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妖精の詩  作者: 南雲司
12/24

英雄サルー

妖精の歌12


【アリス】方舟

 方舟の少年は夢を視ていた

 一人の少女がいて歌を歌っている

 きみはだれなんだい?

 アリス


「二番艦が静止軌道で安定しました」

 到達したとは言っても、質量が質量だ。簡単には静止軌道に安定しない。他の艦が安定するまで、まだ暫く係るだろう。

「JIN、アリスって知ってるかい?」

屡々(しばしば)接触して来る思念体がそう名乗ってました」

「ふーん、害は有りそうかい?」

「不明、ただ、王を兄君と呼んで居りましたから、当艦と何らかの関わりが有るかも知れません」

「面白いね、これから妹が出来るのかな?」

「御両親が存在して居りませんが」

 少年は愉快そうに笑った


 いつまでも、いつまでも笑った

 それは、次第に悲痛な悲鳴の様にも

 聴こえて来るのだった



【死に戻り】漂泊のダンジョン

 具体的なコードを知ら無くても、大まかな構造、スケルトンは書ける。AはCから受けたレクチャーを基に必要なサブをデザインし、組み合わせてスケルトンを書いている。

 時折、頭を掻きむしっている処を見ると、意外と面倒な作業らしい。何しろ、見た事も無い術式言語の解析用のルーチンなのだ。まあ、忘れてしまってるだけなのだけれど。


 BとCはお茶を飲んでいる。Aのスケルトンが仕上がるまで暇だ。何時ものコーラでは無いのは、それだと落ち着き過ぎてしまうからだ。

 Aの作業に障りがある。


「てか、死に戻りも必要でない?」B

「オリジナルは再召喚してた」C

「やっぱそう?そんな気がしてた」B

「存在の揮発見たいのが有るから、直ぐ召喚しないと記憶ごと若返る」C

「死に戻りは自動だよね、それ(揮発)が無い」B

「ん」C

「虎治の死に戻り解析して、アミュレットとかに出来ないかな。ほらゲームとかに良くあんじゃん?」B

「!!!」C

「そこ!うるさい!!」A


 お茶でも障りが有った様だ。



【編成】ユグダ郡

 サルーに指揮権を渡したと言う事は、ユグダ郡の騎士団=元空軍は、同盟軍直轄として貸し出された事になる。

 詰まり、森と南イバーラクの了解が有れば、サルーは何時でもこの軍を動員出来る。逆に言えば何時でも動員出来る様に編成して置かなければなら無い。


「母艦が四(せき)護衛艦が十(せき)、旧式ばかりか」

 母艦はともかく、旧式の護衛艦が来るべき[オリジナルの侵攻]に耐えられるか疑問だが、これで遣るしかない。空中隠蔽魔石の装備が最優先だな。


 母艦二(せき)、護衛艦五(せき)で一個艦隊、都合二個艦隊で良いだろう。人員は、総務に任せよう、ぶっちゃけ知らん奴ばかりだし。


 デュプリコアが、念話を送ってきた。

『サスケラ様からツァロータ王の救援に向かってくれとの事です』

「シャオは、なんと?」

『限定的な戦闘に留めるなら良いと』

「判った」


「出撃するよー!ペラ回せー!」



【ワーツィとパティー】森のじさま

 じさまはご機嫌だ。何時もの仏頂面が益々度を増しているのだけれど、それがご機嫌の証拠だ。

 じさまの前には緊急の判子の捺された書類や図面が山に為っている。横には漂泊の三馬鹿娘から、押し付けられた武器の山がある。


「ワーツィ!!」

 じさまは叫ぶ。この仕事の山をエルフや人族の技士達に分けてやらなければ為らないのが残念で叫ぶ。

 シャオの弟子のワーツィがのそりとやって来た。

「これを、手の空いた(もん)や空きそうな者に配れ!」

 シャオ嬢ちゃんの弟子にしては勘が悪いし、式を刻むのも遅い。

 が、誰に何を渡せば良いのか、教えなくても知っている。嬢ちゃんの弟子なだけはある。三分の一程残して、どっさりと書類を渡す。

