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妖精の詩  作者: 南雲司
16/24

シャトル

妖精の歌16

【シャトル】方舟

 無人のシャトルが転移ゲートに載っている。これを成層圏のすぐ上に転移させる為だ。

 勿論、静止軌道から投下しても良いのだが、加速が付き過ぎる。

 熱破壊を避ける為のノウハウはあるにはあるが、それは大国が血を流しながら手に入れた物の、大雑把な概要でしかない。

 転移ゲートを使えば、極普通の航空機の耐熱レベルで降りる事が可能に為る。


 ただ、ポインター無しの計測と計算式での転移になる。

 誤差はキロ単位になるだろう。無人機にするのはその為だ。

 シャトルにはポインターが積んである。

 旨い位置に転移出来れば、乗員が乗り込み、

 空気の層に柔らかく侵入し、適度な場所にゆっくりと降りる。

 そして、ポインターが再び活躍する。



【修行】森の神殿

「てか、なんで少林寺遣ってる分け?」片足立ちでB

「理由も教えるとか、示唆するとかのが、修行効果高いと思うんだけどねー」さっきから、五回は転んでいる運動音痴のA

「・・・」左で片手拝み、右には短めの(こん)で、何かに成りきってるC

 時折、片手で棍をブンブン振り回すのだが、

「ちょっ!危ないC!」避ける拍子に転けるのが六回目になったA

「結構、様になってる。Cなんかやってた?」離れてて無事なB

「初めて」元々、体育の成績良かったらしいC


「なんか、コツあんの?」A

「慣性制御、自分に貼った」C

「魔法使って良いんだ」B

「そいや、使うなとか言われてないねー」A


 流石は、樹母様方。神官長は習ってから幾許も無いのに、魔法の自己付与で片足立ちのまま、棍の打ち合い対練(ごっこ遊び)に興じていらっしゃる、三魔女様を見誤っていた事を恥じた。



【隠蔽問題】森の工廠

 やっかいな問題が浮上してきた。

 オリジナル軍に隠蔽が通用しない可能性が出て来たのだ。

 隠蔽は可視光線に干渉する魔法だ。

「見えない光を使っているのか!」じさま

魔道具(電子機器)で赤の光より波長の長い電磁波を索敵や照準に、使っています」シャオ付きデュプリ

 じさまを含め魔法使い達は、赤外線、レーダー波等の電磁波も、光の一種として認識はしている。だが見えないのだから使い道がない。畢竟研究は遅れる。遠話として電磁波が利用される様に為ったのは極最近の事だ。それも、古代魔法(科学知識)の使い手、イェードゥの勇者に依って作られた物が、基に為っている。


