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フィルター#5
中学生になった頃、俺はギターを始めた。中学生らしくロックバンドに憧れたのだ。
ピアノで培った音感のおかげでギターもスムーズに覚えていけた。下手なりにも弾き語りをしたり、ガキ臭い歌詞の曲を書いたりもした。
そして、中学校三年生に差し掛かった頃、1年以上前からギリリリガタガタバギンカキンと行われていた工事が終わり、庭木がジャングルみたいに生い茂っていた我が家の向かいの豪邸が崩され、公園ができた。綺麗で、遊具と芝生とベンチがある。
俺はその公園をベランダからよく眺めていた。
ナミは本当にいつもこの公園で遊んでいた。小学校二年生程だろうか。数人の女の子達と砂場遊びをしたり、知らない子供まで交えて鬼ごっこをしたり。すごく明るくて活発で元気な子供のようだった。
そしてもちろん、ナミはフィルターの前にいた。他の子どもたちがフィルターの向こう側でかくれんぼをして、鬼になったナミはフィルターのこちら側でどこどこ?とさまよっている。
そして俺は当然のように高校で軽音部に入った。