 この騒ぎが終わったら、ワーツィにも一つ部署を任せて見よう。


「パチー!!」

「パティーです、じさま」

「だから、パチーと言っとろうが」

「なんでしょう?」溜め息を吐いてパティー

「繊維なんとかの式は書けるか」

「基本的なものなら」

「銃身を軽量化したい」

「弾性と硬性、耐火性を上げれば?」

「それで良いじゃろ、四つ足用に書いてくれ」

 渡されたロール魔石を数分睨んで、

「書けました」パティー

「ほう」片眉を上げてじさま

 要件を満たしている事を確認すると、傍らの四つ足に装着して動作試験を始めた。


 その辺の物をひっくり返して(ばかり)のどじっ娘メイドと思えば、意外に使える。三馬鹿が送り付けただけの事はある。

 ますます、ご機嫌に大声で怒鳴るじさまであった。

「こら!そこ、いつまで休憩しとるんじゃ!!」



【コピー】漂泊のダンジョン

 うんうん唸るのはCの番に為っていた。安請け合いしたのを後悔している気配は無い。マゾ気質かも知れない。そう言えばしんどい仕事をする羽目になるのは、いつもCが起点に為っている様な気もする。


 Aが、死に戻りアミュレットの、スケルトンに取り掛かっている所以で、暇なのはお茶を飲んでいるB一人に為っていた。

 Aの言う事には、アーカイブにリンクを常に繋いで置く様にしていさえすれば、[死に戻り]は意外に簡単にコーディング出来る・・・かも知れない、と。で、遣ってみる事にしたのだ。


 キャシーはと言うと、補聴器機能を省いた所以で、ピアス型に姿を変えた付帯脳を鋭意増産中である。[歪]に余裕を見て五千個、[小さな]に千個送り付ける様に言ってある。纏めてだと時間が掛かるので、小まめに送っている様だ。


 そのキャシーがBの方を向いて言った。

「コア様が付帯脳製造の四つ足用魔石を送れと言っています」

 ラッキー、アリスの処の千個作ればキャシーの手が空く。何を言い付けようか。

「じゃそれ、コピーして送っといて」

「ロール魔石減りますけど」

「大丈夫、宛はあるから」


 漂泊ダンジョン用に二個確保するとして、一個は使っている。一個送れば、余裕は一個だけになる。だが、問題ない。シャオ姉様に泣きつけば良いのだ。


 ロリガラスは、ヤタスズメモードで飛び回っている。

 お手伝いに飽きたらしい。


【ロール魔石】コア

 コアは送られて来たロール魔石が、幾分スリムに為っているのに、直ぐに気が付いた。四つ足に装着してみた。少しガタがあるが、問題なく動作する。魔素消費が期待値より大分小さいのを確認すると、キャシーにリンクを繋いだ。三魔女様がなにかやったのだ。

 それから、シャオに連絡し、シャオが漂泊のダンジョンに問い合わせた。後はいつもの流れである。


「・゜・(つД`)・゜・」三娘



【ロール魔石】森のシャオ

 シャオは[漂泊]から送られて来たロール魔石が、コアの報告通りである事を確認すると、強度試験をする事にした。

 と言うのも、箔を張り付けただけの[シャオ型ロール魔石]では、四つ足や安定した状態での艦船用ならともかく、飛空艇や木馬、騎乗ゴーレム等の激しい衝撃を受け続ける素体では、積層面の剥離が懸念されているからである。

 森人の丸太では、外側のシリコン被膜からきゅっと複数の紐で縛って、これなら使えると報告されていた。

 しかし、それでは美しくない、ロール魔石対応のソケットにも入らない。じさまには、ソケットを柔構造にしてバネ等で締め付けるのを提案されていた。

[三娘型ロール魔石]は、銀と銅の合金の中に繊維構造体のロールが収まっている様に見える。剥離問題は恐らく無い。


【進撃】三か国連合艦隊

 旗艦はカンウーの母艦と決まった。キオトもオブザーバーとして殿に着いて来ている。護衛艦はウーシャラークの一(せき)だけだが、問題ない。攻撃してくる敵がいないだろうからだ。


