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7:魔法と魔術

冒険者ギルドを出て北門へ向かう。

門は閉められていたものの、人が通れる程度の通用口があり、守衛に話して通してもらう。ギルドカードを見せれば特に問題なく通してくれた。

北門を出た先にあるのは岩山だ。街道の両脇にこそ木々が多少あるものの、少し行けば途端に岩肌が露出し、木がどんどん少なくなっていくが、その途中のまだ林といった程度は木が生えている中に左に曲がる道があった。

山に続いているためだんだん急になっていく道をしばらく歩いていると、少しづつ大きな石が増え始めてきた。

未だ暗い中を足元に注意しながら進んで行きつつも、頭の中では教会で最後に読んだ本の内容、そして新たに習得したスキルについて思い返していた。






あの本『魔導の深淵の入口』は、初心者向けの魔術書であり、魔術の入門書だ。

まず前提として、この世界には魔法は存在しているが魔法スキルは存在していない。

アーツスキルという分類のスキルがある。いわゆる他のゲームでいう必殺技のようなものだ。

あまりゲームに詳しいわけではないが、このゲームのようなスキルを取得してレベルを上げていくタイプのゲームでは、スキルのレベルを上げていくと使える技が増えていくのがオーソドックスなタイプだろう。

だが、このゲームではどんなにスキルのレベルを上げても新しい技を覚えることはない。技はすべてアーツスキルとして分けられているからだ。


例えば剣を使用するとして、そのためには剣を使用するためのスキル、初期スキルでは『剣の心得』というスキルを取得する必要がある。この類のスキルは武器スキルと分類されていて、武器スキルがなくても剣を使うことはできるが、スキルを取得していると動作にシステムのアシストがあるだけでなく、剣での攻撃力や耐久値の消耗度に補正が加わるため、必須と言っていいスキルだろう。

ちなみに動作アシストがないとプレイヤースキルのみで剣を振るわないといけないが、剣道のような竹刀ではない、武器としての剣を振りなれている人なんていないだろうし、基本的には対応するスキルなしで武器をふるう人間はいないだろう。

武器スキルのレベルを上げると新しいアーツがアンロックされ、SPを消費し取得することで使えるようになる。

そのため武器スキルを複数取得しているとしょっちゅう新しいアーツがアンロックされSPを消費してしまうので、常にSPがかつかつだという話だが、それはさておき。

魔法については、武器とは多少異なり、まず基本となる『魔力操作』、そして魔法として使用するアーツスキル、それに魔力を各属性に変換するための属性適正スキルが必要となる。例えば魔力操作と火属性適正、そして一番最初の魔法アーツ『バレットⅠ』のスキルを取得することで、『ファイアバレット』の魔法が使えるようになるわけだ。


そう、魔法の使用にはアーツスキルが必要なのだ。なのだが、私は全然そのことに気づかずに初期スキルを選んだため、アーツスキルを持っていない。

このことに気づいたとき、詰んだっ!?と思ってしまった。いや、一応攻撃スキルとして使えるドレインタッチはあるのだが、このスキルは手で相手に触れないと発動しないため、常人の半分のagiしかない私では魔物に追いつくことができずにやられていた可能性が高いだろう。武器スキルも持っていないし、リアルで武器を使った戦闘の経験もない。普通に考えれば詰んでいる。

偶然教会に入り、偶然本について尋ね、偶然フラグをクリアして書庫に入ることができ、偶然魔術書を見つけて読まなければどうなっていたことか。

とはいえ、冒険者ギルドで言われたように、言語スキルを持った人だけに開示される情報も結構多そうだったし、教会かギルドにさえたどりつければ詰むことはなかっただろう。ギルドはチュートリアルで必ず行くことになっているので、言語スキルを持ってさえいれば、どんなに最初のスキル構成をミスっても詰むことはないってことだ。まさに言語スキル様様である。コミュニケーションは大事、いいね。


それはさておき話を戻すと、魔法について簡単に言えば、魔法アーツと属性適正という二つのプログラムを組み合わせてできたプログラムを、魔力操作により起動・行使する、という形になる。

では魔術とは何かというと、簡単に言ってしまえばこのプログラムをすべて自分で構築する技術だ。

魔法アーツとはプログラムだ。威力、射程、範囲、スピード、効果、消費MP、全てが決められていて、同一のプログラムであればだれが使っても効果は同じだ。

ステータスのintはこのプログラムの構築速度や構築難易度にかかわってくる。int値が高ければすぐにプログラムを構築できるし、構築をミスして失敗することもない。逆に低ければ時間はかかるし失敗する可能性も高い。

だが魔法アーツのプログラムは変わっていないので、起動さえしてしまえばint値が低い人でも高い人と同様の効果を発生させるとこはできる。

けれど、このプログラムを自由に構築することができるとしたら?魔法と全く同じ術を使用することはもちろん、同じような見た目で違う効果を発生させることもできるし、何よりアーツそのものがなくても自由に術を使える。

そしてそのために必要なのが、『魔道の深淵の入り口』を読んで取得した、魔法や魔術というプログラムを構築する言語―――


「『魔導言語』なのよね、っと?」


思考を中断させる。道の先、20メートルほど前のところに魔物が現れたからだ。

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