洞穴
妖精の歌18
【修行】森の滝
三娘は滝の前に連れて来られた。
「普通に修行ぽいね」A
「魔法で傘架けるかい?」B
「泳いで滝を登るのが修行と見た」C
「魔素を漏らさず、襦袢を濡らさず、時間まで耐えるのが修行です」
着ている物を濡らさない為には体表から最大で数センチは、効果的な魔法を伴った魔素で覆わ無ければ為らない。ところが、体表から少し離れた処まで魔素を染みださせれば、拡散する。
それを何とかしろ、と言うのだ。
「ムリゲー来た」A
「風邪引いちゃう」B
「ロマン!」C
例に依ってわちゃわちゃが始まる。
「魔素で繊維構造体を作る」C
「無理じゃね」B
「でも、魔素の分子構造体とかあるぽい」A
「へ?」BC
「微細プロシージャとか、魔素だけで出来た疑似生命体ぽいし」A
「!!」BC
なぜか、言い出しっぺのCが、驚いている。
可能だとは思っていなかった様だ。
【侵攻】東大陸
進軍は困難を極めた。大陸の南端であるためか、植生は密生し厄介な毒を持つ小動物が、頻繁に部隊の足を止めた。
また、人にはとても見えない亜人も確認され、屡々交戦を余儀無くされた。5.56ミリでは威力不足で弾倉半分程撃ち込まなければ、倒れなかった。
そして、更に厄介な事に夜行性であるらしかった。
「一旦、戻ろう」
海岸まで戻って、簡易的な砦を築く。それを橋頭堡に援護し得る場所に砦を築く。安全に寝れる所が必要だ。
そして、先ずは亜人の駆逐だ。
【魔素構造体】三娘
「出来た!」コーディングの早さでは誰にも負けないC
「C早い」バグ取りは得意なのに、即興は苦手のB
「なんかテカってる」拘り過ぎて、進んでないA
「ラミネートコート」バシャバシャと滝に向かいながらC
「ちべたすぎー!」直ぐに帰って来たC
「保温も必要?」書き直しを検討してるA
「反射とかじゃ駄目かな」B
「強度弱いと割れるよ?」C
「間にクッション容れて三層位にすれば?」A
「いけるぽい」B
「やってみる」C
【洞穴】樹母様方
反射の効果を試した。例の背中電気である。
念の為、自動で層が増えるルーチンも付け足した。Aの再提案だ。
「くたばれー!」C
「むはははは、効かぬわ!」B
「ちょっと!威力強すぎ!魔力切れたら死ぬよ?」A
BとCは滝に打たれながら互いに[背中電気]を打ち合っているのだが、それが互いに反射する物だから、増幅して放電が目に見える程に成っている。
これじゃ背中電気じゃなくて背中雷だ。
ドカンドカンと凄い音するし、滝の水は三娘に落ち掛かる前に蒸発してる。湯気と水煙、バリバリと走る放電、なんか凄い事になってる。
なので、Aは早々とリタイヤして陸に上がっている。ヤバすぎ。
「樹母様方、その辺でお止めください。滝の裏に洞穴が出来て仕舞いました」神官長
「あっ」BC
【編成】木目
突入部隊は、
サルーの処の陸戦隊、
森の特殊戦部隊
歪の人形部隊
小さなダンジョンの人形部隊
キーナンの騎乗ゴーレムとメイデン
天馬と丸太にも参加してもらう。
方舟は巨大だ。デュプリに出力して貰った図面を基に木目は考える。
巨大とは言っても、直径は数キロ程でしかない。
小回りの効く天馬や丸太は使えるが、鷲型や円盤機では不自由な機動を強いられるだろう。
サスケラの処の風竜はどうだろう。広範囲を焼き払えるブレスを持っている。
木目はサスケラにリンクを繋いだ。
【出口】三娘
泡宇宙と言う物がある。質量は僅少なのに、閉じている、と言った、この作品の中でもトップクラスにご都合主義な設定の存在だ。
もし、現実に存在するとすれば、それはブラックホール的な何かで有るだろうし・・・。
神官長に大目玉を貰って修行から帰った三娘は、初号機と二号機を呼んだ。
「リストって要するに次元数を落として、[現在]に紐付けた泡宇宙って事でオケ?」B
「あの、あの、は、はい」キャシー初号機
「虎治んとこの[ルーム]とか[養卵器]とかも似たような仕組みだよね?」A
「泡宇宙の中にマイクロ泡宇宙を詰め込んでるです」キャシー二号機
あれ?同じキャシーでも、わたわた度が違うのかな?
