は、チマタ殿下と呼ばれていた。

 殿下が暴動を煽るどころか収めようとしていた事は、

 数々の証言が一致している。

 そして、概ね収まりつつある処へ、

 イバーラクの治安兵が雪崩れ込み、

 身形の良かった殿下はその場で首をはねられ

 装飾品は剥ぎ取られた。


 次の日から、酔ったイバーラク兵の死体が路地裏に

 転がるようになった。


[カラスの娘]

「ショタさぁ」

 Bがショタガラスに話し掛ける。現在の彼はヤタガラスモードだ。

「そのまま、ショタ変したら、丁度良い大きさになるんでね?」

 口をパッカリと開けるショタガラス、考えてい無かった様だ。頚をブンブン振り始めた。この動作は必要なのか?なんかショボい。暫くしてポワンと変身した。

「何でロリ!」ABC。

 そこには、丁度良い大きさのゴシックロリータがペタンと座っていた。お目々グルグルで立っていられなかった様だ。


[月の浦]

 イバーラク水軍航空隊の新鋭機は、ペラ式である。

 シャオがイバーラクと袂を別った為、

 噴進機の無限補給魔石への紐付けが出来なくなったからだ。

 それでも性能は侮りがたい。

 三連タンデム二機で一つの六枚ペラを回すのである。

 速度は十分に出る。


 四機のペラ式揚力胴は、月明かりの中、夜間飛行訓練をしていた。

 如何に性能が優れていても、衆寡は敵しない。

 寡兵が寡兵として戦える戦場を設える必要がある。

 湖面に映る月影を追うかの様に訓練は続いた。


[燃える鋼鉄]

 ツァロータの暴動は、押し止める事が難しく成って来ていた。王室は止め様とはせず、寧ろ暴徒に護衛を付けた。抗議するイバーラクの使者に王は言った。

「先ずは、我が甥を殺した部隊の首を並べ、奪った物を返せ。話はそれからだ」

 イバーラクは王城を攻め陥とした。陸軍航空隊の初陣は、同盟破りと言う不名誉な物になった。

 王は逃れ、カンウーに親書を送った。旬日の内に義勇兵数百が越境した。王族のカンウー領への退路を開け、と密命を受けていた。

 カンウーからの要請を受け、小さなダンジョンは対空部隊をカンウー領に派遣した。指揮官の二人の中尉はカンウー軍の幹部に語った。

「俺達は、敵戦車ですら燃やす。負ける気遣いは無い」


[妖精の詩]

 光の粒子が舞う。余人には見えぬ事にアリスは気付いていた。なのでそのまま歌う、色取り取りの光の舞踏に合わせ、しかし、語らず歌う。

       ・

       ・

       ・

 その日のアリスの歌は、何時もとは違っていた。耳を傾けていた兵達は、此れは何かの予兆なのだろうかと、訝しんだ。

お気付きに為られた方も多いかと思いますが、本作品群は、韻文を強く意識して書かれています。「此れは、韻文だ」と主張出来れば良いのですが、まだまだ其処には到達していません。努力目標ですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