俺、死ぬの?
更新が遅いです。
申し訳ない。
数々の頼まれた仕事を終え仕事場を出る頃には、すっかり定時の時間を越え終電の時間が近付いていた。
駅へと行く道は人気がなく、その上に薄暗いので電灯の明かりだけが頼りだ。
夏も終わりに近付き、風が冷たく感じる。
「あ゛〜…夏も終わりだな…早く帰ってビール飲みてぇ…。」
仕事の疲れを感じながら、早足で家に帰ろうと駅へと急ぐ。
ーー角を曲がって真っ直ぐ行けば駅だ。
家に帰れる嬉しさで浮き足立つ。
早く、早くと早足になる。
そんな中、前方で男に腕を掴まれ抵抗している女性が居た。
「…チッ、めんどくせぇなぁ…」
小さく呟けば、女性を助けようと動く。
近付くにつれ女性のか細い抵抗の声が聞こえてきた。
「や、やめてくださいっ…」
今にも泣き出しそうなそんな弱々しい声。
「何やってんだよ、離せよ。警察呼ぶぞ。」
早く家に帰れるのにめんどくせぇ事しやがって、なんて思いながら声を掛けたので棘があるように聞こえてしまったのは仕方がない。
男は驚いた様にこちらを見た。
「てめぇには関係ねぇーだろ!!すっこんでろよおっさん!!!」
口角がピクピクと引き攣るのが分かる。
少なくとも俺は25歳なので断じておっさんではない。おっさんではない。
「関係無くても嫌がってんだろーがよ。警察呼ぶぞ。」
おっさんと呼ばれて腹が立った訳では無いが、自分の声が低くなっていたのを感じた。
少し怯む男。カタカタと震えて涙目の女性。
暫くすると男がワナワナと震えた。
「こいつがっ、こいつが浮気するからっ!!」
怒鳴る男。ビクッと強ばる女性。
ーーただの痴話喧嘩かよ…。
これはお邪魔するべきじゃなかったなと思いながら2人の話を聞いた。
女性は男と付き合っていたらしく、別れる前に男の友人と関係を持ってしまったらしい。
女性は否定をして男の友人に無理矢理されたのだと訴えていたが、女性がノリノリで友人を部屋に入れてキスしている所をサプライズで驚かせようと部屋に入ってしまった時に見たらしい。
なんて言う修羅場なんだろう。変なのに首を突っ込んでしまった。
「だから違うのっ!!」
「何が違うって言うんだよ!?」
2人の言い合いがヒートアップしていく。
「落ち着けよおめーら…。」
宥めようと動く。
こういう痴話喧嘩は、頭に血が上ったらなにするか分からない。
「うるせぇ…。俺を裏切ったんだ…。ずっとずっと一緒に居るって…。」
女々しい奴だな。なんて思っていない。ウザイなこいつ。なんて思っていない。
例え思っていても言ったら更に血が上るであろう。
失礼な事を考えつつも、どう対処しようかと状況を把握しようとする。
その時、男が肩から下げていた鞄を漁る。
「お前も殺して…俺も死ぬ。」
男は自嘲気味に笑いながら、鞄から取り出したナイフを女性に向ける。
ーー危ねぇ!
咄嗟に身体が動き女性の前に立ちはだかる。
男の身体が密着すると同時に、腹部が鈍く痛んだ。
ポタポタ…
地面に広がる赤い水溜まり。
それが自分の血だと把握するのに時間がかかった。
崩れ落ちる自分の身体、遠くに聞こえる女性の叫び声、怯えきった男の表情。
ーーその表情していいの俺と女じゃねぇの。なんでてめーがそんな表情してんだよ。
それを最後に俺は意識を失った。