「いけんじゃね?」B
「いけるぽいね」A
「どう?」キャシー初号機を向いてC
口をパクパクさせてる初号機を尻目に答えたのは二号機。
Cは詰まらなさそうだ。
「泡宇宙の強度が足りない感じです」
「泡宇宙を入れ子にしたらどや?って話」C
パクパクが収まって初号機が答えた。
「じゅ、じゅ、十個位なら・・・」
どうやら、思考回路は初号機の方が少し深い。二号機はわたわた度が小さいと言う関係らしい。トータルするとパフォーマンスは同じ位なのかな?
で、何の話かと言えば、転移爆弾の実験場をアーカイブの中に作ろうと言う話である。安全式は、転移で発生する高エネルギーをアーカイブの[隙間]に落とし込んでいる。この仕組みは使えない。
だって、爆発しないじゃん。
「爆発しないね・・・」A
「んだね・・・」B
「・・・」C
結局、転移では物質を重ね合わせる式は起動しないのだった。
「だめかー」AB
「行ける!」C
「どうやって?」AB
答えず、猛烈に、猛然と、式を書き出すC。
「なんて、無理矢理な・・・」Cの書いてる式を覗き込んでA
「慣性制御で、総ての原子を一点に集中?」同じくB
取り敢えず、Cが行き詰まった時の為に、構造式を書き出すA。
「キャシー!何人かこっち来て!」応援を呼ぶB
【燕】森工廠
良い機体だった。過去形であるのは、オリジナル軍には通用しないからだ。
「空中隠蔽と慣性制御着けて作り直せ」じさま
「両方とも機密」エルフの小僧
基本式の機密が外れたとは言っても、周辺式には未だ機密の部分が多い。
「直ぐに解除になるじゃろ。儂が責任を持つ!」じさま
【鷲】サルー
突貫の甲斐あって、全機、慣熟を始められた。
「司令ホントにやるんですか?」
当たり前じゃないの、具体的な性能肌で感じとかなきゃ、指揮なんか取れないでしょ。
サルーも単機慣熟を終え、編隊慣熟に割り込んで来ていた。
上空に上がり、全機位置に着いているのを確認した一番機の中尉は、こっそり、ぼやく。
事故られたら俺の責任なんだよな。
「編隊8の字いくよー」サルー
中尉は泣きそうだ。一番機は君なのだから、サルーの命令は無効だ。誰か中尉に教えて上げて。
【じゃあな】カーシャ
泊まり込んでの、カーシャのバイトは三日目に為っていた。
キャシーを二体手伝いに付ければ、十日は掛かろう筈の作業をもう動作試験の段階だ。さすがは、ドワーフ、仕事が早い。
と、とことこと此方に歩いてくる。
「チェック頼むぜ、仕様通りには仕上げたつもりだけど、使うのはあんたらだしな」カーシャ
手が空いている分けでは無いがBが立ち上がる。Cはメインだし、Aは未だ構造式が上がってない。Bの本番は未だなので手伝いをしてるだけだ。
「早いねー、未だ二三日係るかと思ってたよ」B
ぐるりと外観のチェックから始めるB。
「優秀な助手二人も付けて貰ったからな」カーシャ
カーシャもキャシー達が人間でない事は知っている。ブロシージャとか言う、人間とゴーレムの合の子みたいな種族だ。
背面のソケットが入っている辺りの形状が、図面と違ってふっくらしている。この方が出し入れが楽そうだ。開けてみる。銀製の棒が飛び出てきた。図面には無かった仕組みだ。
「なにこれ?」
「魔素プラグ、ロール魔石とやらをそこに嵌めるのさ」
魔素充填用の魔石ボックスは、右側にあって大きめだ。ロール魔石の中空部分に直接詰めるより、こっちの方が優れている。
魔石のサイズを気にしないで良いし、ロール魔石を入れっぱなしで充填用の魔石の補充が出来る。ソケットは、プラグの下から四枚の花弁の様に開いていて、ロールをプラグに嵌めて押し込めばピタリと閉じる仕掛けだ。
「・・・」B
「なにか不味かったかい?」カーシャ
「逆だよー!すごいよ、これ」B
「プラグの太さで、ロール魔石のサイズ変えられるじゃん」同
大量に魔素を消費する術式なら太いプラグ、少ないなら細いプラグの方が効率的だ。ロール魔石のサイズも何種類か有った方が良い。
問題なく動作する事を確認したBは、作業終了の書類にサインしてバイト代と一緒にカーシャに渡した。
