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妖精の詩  作者: 南雲司
10/24

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妖精の歌10


【首謀者】漂泊のダンジョン

「アタシラが首謀者?」ABC

「え?ち、違うんですかー?」キャシー


 オリジナル虎治は、艦隊の中で王を名乗っていたらしい。

 クーデターが、未遂も含め、大小五回。

 その内の最初の三回の首謀者が、三娘と見為された。


「違和感ありまくりー」A

「絶対人違い!」B

「・・・」C

「?」AB

「三回目は、捲き込まれ首謀者かも」C

「まじで?」A

「アサミに脅されて、秘密の会合参加した時、踏み込まれたの思い出した」C

「あー、そいや、いきなりドヤドヤ入って来て、思いっきりボコられたっけ」A

「まじで!てか、アサミ居たんだ」B

「ワルキューレは全員居たぽい」C

「三番艦は不良兵収容艦でしたから、クーデターとかサボタージュとかの人は三番艦に移されました。それ以外は看守と、コア様だけでした」キャシー

 それと、事故等も含め、死亡して再生が見送られた者のリストも三番艦に紐付けられたアーカイブに移された。


「あれ?」A

「あれれ?」B

「虎治ハーレムの召喚嫁、全員三番艦から?!」C

「もしかして、ワルキューレって、全員不良品?」A

「エルフとか、イバーラクの方とかは、違うです」キャシー

「エルフ以外の人がエルフの事エルフって言ったら死刑だよ?」B

「ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿」キャシー

「どじっこメイドだね」A

「弄りがいありそ」C


【ロール魔石】森のシャオ

 ミスリルでは高く付くので、芯の円筒には銀と銅の合金を使った。コーティング材も同様だ。十層程巻いて、三層分びっしりと刻んだのは、防御用の付与魔法で概知の物は概ね網羅している。

