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2/8

短編の続きがここからになります。


 スマホの目覚ましの音で目が覚めた私は、違和感を覚えた。

 年季の入ったベッドに、馴染みの掛布団。

 買う量と読む時間の釣り合いが取れず、未開封のまま本棚に収まりきらずに床に積みあがる漫画タワー。

 紛れもなくここは私の部屋だ。

 だけど……


 私、悪役令嬢のベアトリーチェに生まれ変わったんじゃなかったっけ?!


 あれ?なにまさかの夢落ち?

 いやいや、そんな馬鹿な。しっかりと覚えてるよ!

 次々に発行される続きが楽しみな本とか!

 愛猫のジョセフィーヌの可愛らしい声とか手触りとか舌のザラザラ感とか素晴らしい肉球のぷにぷに感とか!!

 あとついでにヒロインと王子の迷惑カップルとか。

 じゃあ、今ここが夢ってこと?

 夢……にしては意識がはっきりしてる気がする。

 とりあえず、昔から伝わる夢か現実か確認するオーソドックスな方法『頬をつねる』を試してみよう。

 ……まあ実際、頬をつねったところで肉を掴んでる感が多くて言うほど痛みはないけど、夢じゃないなーってぐらいにはちょっと痛い。

 てことは、ここは現実?

 あの世界の事は夢にしてはリアルだったし夢じゃないと思うし、元居た世界に戻ってきたという事なのかな。

 でも普通さ、転生したら戻れないもんじゃないの?なんで戻ってるの私。

 あれか。死んだってはっきりしてないからか。乙女ゲームをクリアした後に寝たらあの世界の悪役令嬢のベアトリーチェとして生きていたわけで、こっちの私は死んだかどうか、はっきりしてなかったもんねぇ。

 普通は転生って言ったら死んでからだもんね。

 まあ転生に普通も何もないけどさ、異世界?ゲームの世界?どっちでもいいけど、そっちに生まれ変わっていたらそのままがセオリーなんじゃないのかな。体が移動したんじゃなくて、そこの世界の登場人物として生きていたはずだったんだけど。

 ……まさか、追い返された?

 アリなのかそれ。勝手に異世界に連れてきておいて、恐らく人違だったからヒロイン以外の人物にぶっこんで、やっぱりいらないから返却って事なの?

 やっぱり中身がアラフォーのおばさんじゃダメだったのか……

 でもさ、この手の生まれ変わりっておじさんはアリじゃん。よく話で見かけるよね異世界にオッサン。おばさんじゃアカンのか。

 それとも悪役令嬢の中の人に生まれ変わるには、何か突出した知識をもっていなければダメだったのか。あと行動力もなきゃダメなのか。私には……両方ないねぇ。

 オタクってことだけじゃ自分しか満足できないもんねー。

 それと社畜じゃないのも減点か。私の勤めている会社は基本残業やらない方針で、残業したとしても残業代はきちんと出る労働基準法を守る会社だからね。やっぱり社畜ぐらいやってないと異世界で生きる根性がないって事なのか。3日間徹夜くらい余裕余裕とか言わないといけないのか。この年でそんなん出来るか。

 折角素敵オタクパラダイスを楽しんでいたのに!

 悩みらしい悩みと言えば、本の執筆にちょっと行き詰ってたことぐらいだしなぁ。

 近未来的な話の創作をがんばってはいたけど、資料が全くない状態で書くのって難しいね。機械に詳しいわけでもないし、いざ物語を考えても文章にするのって大変なんだね。説明文も自分で書くとなると難しいし、知識が足りないって実感したわ。調べたいことは全部元の世界の事だから調べられないしね。書き間違えたら一から書き直しだし……ほとんど休憩と言いながら書くよりも買いまくった本を読んでる時間の方が長かったわ。