「カーシャプラグの使用料、一個銅貨五枚でどう?」
「面倒だから、買い取りでお願い出来るかな」
「判った、それだと何れくらいの価値に成るか、計算しないとだから、後になるね」
「ん」
「じゃあな」
礼を述べた後カーシャは転移門を潜った。
【シャトル】ワクーラとドロシー
「これを調べて有効に活用出来るのは、神樹の森だけです」ドロシー
「しかも時間は逼迫しています」同
「だが、滷獲したのは我が国だ、権利は此方にある」キオト担当官
「相応の補償をする用意は有ります。ただし時間は限られている。
余りに交渉が長引く様だと、実力行使に出ざるを得ないと森の上 層部が考え出す可能性を考慮してください」ドロシー
「脅しには乗らんぞ!」
「決裂ですか?その方が話が早くて良いですね」ドロシー
「即、宣戦布告するだけですから」にっこりと同
解析能力の無い国がシャトルを独占すれば、利敵行為と見為し得る。宣戦布告の理由にはなる。些さか乱暴ではあるが。
「待ってくれ!」ワクーラ
「飛空艇の解析に同席する事は可能か?」同
「可能です。我々の目的は、可及的速やかに情報を収集し、此れを運用する事であって、情報の拡散もまた運用の一つで有ってみれば、高名なワクーラ技師の参加を拒む理由は在りません」ドロシー
「空軍工廠は引き渡しに同意する」ワクーラ
「それだけでは、足らん!」キオト担当官
「では、ご要望を述べて下さい」ドロシー
「鷲型を一機、いや五機、それも使い古した中古で無くて、バリバリの新鋭機だ」担当官
どうやら、担当官も無能と言う分けでは無い様だ。
奇妙な飛空艇を手元に置いておいても大した収穫は無いだろう。それなら、せいぜい森に高く売り付けた方が得だ。
「よござんす、空中隠蔽と、慣性制御付の最新鋭機を五機差し上げましょう」ドロシー
ドロシーから飛空艇ごとポインターを手に入れられたと、連絡を受けた木目は、漂泊のダンジョンに送るよう指示した。
あそこからなら、此方の座標を秘匿したままポインターを起動出来る。もし、何かしら不都合が有ったとしても、樹母様方が何とかして下さるだろう。
【友達百人】漂泊のダンジョン
もし、漂泊のダンジョンを良く知る者が、ここを訪れたとしたら来る場所を間違えたのかと思うかも知れない。
百名程のメイド服姿の少女達がわたわたわたと走り回っている。
大急ぎでシャトルを置けるスペースを、作らなければ為らない。
みるみる一つの山が片付いて、隣の山にキャシー達が移動する。
目安の積もりか、空ける場所の中心にヤタガラスが立っている。
しかしながら、精一杯首を伸ばしても腰程の丈にしか為らない。
見えないじゃん。
準備が、終わってBが呼ばれた。
「カアアア!」仮面を着けたB
門が開く。だが小さい。どうする積もりだ?
検索枝を門を潜らせてシャトルに紐付ける。
ヤタガラスが羽ばたいて、空いた場所の上を周回する。
「カァァァァ」
床の上に、ヤタガラスの軌跡をなぞるかの様に
魔方陣が出現した。
「3、2、1、今!」B
シャトルが現れた。
【竜騎兵】天空の城
十八頭の風竜の首の付け根に鞍が設えてある。
「伏せ!」
騎士団近衛中隊長に任ぜられた騎士が、号令を掛けると、竜達が一斉に伏せた。
「各員、騎乗!」
横隊の騎士達が駆け寄り、それぞれの騎竜に跨がる。
「首起こせ!」
未だ、訓練は始まったばかりだ。
暫くは城の周りを駆け足で巡るだけだ。
だが、目処は立った。
マティは言う、現在風竜だけが、
唯一オリジナルの空軍に対抗し得るのだと。
騎士達の士気は高い。
付帯脳の威力は絶大だった。試しに鞍に取り付けた隠蔽と慣性制御を、竜達は苦もなく使いこなせる様になった。
のみ為らず、短距離転移を遊びの中で勝手に覚えた。
特に賢い何頭かは、片言の人語を話す。
「もう、飛竜と変わらぬのでは無いか?」サスケラ
「体が小さく、機敏な分、相手によっては強いかも知れませんよ」マティ
木目からリンクが繋がった。
「あと一月あれば出せるぞ、待てるか?」サスケラ