「エルフ等は、自分等で何とかするじゃろう」

 パティは、四つ足用のエーケー製造魔石に掛かりきりだ。空いている者が居ない。

 じさまはぶつぶつ言いながら自分で術式を編み出した。



【死に戻り】漂泊のダンジョン

 量産型デュプリを二体召喚した事で、三馬鹿、もとい、三娘、て今は、三魔女?三樹母?どっちだ?えーい面倒だ、三娘でいいや。

 けほん、三娘の作業は事の外(はかど)った。

「てか、アタシラより仕事早くね?」B

「ミスは、殆んど無いしねー」A

「キチンとし過ぎてて、ロマンがない」C

「それ、基準おかしいから」AB


 取り敢えず、更に三体増やした。

 名前は順に

  キャシー初号機

  キャシー二号機

  キャシー三号機

    以下略

 である。

「えと、えと、えと、それ番号付けただけ」キャシー一同

「エヴァみたいでカッコいい」某

「ロマンて言わないんだ」AB


 アーカイブの構造が見に染み付いているデュプリを、三体集中的に死に戻りアミュに投下した事で、真っ先に仕上がった。

「死んでみないとちゃんと動くか解んないけどね」A


 最優先は、オリジナルを、思い出しさえすれば、よく知っているワルキューレ。戦闘員の分三百個を量産して送った。



【事件】歪なダンジョン

 ワルキューレと言っても、総て虎治の嫁と言う訳ではない。

 森人の女性や、イバーラク人の娘もいる。第一期生は、殆んど眷族化していて、嫁に潜り込んだのもいるが、二期生からは所属が[歪]と言うだけで眷族化している訳でもない。


 だが、死に戻りアミュを使う為には、アーカイブとのリンクを保ち続けなければ為らない。コアは、その為の簡易的な方策として、眷族化する事を娘達に薦めた。

 それは、形式的な物として受け取られ、殆んどの[嫁]以外のワルキューレも眷族になった。

 しかし、虎治に取っては眷族は、イコール嫁であった。


 そして、事件は起こった。


 嫌がるのも、一つのプレイだと認識していた虎治は、森人の女性をレイプし、組み付いて避けようの無い状態で、首筋を刺され、死に戻りレベルを一つ上げた。

 女性は大罪(主殺し)を犯した事に怯え、アミュレットを外し、自殺した。


 しかし、眷族化していた事で、コアに即座に再召喚される事になった。


「で、なんでアタシラが呼び出される分け?」B

「主殺しは大罪ですが、馬鹿マスターの自業自得とも言える訳です。量刑をどう案配するか、また、森との関係もありますし、善後策のお知恵をお借りしたく」コア

「無罪」C

「んだねー、眷族っても、当人は形だけのもんて思ってたわけでしょ?なら、森人の法が優先だし、虎治が死刑だよ?」A

 実際には、王に準ずる身分の虎治を罪に問う事は、出来ない。これは例えである。

「元凶のハーレムは一旦解体かなぁ」B

「むふふ」C

「なによ?」AB

「虎治独占!」C


「承服しない嫁達もかなりの数と想われますが」コア

「あの、すけべ、モテるからねー」A

 もう一つ、身分の問題というのもある。

 ダンジョンマスターは、王に準ずるものである。そのハーレムに属すると言う事は、ランクは落ちるとは言え、王族に準ずると言う事なのだ。その身分を捨てたくないと言う者もいるだろう。

「まあ、希望者は戻っても良いけど」B

「アタシラも含めてだけど嫁達が、甘やかしてたってのにも原因つか問題があると思う」A

「ペナルティは必要」C


「で、一旦解散して、一月(ひとつき)位冷却期間置いて、希望者は戻っても良い。で、新嫁は嫁会議で認めたのだけオーケー」B

「会議で認めてないのは、手も握ってはいけない」A

「違反した虎治は背中電気の刑にする」C

「初耳、背中電気?」AB

「こう言うの」C

「うぎゃー!」B

「何をした!」A

「夕べ思い付いて作った」C


「人体に直接魔法を掛けるのには制限がある筈ですが」コア

 人体に限らず、あらゆる生命体には、体表から魔素の蒸散を防ぐ仕組みがある。なので、直接魔法を発生させるのは難しいし、治癒魔法には、特殊な才能が必要になる。

「皮膚から一センチ離して放電すればオケ」C

「成る程、こうするのかー」B

「うぎゃーー!」C


 その女性には、無罪を告げると同時に賠償金が支払われた。

 また、本人の希望により森への帰属を許した。

 アミュレットの都合で、眷族化は解かずには置いたが、

「ちょっと弄って何処の眷族でも、そのダンジョンのデュプリが設定管理する様に変更出来ると思う」A

 それまでの、時限的な処置と納得してもらった。



【滷獲】キオト

 その見慣れない形の大振りの飛空艇は、キオト国境を掠め湖水に着水した。沈みもせず、波に流され砂浜に打ち上げられた飛空艇は、キオトに滷獲された。無人であるらしかった。