 途中、神樹の森からの遠話が、小さなダンジョンを経由してカンウーに入って来た。


『こちら旗艦カンウー、全艦隊に告げる

 神樹の森同盟の艦隊が、援軍として接近中である

 司令官は、英雄サルー!』

『なお、投降したイバーラク空軍が主力である

 識別章は、まだ換わって無いので

 注意せられたし』


 旗艦のカンウー軍はサルーと戦った事は無い。

 が、それでもどよめいた。

 他の艦ではどうだろうか。

 カンウーは胸が高鳴るのを覚えた。

 不死身の英雄に会えるかも知れない。



【無駄三娘】漂泊のダンジョン

「屑魔石が問題かー」B

 シャオ姉様に、代わりにロール魔石製造用の魔石をくれ、と言っては見たが、上げ底魔石が原料だから、[漂泊]では作れないと指摘された。一応は送って貰ったのだけれど。

 小さなダンジョンと砂漠のダンジョンから幾らか産出される物は小さいとは言え、屑とは言えない。大きなダンジョンの出来損ないの魔石が、上げ底魔石の主な原料となる。小魔石はその核に為る。


「森でも出るんじゃないの?」A

「どう?キャシー」C

 AとCは、Bの悲痛な叫びに気を削がれ、一旦作業を中止して、コーラブレイクしていた。叫びの基に為った超分子振動接着器は、然程(さほど)喫緊(きっきん)と言う訳では無い。なので、今の処使い道の無い、ロール魔石製造魔石、の原料の事に話題は為っていた。

「坑道との専属契約で、全部売っちゃうみたいです」キャシー

「その代わり、上げ底魔石買い取りの優先権あるとか」同


「小魔石では作れないかな?」A

「魔法的に固そーだねー、コスト掛かるんじゃね?」B

「行ける」C

 いつ解析したのか、魔石の構造式を展開するC。

「ここと、ここのロックを解除して、ここから(めく)れば、バリア剥がせる筈」C

「ここでバグりそう」B

「此処んとこに、楔ルーチン打ち込んだら良いんでね?」A

「あー、行けそうかも」B


 ほんとに、その式は必要なのか?シャオ姉様にお任せした方が良いのではないか?作者としては無駄に作業を増やそうとしているだけにしか見えないのだが、本業ほったらかしにして、コーディングに入った、三娘を止める術はない。



【レポート】クォタとトムオス

「この式を展開するとこうなるだろ?そうしたらこれが導き出せる」トムオス

「トムオス天才か!」クォタ

「良く受かったな、受験レベルの解法だぞ」


 トムオスは、基本的な術式の操作法を教えていた。これが出来ないとレポート処ではない。しかし、こんなレベルで大学には受かるし、軍事機密の慣性制御を発見する。クォタこそ天才ではないのか?トムオスはそう思う。

「じゃ、それ踏まえて此処んとこ書き直してみな」トムオス

「ウッス!トムオス先生」クォタ


 クォタのレポートは徐々に形に成っていってはいる様だ。



鋼鉄娘(メタリックメイデン)(複数)】

「短くするって言ったよね?」詰問するA

 はて?記憶が・・・

「寧ろ長くなってるし」B

 三魔女様の出番を増やそうとの意図でして・・・

「誰?三魔女?」C

 巷ではそう呼ばれている様ですよ?

「なんか格好いい」C

「C誤魔化されるな!」AB

 そもそも、この小説は開発物ジャンルの一端でして、くだくだと、説明解説が続くのは仕様であります

「開き直った」A

「開き直ったね」B

「意外とロマン」C

「あ、Cが落ちた」AB


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