 起動しても問題なく作動する。じさまの所に十巻、三娘の所にも五巻送ることにした。


 暫く考えた後、防御術式を刻んだロール魔石を四つ足用の魔石に使うことにした。取り敢えず、未だ七層分残っている残りを使いきって不具合が無いか確認する事に為る。


 そこで、ふと思い至る。歪のダンジョン由来のパペット達は、例外無く、歪のアーカイブを経由して制御されている。自立性がかなり高いせいで魔石では容量が不足する為だ。

 十体二十体程度ならともかく、現在千体以上が稼働している筈だ。コアに掛かっている負担は相当なものだろう。

 しかし、このロール魔石なら容量は足りるのでは無いか?十層で足りなくても更に積層すれば良いのだ。


 シャオはリンクをコアに繋いだ。


【病葉】

「お化けが出たのかと思いましたわ」

 悲鳴を上げてプロシーにしがみ着いたオルファ

「ウッディが入れたんだから、敵じゃないとは思ったけどな」

 鍛冶ハンマーを握ったままのカーシャ


 アリスは治癒の蝶を飛ばしている。

 病葉は、葉を揺らしている。

「気持ちいいのかな?」カーシャ

「名前を付けてあげなければなりませんね」ドロシー


「ウィロー!」ドロシーの方を向いてアリス

 柳ではないのだが、異世界語の事とて、問題はない。

「ではその様に」頷いてドロシー


【口封じ】アマーリとクォタ

「マジかよ!」アマーリ

 クォタが、でっち上げた滑空板が軍務卿に売れたとは聞いていたが、それが森の軍事機密に引っ掛かる物だったとは、驚きだ。

「それで、レポートを書けって言われたのさ、意味わかんね」


 珍しく、休み時間に机に向かって、うんうん唸っているクォタに話し掛けたアマーリは、更に訊いた。

「意味わかんねって、何が?」

「軍事機密とレポートの関係。何で書かなきゃなんないんだ?」

「馬鹿だな、ちゃんと大学の研究で発見したと言う証拠残しとかなかったら、口封じされるだろ」

 それは、極端な観測ではあるが、まあ、無いと言う事も無い。

 どちらかと言うと主に報酬面でのトラブルを避ける為なのだろう。アマーリは面白がっている。


「げっ、俺、そんなヤバい状況?」クォタ

「早いとこ、きっちり書き上げるんだな」くそ真面目な顔でアマーリ


 そんな面白い話に為るのだったら、一枚咬んで置くのだった、と

 ちょっぴり悔しいアマーリだった。



【陣】ツァロータ王

 王が合流した時、義勇軍は半分に打ち減らされていた。

 合流の勢いを駆り、一時的にイバーラク兵を退ける事が出来たので、山肌の斜面を少し許り上ることが出来た。

「此処に陣を敷きましょう」

 ビリウが言った。



【麻痺】カーシャ

 朝一番で、グル導師邸に帰ったカーシャはその足で登校した。

 その為、滑空板の報酬が出た事は知らなかった。


「え?要らないよ、魔石刻んだだけだし」

「その労賃さ、本職の術士に頼むと、この倍は取られるんだぜ」

 トムオスが言う。

 その本職だと、まず空間魔法に堪能な者を探さなければいけない事は言わずもがなではある。

「じゃあ、ありがたく貰っとく」

 先の車椅子と比べれば大分少なくは有るが、それでも大金だ。

「金の感覚が麻痺しそうで怖いな」カーシャ

「俺も、それ思った」トムオス



【リスト】三娘

「で、さぁ」B

「?」AC

(うち)のリストって、ガチャとか吸収とかしなくても良いじゃん」B

「お宝とかは、手に入れたって認識は必要ぽいけどね」A

「三番艦由来のは、全部載ってる?」C

「武器とか出せるんじゃね?」B

「!!」AC


「AK載ってる!なんで?」C

「小銃と短機関銃は、色んな国のがあるね」A

「イージスあった!」C

「空母とか潜水艦もあるけど、自衛隊のは無いね」A

「・・・」ABC

「要らない物リストぽい?」AB

「小火器は自衛隊のもある」C

「看守が持ってた奴じゃね?」B


「戦車とか戦闘機、全然無いよ?」B

「キャシー知ってる?」A

「戦場の地形や気候が不明なので、取り敢えず[使える物リスト]に確保したです」キャシー

「そのリストはオリジナルが持ってるのね」B


 泡宇宙の中にも時間は存在する。時間が存在すれば極小の単位時間あたり一枚の宇宙の写像が発生する。詰まりはアカシックレコードのアーカイブが存在する事になる。そのアーカイブは泡宇宙が発生した時点より過去方向に元の宇宙へと繋がっている。


 JIN達[プロシージャ]はそのアーカイブ中の[兵器]に紐付け、リストを作成した。人にも使える様にである。膨大すぎるリストを整理して必要の無い物を省くのは、人の仕事ではある。

 省かれた物は不要品リストとして三番艦に紐付けられた。


 それとは別に、三番艦の消滅した瞬間から過去方向へのアーカイブも存在する。その分のリストは、実はキャシーが三娘の思考を先読みして、三番艦に存在した兵器を「たった今」追加した物なのだが、勿論その説明は為されない。


「適当に召喚して、じさまに送り付けとこう」

 Aが提案した。

「やだよ、呼び出されるし」

 Bが、反対した。

「キャシーのデュプリを送る」

 Cが、矛盾を止揚した。


 どじっ娘メイドは、量産される事に為るかも知れない。

 安上がりだし、面白いし。


【続き】三娘とキャシー

「てか、眷族召喚も普通に出来るんでない?」B

 歪なダンジョンでは、意識不明な状態でしか元々のリストに載っている者は召喚出来ない。しかも、チョメチョメな手続きを経なければ目覚めさせる事は出来ない。虎治の嫁が量産される所以ではあるが、男子が召喚される事は無い理由でもある。

 後からリストに追加したゴブリンは極普通に召喚出来きる。


「どうなの?キャシー」A

「JIN様の掛けた制限が関係してるので、不明です」

「制限?」C

「眷族化の術式(コード)がそもそも無かったので依存性を発生させる為にセックスを利用した。面倒なトラブルを避ける為に意識不明な状態で召喚した、と言う構造です」

「ただのレイプじゃん」B

「卑劣」C

「五回のクーデターの大きな要因でもあるです」

「JINが掛けた制限ならキャシー外せない?」A

「此処でなら出来るです」

「歪だとコアでないと駄目なのね」B

彼処(あそこ)は構造自体歪んでるので、コア様でも難しいです」

「あ、記憶制限は?外せる?」C

「オリジナル虎治様がキーに為っているので、JIN様にも外せません。それと、コア様が、JIN様の五十%版なので更に五十%の私の能力では難しすぎるです」・゜・(つД`)・゜・


「コアに連絡取って。次から、三番艦の人員は此処で召喚するって」

 Aの発言にBCは大きく頷いた。



【陣】ビリウ

 陣を敷いたのは、背後に険しい山壁を背負う急斜面の小さなテラス状の地形の所で、要所々々に掩体(えんたい)を設えれば、それだけで砦替わりになった。


 三度、小規模な攻撃があった後、暫く間を置いて最初の総攻撃が有った。だが、正面が狭い。

「落ち着いて戦え」

 ビリウの声に焦りはない。


 持ちこたえた。



【走る木目】小さなダンジョン

 応援に駆け付けたデュプリ達は、意外と狭い範囲に固まって展開していた。最低限守ら無ければ為ら無い、土塁のすぐ外側、約二十メートル分を確保する為である。


 また、神樹の苗直下のパイプ部分は、厚みを増せば良いだけの事なので、魔石に幾らかの書き足しをするだけで四つ足にも作業可能だ。木目(シャオ)が走り回って、書き足した。終わった物から順次土塁に向かわせる。



【最後通告】南イバーラク

 木目からの報告は、サスケラを大いに悩ませた。

 劣化版と見為されたイェードウの勇者は兵を使うのが巧みだった。オリジナルとやらは、最大で十万の精兵を引き連れて来るのだと言う。ツァロータ戦役は、早急に終わらせる必要がある。