 まあでも時間はたっぷりあるし気長に書こうかな、とか思ってたのに、まさかの強制送還とは酷い。

 戻れたことに喜ばなきゃいけないのかもしれないけど、仕事も勉強もしなくて毎食美味しいもの食べられて好きな本に囲まれ愛猫と戯れる生活から、猫アレルギー持ちの社会人のアラフォーに戻れて嬉しいかね。

 王子からの手紙?ああ、そんなものもあったねぇ。ジョセフィーヌのトイレになってるわ。

 なんて、グダグダしてる内にそろそろ会社に行かなくてはいけない時間になりました。

 くそ、化粧する時間しかないじゃないか。ノーメイク?はは、アラフォーでそれやる勇気なんて会社勤めの人にあるわけないじゃないか。飯よりメイクだ。

 そうだ。後輩ちゃんにゲームを返さなきゃだよね。

 あーあ、オタクパラダイスだったのになぁ……





 さて。出社していつも通り仕事をして定時に帰ってきました私の手にはなんと……


『王宮学園のラプソディー』の続編の『王宮の輪舞曲(ロンド)』が!!


 後輩ちゃんにね、ちゃんとクリアして返したのよね、そしたらね、私が貸したゲームをまだクリアしてないからクリアするまで続きをどうぞ!!ってね、超笑顔で渡されたのよね。

 断れなかった……NOと言える人になりたい。

 ていうか続き出てたんかい。確かに前作の攻略サイト探したときにこの名前も引っかかったけど、まさか続編だとは思わなかったわ。人気あったんだねこれ。サブタイトルもまた書いてあるけど、これ英語だと思ったけど多分英語圏とは違う国の言葉だ。読めない。

 しかも、前作のあのヒロインが続投してるんだってよ。ヒロイン交代じゃなくて続投。乙女ゲームってそういうものなの?私、乙女ゲームに全然詳しくないからそこんとこ分からない。

 後輩ちゃん曰く、このゲームはこれ単体でも出来るけれど、前作をクリアしているとそのデータをコンバートして更に出来るストーリーが増えるらしい。

 つまりそれって、誰かと結ばれたエンドを迎えているのに新たにまた複数の男の子とのラブストーリーが始まるって事だよね。やべぇぞこのヒロイン。

 しかもまた音楽系題名だ。でもきっと今回も音楽関係出てこなさそうね。スタッフがフィーリングで題名つけてるのかな。

 ヒロインは前作で学校卒業しているから、今度は王宮で繰り広げられるラブストーリーってことなのかな。という事はあのヒロイン、王子とくっつかなくても王宮に何かしら関わる仕事か何かをすることで王宮に出入りできるようになるって事だよね。まあ攻略対象がみーんな身分高いからねぇ。

 私がクリアしたのは王子様エンドだけ。後輩ちゃんにそれを言ったら、是非やって欲しいルートがあると勧められた。

 それが、王子の兄が出てくるルート。

 まて。あの王子に兄がいたのか?知らんぞ。私の中のベアトリーチェの記憶を探っても、そんな人はいなかったはず。

 で、そのルートがあるってことは、あの王子と結ばれたヒロインが、次回作のこれで兄に乗り換えるって事?

 ええぇ……人の婚約者奪っておいて乗り換えるって……いやいやいや、きっと兄は出てくるだけで最終的には王子様エンドだよね?兄が出てくるって言っても、きっと少女漫画でよくある当て馬的なアレだよね?おばさん信じてるよ。

 とりあえず、借りたからにはクリアしなければ精神があるし、お勧めされたからには王子の兄が出てくるエンドを目指すけれどさぁ、ちょっとヒロインどうなってるのーっ。

 そういえば丁度明日は休日だし、またもやスマホ片手でやりますかね。

 


 で、ぶっ続けでやりました。眠いです。

 フラグ立てるのが面倒なルートでしたが、攻略サイトのおかげで進めました。

 クリアしましたよ。ちゃんとね。

 ええ。ちゃっかり王子の兄と結ばれるエンドでしたとも。


 でもさこれ。



 王子とベアトリーチェ、死んじゃうんだけど……




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