八つ その兄の魔法とて傑物に違わない
なんだか説明回っぽくなってしまった……
何故??
あと矛盾があったら教えてください……(小声)
「【炎塊千仞】っ!」
「【空間浸食】っっ!!」
「【内力破】っっっ!!!]
周りを見渡すと、皆が皆己の得意な魔法を結界めがけて発動している。
……いや、皆というのは間違いか。少なくとも俺は何もしていない。否、何も出来ていない。
俺が魔法を使うのを渋っている理由は、無論俺に対する評価の改善をさせたくないからだ。
とは言えいつまでも何もしないというわけにも行かない。それは分かってはいる。分かってはいるのだが……
「我が聴許は汝が時局……」
そんな詠唱を小声で呟く俺。本来ならこの後に【魔法名】を唱えるのだが……あえて省略している。
これでは魔法と呼べる程の効果は期待できない。だが、魔法行使の際のカモフラージュにはもってこいだ。
……俺はこの結界について知る事が第一だと考えた。
俺はボス戦前にボスの弱点を熟知しておき完全勝利するタイプだからな!
………………。
……とにかく、俺はこの結界の効果にある程度の仮定を立てていた。
この結界の効果は「何かしらの魔法を認識した瞬間、行使できうる程度の魔法行使を代行するもの」ではないかと。
例えば、先程の学院生が放っていた【炎塊千仞】。これは小さな炎の刃を散乱させる中級魔法だ。
仮にこれを唱えたとき、己の中の魔力因子を使わずに何かしらの媒体――例えば精霊だな――が魔法行使を代行しているのではないか?ということだ。
これならば、学院長の説明どおり結界内の魔力因子は枯渇しないし、媒体がその人物の力量を測リでもすれば可能だろう。
と、そう思ったわけなのだが……まぁ現実は違っていたらしい。
いや、違うというのは少し言いすぎだな。半分正解で半分間違い……と言ったところか。
俺が先程唱えた詠唱、それには【対象の状態を可視化させる】という意味が掛かっている。
その詠唱のお陰で俺の目には様々なものが見えているのだが……それによるとこの結界内は魔力因子の飽和境界状態にあるらしい。
そもそも魔力因子とは魔法行使の際に働きを行う物質な訳だが……それは人間の体内、空気中、地中、果ては水中とこの世界中に分布している。
だが、それぞれによって含まれている魔力因子量には差がある。
それは人間の個体差についても同様であり、取り込める魔力因子量こそその魔道士の力量に直結してくるわけなのだが、まぁそれは今はいい。
この魔力因子、その性質として空気中に居座り続けるというものがある。
まぁ当然だ。空気中に居たがるからこそ、体内から魔力因子を放出することで魔法が発動するのだから。もしこれが逆で、人間の体内に居たがる性質を持っているなら、魔力因子が空気中から常に入り込んできてしまい大変なことになるだろう。
それを踏まえた上で、結界内の空気中が飽和境界状態になればどうなるか?
それがこの現状、体内放たれた魔法――魔力因子―は一旦空気中に滞在するが、飽和ぎりぎりの状態のためすぐに魔力因子の少ない学院生の体内へと逆流を起こす。
そのサイクルがあるため、どれだけ魔法を行使し、体内の魔力因子が無くなろうともすぐに補充されるという結果がもたされているらしい。
ということが分かったわけなのだが……
それを知ったところでどうしろと……?
いや、確かに収穫はある。あの兄はとんでもない化け物ってことは分かったわけだ。
……
……何を今更!?
そんなこと分かっとるわ?そうじゃなくて俺が目立たず、かつある程度頑張ってる風に試験を受けその結果落ちた。
そんな結果はどうすれば持ってこれるわけだ!?
そんなことを自問しつつ隣を見てみる。
「うおおおおぉ!!!!」
微妙に声を裏返らせながら、唐突に結界目掛けて走り出すリルア。
あ、そっか。リルアは所謂接近戦タイプだっけ。だから結界に近づかないとどうしようも無いわけだ。
「ねぇカイス……リルアどうする??」
若干困った表情で問うてくるベン。
「とりあえず……追いかけるか??」
「……だよね」
苦笑しながらも頷くベン。
俺はなんだか頭が回らなくなっていたのを感じながら、目立たず失格になる方法をどうにか考えようとするのだった。
■ ■ ■
そこは無機質で酷く圧迫的な空間だった。
彼は思う。果たしてこれになんの意味があるのか……?と。
彼は思う。己のある意味とは……?と。
彼は思い至る。考える意味などないと。
今はそう。目の前の仕事を早急に終わらせる他ないのだ。
でなければ自分は……自分では無くなってしまうのだから。
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