 サスケラはイバーラクに文を書いた。


 この度の仕儀は、イバーラクの名を著しく貶める物である。

 兵を引き、ツァロータは近隣諸国の友誼に委せよ。

 もし、此れが適わんと言うのであれば、

 イバーラクの政道を摂るに足らずとして、

 貴卿(きけい)等を放逐(ほうちく)せざるを得ぬ事を

 此処に通告する。


 些か早急過ぎるとも思えたが、オリジナルとやらの出現は間近に迫っているのだ。

 最初の書簡が最後通告になって仕舞った事に、サスケラは忸怩(じくじ)たる思いを禁じ得なかった。



【自立ボルト】ロックバグ

 敵兵を押し戻す起点になるのは、ロックバグである。

 僅か数騎に過ぎないのに、何も無い処から、いきなり姿を現すのだ。速射銃と先の湾曲したグレイブを自在に操り、白兵戦を仕掛けてくる。ただの歩兵には勝ち目はない。

 動揺した処で、歩兵達の逆落としの突撃。


 最初の総攻撃は、呆気なく崩れた。


 二度目の総攻撃の時、それは起こった。

 イバーラクは、白兵戦の最中であるにも関わらず、自立ボルトを打ち放ってきた。殆どは交わされ、イバーラク兵の死体を積み上げただけだが、一本のボルトが小隊長を直撃した。


 いや、直撃の寸前、騎乗ゴーレムの腕がボルトを止めた。

 ボルトは爆発し、腕は破壊され、

 破片が繊維構造体のシールドに無数の蜘蛛の巣状の罅を入れた。

 周りが視え無い。

 それだけではない。


「くそ、自動制御術式がイカれた!」

 転倒したロックバグは起き上がれずにもがいていた。

『二番!四番!一番を援護しろ!俺が救出する!』

「戦闘を継続しろ!自力で脱出する」

『一番の遠話缶が故障の様だ、三番の指示に従ってくれ』

「命令に従え!」

『聞こえません、二番、四番、何か聞こえたか』

『分隊長の声だけです』

『小隊長のは雑音だけですね』


 二機のロックバグが銃弾をばら蒔いている間に一番騎から救出した小隊長を小脇に抱え、第二分隊長は、魔石のある辺りを徹底的に破壊した。


 一旦退くぞ、そう言う前に、味方の逆落としが到達した。



【共和国】イバーラク

 共和国とは言っても、民主主義と言う物が概念上の物でしかないイバーラク世界では、軍閥、大貴族、その他の有力者達の合議に依って政治が執り行われるので有って、世論とは屡々(しばしば)乖離(かいり)する。

 巷では、女王が帰って来るとの期待が膨らんでいた。


「抵抗すれば詰みだな」水軍元帥

「もっと余裕があると思っていたのだが」陸軍元帥

「連名で駐留軍に撤退命令を出そう」執政官


 サスケラの通告は無視出来ない物だ。

 南イバーラクだけでも、強大な空軍力を持っている。

 ピンポイントで兵を降下させられたらどうなるのか、

 他ならぬ、ツァロータ解放戦で実証済みだ。

 イバーラク軍は、市民軍と戦う事になる。

 そして、森が参戦して来ない保証は無い。



【ユグダ郡】サルーとリュウコ

 騎士団に編入されたとは言っても、元空軍の大部は元空軍府ユグダ郡に駐留していた。サルーが同盟総司令に就任したと知ったサスケラは、ユグダ駐留軍の指揮を依頼した。


「クェ」

 もう首の付け根に股がるのもキツくなる程大きくなったリュウコは、呟くような一言で転移門を開く。

「よーしよし、さすがだ!リュウコ」

 誉められてもそんなには嬉しくないよ、と言う振りをするのだが、

サルーにはお見通しだ。耳がピクピクしてるし。


 門を潜ると、既に鷲型が数機周回していて、護衛の位置に着いた。

 風防越しの敬礼に、答礼を返し、サルーは前を向く。

 懐かしの空軍府に帰って来たのだ。

 弛む頬を引き締めると、その拍子に、

 その頬を伝って何かが流れ落ちた。

 勿論、涙などではない。

 英雄サルーは、泣いたり等しないのだから。



【合流】ツァロータ援軍

 王を追い詰めたイバーラク軍は、敵=獲物は前に居るものだけだと考えていた。遅滞の為展開していた部隊からは時折有力な敵の出現が報告されては来るのだが、恐らく陽動だろう。

 任せておけば良い。


 そう判断したのには理由がある。二度総攻撃を仕掛け、二度退けられた。敵は地形を巧みに利用し、少しでも怯めば果敢な突撃で押し戻してくる。

 精鋭中の精鋭だ。王を守るに相応しい英雄の群れだ。これが本隊で間違いない。


 なので、斜面を登る為の展開を終え、三度目の総攻撃に移る寸前に背後を突かれたイバーラクは、大いに乱れた。僅か百騎足らずの騎馬と騎乗ゴーレムに、一個連隊もの兵が敗走したのである。


「今の内に突破しましょう」ビリウ

 乱れた兵を纏め上げれば、(ほとん)ど被害が無かった事にイバーラクは気付くだろう。反転して再び押し寄せてくるまで、幾許(いくばく)もない。

 合流を喜ぶ暇もなく、ツァロータ王の混成軍は斜面を降った。


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