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フィルター#7

それからも時々公園でギターを弾いた。


ナミがいる日もいない日もあって、子供が集まる日も集まらない日もある。歌ってくれとせがまれたりせがまれなかったりしながら、この公園の景色にギターを持った俺が馴染んでいくのを感じた。


ナミも時々、俺の周りに来ていた。ナミは俺がきゅるリリを知らないと言ったのを学んだのか、比較的有名なアイドルソングとかJ-POPを歌ってほしいと言うことが多かった。ナミは音楽が好きなのか俺が歌うのに合わせて、よく歌った。


時々、二週間に一回くらいだろうか、フィルターの前にいてくれるナミは、俺が歌わなくてもギターに合わせて歌っていた。成長にするに連れて、あの日に見た芳賀夫人とそっくりな目をしているのがどんどんわかる。それにナミは賢かった。子供らしいところはもちろんあるが、大人らしいことを時々言う。


「この歌ってさ、そういうふうに言ってる自分が好きなだけみたいに、薄っぺらく感じるよね。でもそこが人間ぽくて好き」


俺にはナミの言葉の意味がいつもよくわかった。些細なこと、感覚的に、言葉選びのひとつひとつ、通じ合っている気がした。


ある時から約束をしていなくても、ナミは月にニ回、二週目と四週目の土曜に必ず公園に来た。俺もその日だけは必ず公園に行った。そして二人で音楽をやって、合間に喋った。俺は仕事の話をした、ナミは学校の話をした。


「アキトさんの前だと素の自分でいられる気がするよ」


ナミは恥ずかしげもなくそう言う。


「俺もナミとしかこんなに喋ってないよ」


俺は照れ笑いをして、すぐにギターを弾き始めた。

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