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喪失の魔道士 ~All Cruelty オールクルーティー~  作者: 薪園すぅ
第一章 その少年は全てを失う
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二つ その赤子の精神はおじさんである。

「産まれた……やったぞ!よくやったリンフィア!!」

「……全く、父親になるんだからそんなみっともない顔しないでちょうだい……」


 心なしか涙目で出産の無事を祝う男ーヴァルリアルに少しの呆れ顔で呟くリンフィア。しかし当のリンフィア本人も、無事に産まれた二人目の息子に頬が緩んでいる。隣では三歳のたった今兄となった男の子が、産まれたばかりの赤ん坊の顔をのぞき込んでいた。


 このときのヴァルリアル、リンフィア両名の気持ちは幸福一色と言えるものだった。当然だろう。我が子の誕生を喜ばない親など居ないものだ。もし居たとしたら、そんな奴は親と呼ばれるべきではない。


 兄となった男の子についても、幸福というわかりやすい感情ではないにしろ、子供の感性でなんとなく幸せなことが起きているらしいと理解していた。


 なにがさて、三人は幸せだった。ならば産まれた赤ん坊は何を感じているだろう?産まれたばかりの赤ん坊に感情などあり得ないとお思いだろうか?

 端的に言おう。


 産まれたばかりの赤ん坊はあろう事か困惑していた。



 ■ ■ ■



 ―――これはどういう冗談だろうか?目の前に巨人とも言えるほどに大きい男女と男の子?がいる。

 ……いやまて?これもしかして相手が大きいんじゃなくて………


 俺が小さい……のか??


 ……いやいや、そんなまさか……



 ……まさか……



 ……まさ……



 …………


 ……うん。これ絶対そうだな。

 いやいや……ちょっと待って??なんでこんなことに?と言うかここどこよ!?訳分からんっちゅうねん!!


 いやいかん……ちょっと困惑して変な関西弁になってしまった。……声は出てないけど。

 落ち着け~俺!ひとまず一番最近の記憶を辿ろうじゃないか……っ!


 確か俺は……そう!会社でプログラムの修理をすべく残業していた。その途中であまりの睡魔に負けたような……


 ……じゃあ何か?これは夢なのか??

 それならしばらくしたら会社のデスクで起きるって事か?


 と、そんなことを思った俺だったがそれが間違いであることにはすぐに気付いてしまった。

 なぜなら……


 ―――……夢ってこんなにリアルな感覚だっけ??


 そう、愛おしそうに見つめる女性に撫でられる感覚が恐ろしく心地よいのだ。そして俺は夢じゃないなら?と言う疑問を抱きつつも、なぜか急に襲い来る睡魔に抗えず、ゆっくりと瞼を落としてしまうのだった。



 ■ ■ ■



 ほんの最近まで起きては困惑し、また強烈な睡魔に襲われ眠る。このサイクルの繰り返しだった。

 最初は睡魔以外の生理現象などもまるで抑えられないことにそこそこのショックを受けた俺だったが、どうやら俺自身が赤子になってしまっていることを理解してからは諦めが付いた。

 ……もっともどうして赤子として存在してしまっているのか全く分からなかったが。


「それにしても本当にクァイスは泣かねぇなぁ。こりゃ将来が楽しみだ!」

「はぁ、貴方は本当適当なんだから。泣かない方が心配よ」



 そう、どういうわけか泣くことだけは抑えられた。もしかしたら泣くことだけは本能とは違うのかも知れないな。

 ちなみにこの二人が俺の親らしい。もう訳が分からないって感じだが思考は放棄した。これ以上考えたって分からないんだ。なら仕方ない。俺は不要な努力はしない主義なのだ。

 なんて言ってみたがいくつか分かったこともある。

 まず、此処は少なくとも地球ではない。そう!みんな夢見る異世界だった!!

 これはまず間違いない。と言うのも、魔法なんて言う異世界チックなものが普及しているためだ。

 コレを知ったときそれはもう年甲斐もなく興奮してしまった。0歳だけど。

 というわけで。俺は某ラノベのように前世の記憶を持ったまま転生してしまったわけだ。いや、前世と言うには死んだ覚えがない以上適当な言い方じゃあないかも知れないが、まぁそこはいいだろう。


 もちろん前の生活に全く未練が無いというわけでは無い。だが俺の両親は俺が中学生の時に先立ってしまっているし、妻も恋人も……詰まるところ守るべきものもない。毎日毎日会社のデスクでパソコンとにらめっこし、時間になったら帰り、食べて、寝て、また出勤して。そんな代わり映えのない生活だったのだから未練なんて薄れて当然だ。


 それに比べると今の生活は何もかもが新鮮だ。しかも俺の両親は実に言い人柄だ。前世の俺より年下なもんだから少しばかり複雑ではあるが。3歳上の兄なんて可愛いもんだ。ちょっと背伸びしてお兄ちゃんらしくしてるのがまた可愛らしく感じてしまう。


 そりゃあ最初の頃は怖かったし頭がおかしくなりそうだったが、しばらく経った今はもうこの状況を受け入れられていた。


 そういうわけでなんだかんだこの生活にも順応し始めた俺であった。

 ……のだが、一つだけ困ったことがある。


 ―――どうやって話せば良いの……??

 いや、だってまだ生後半年なんだしぺらぺら喋るのはおかしいけど……でも普通に日本語に聞こえるんだから絶対喋れちゃうんだよな……


 けどいきなり生後半年の我が子が「おはよう!言い朝だねママン!!」なんて言い出したらまず間違いなく卒倒してしまうだろう。妥当なのは赤ちゃん言葉なんだろうけど……

 それを精神年齢おっさんの俺に求めるとか……コレどんな羞恥プレイですか?


 とまぁこういう問題があるわけで。でもそろそろしゃべり始めないと、それはそれでおかしい時期に入ってしまっているわけで。

 でもでも赤ちゃん言葉を真面目に言うには少し……いや、かなり精神的に辛いものがあるわけで。

 まぁ困っているわけですね。


 ……よし。明日の俺に任せるとしよう。


 と、問題を先送りにした俺はいつもの睡魔に身を任せるのだった。

もし少しでも

「いいな!」

「更新はよ!!」

「続き気になるわ~!!!」

と言う方が居ればブックマークをお願いいたします!!!

モチベのアップにつながりますし、もしかしたら更新が速まるかも知れません。


よろしくお願いします!!

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