「なんだ、これは!」

 検分に来たワクーラ技師は、その飛空艇に概知の付与が一切付いてない事に驚いた。なぜ、こんな物が飛べるのか。純粋に解らなかった。

「こりゃ、開けられねえな。扉焼き切ってもいいか?」

 ドワーフにも開けられない錠らしい。

「待って下さい、森に古代人の魔術に詳しい者が居ると聞いてます。問い合わせてからにしましょう」

 もし、これが[侵略者]の物なら、小ネジ一本潰したくはない。


「ドロシーと言います」

 森から派遣されて来たのは、メイド服姿の少女だった。



【燕型】じさま

 のそりとワーツィがやって来た。

「なんじゃい」不機嫌にじさま

 頭を張っていると、一つの事に掛かり切りに為る分けにはいかない。

 ついっと書類を付き出すワーツィ。

「燕型か、輸出用の飛空艇じゃな。やっと出来たか、あんまりもたもたして居るから忘れて居ったわい」

 明日試験飛行をしたい、許可をくれ。概要はこうだった。

 当然、じさまも付き合う事になる。隠蔽問題はその分遅れる。


 じさまが、これ以上不機嫌に成らない内に、ワーツィは退散した。



【再召喚問題】森のシャオ

 事件のあらましを聞いたシャオは歪なダンジョンの歪さを改めて認識する事になった。一つには再召喚である。

 一般に眷族の召喚は種族の召喚であって、個々人の召喚では無い。つまり、一度死んだ眷族を再召喚する事は出来ない。

 歪なダンジョンではそれが出来ると言う。


 樹母様方が作っている、死に戻りアミュレットが普及すればいざしらず、歪のダンジョンは不死身の兵団を抱えている唯一の勢力と言う事になる。

「方舟での再召喚システムが踏襲されていると、考えられます」

 デュプリコアに訊けば、そう答えた。

 ならば、オリジナルの軍団も不死身の軍団、それも、十万の大軍を抱えている事に為る。


 勝てない・・・。シャオは絶望的な想いに捕らわれつつあった。



【暇になった三娘】漂泊のダンジョン

「やっほー、帰ったよー」B

 三娘が帰還すると、一ダースのキャシー達が、一ヶ所に机を集めて作業していた。

「あれ?どうしたの?集まって」A

「他のが、一段落ついたので、解析魔石に集中してるです」

 何号か判らないが、キャシーの一人が答える「え?早すぎね?」B

 Bは自分の受け持っていた、超分子振動接着器のコードを確認する。バグ取りまで終わっていた。

「アタシの仕事返せー」

 Cが泣き出した。てか、仕事嫌いじゃ無かったのか?


 Aは、死に戻りアミュレットの改良をしようと椅子に座った処で思い付いた。

「一人こっちに来て、死に戻りバーアップするから」

 どうやら、コーディングはキャシー達に任せた方が早そうだ。

 楽だし。


 Bはじさまの所のパティにリンクを繋いだ。

 四つ足をもう何台か調達する為である。

『あの、あの、あの、在庫がないですー』( ;∀;)


「みんなー!しごとだよー!四つ足作るよー!」B

 なんか、嬉しそうだ。仕事嫌いじゃ無かったのか?



木目(シャオ)】神樹の森

 木目は森の軍府に詰めていた。

 実動部隊はサルーが采配を振るうとして、情報と同盟諸勢力との調整を受け持つ事になる。


 オリジナルの艦隊と目される光点は、軌道上に展開を終えたと見え、森からだと二つしか見えない。東と西の然程低くも無く高くも無い位置にに留まり続けている。静止軌道なのだろう。


 その光点からかどうかは判らないが遥か上空で転移の痕跡が二つあった。

 侵攻が始まったと判断した木目(シャオ)は、諸勢力に注意を喚起した。



【シャトル】イバーラク世界

 失ったのは一機で済んだ。シャトルには燃料を殆んど積んで無かった。

 滑空だけの飛行の所以で、残った四機ともバラバラの位置に降り立ったが問題は無い。全世界を征服するのだ。その内、合流出来るだろう。


 シャトルから降ろし広げたポインターの側に展開されたゲートから次々と兵員や兵器が現れては、邪魔に為ら無い様に移動する。防衛の為か展開する部隊もある。

 シャトル周辺は堅固の陣と化して行った。



【飛竜】アリスの夢

 唄を唄っておくれ

 大きな竜の兄様はそう言った

 長い長い時間、アリスは唄った

 声が掠れて、喉が痛くなって来た


 ありがとう、もう大丈夫だよ

 もし、誰かがアリスを苛めに来たら

 僕を呼ぶ唄を唄っておくれ

 僕が懲らしめて上げるよ


 そう言って竜の兄様は消えた


 プロシーは知っている。何か大きな契約が成った事を。



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