13:カタコンベ④
そろりそろりと物音を立てないように注意しながらカタコンベの中を探索していく。
カタコンベの中は同じような場所が連なっていて、最初に出た広間から通路を抜けた先には同じような四角い広間があり、その広間を抜けた先にもまた同じような広間があった。
薄暗くて見分けも碌につかないため早々に道が分からなくなり、急遽『マッピング』のスキルを取得した。このスキルは自分の歩いた場所及びその周辺を自動で記録してくれるので、たとえ暗くて見えていなくても地形が分かるので道がないか探すのにとても助かっている。
最初や2度目ほど多くはなかったものの、あれから何度か襲撃を受けた。その時に気付いたが、アンデッドたちはどうやら音に反応しているようで、物音を立てないようにしていると一気に襲われなくなった。
連戦によりレベルは13まで上がったが、さすがにMPが厳しくなってしまったので、回復するまでは消耗を避けようと現在隠密行動中だ。こちらも『静音』という自分の発生させる物音を小さくするスキルを取得したため、多少は安心して行動できる。最初は取るかどうか迷ったものの、取ってからは襲われる頻度が一気に減ったので取って正解だった。
二つのスキルの必要SPはともに1だが、道中魔術スキルが15になったので残りSPは20。多いように見えるが強力なスキルを取ろうとすると大量のSPが必要になるから使いどころには気を付けないと。
探索の第1目標は、脱出口もしくは簡易ホームとして使える休憩場所の発見だ。
就寝時間が迫っているためそろそろ切り上げようか考えていた時にここに飛ばされてしまったので、ログアウトしたいのにする場所がない。最悪このままここでログアウトしても街に戻されるだけなので構わないのだけど、できるなら限よく終わらせたい。
第2目標はお宝かボス部屋の発見。これはまあダンジョン探索の醍醐味と言っていいだろう。きっと私の一番乗りだろうから、このままクリアまで行ければ最高だ。途中までしか行けなくても友人たちと一緒に攻略すればいい。
それから探索を続けているのだが、どうもなんかさっきから体が重い気がする。ずっと動き回っていたから疲れただけかと思って放っておいたのだが、それとは違うような違和感がある。
さすがにきつくなってきたので少し休憩しようと座り込み、ついでにステータスウインドウを開いたとき、ようやく異常に気が付いた。
一発も食らっていないので減っているはずのないHPはホーンラビットの一撃でさえ受けてしまえばゼロになりかねないほどに減っているし、MPに至っては消費の最も少ないバレット系一発でさえ撃てないほどだ。
ちなみにその原因は一瞬でわかった。何よりも明確な証拠として【状態:呪い】と表示されていたからだ。
「…っ!?………?」
即座に立ち上がり、声や音をを出さないよう注意しながら周囲を見渡す。これが攻撃なら近くに魔物がいるかもしれない。
だが周囲には先ほどまでと同じ風景があるだけで、他には何も見当たらなかった。
となると考えられる可能性はいくつかある。
一つはトラップだ。何かに触ってしまったもしくは踏んでしまったため罠にかかり状態異常となった可能性。だが出口等の探索を優先したため何かに触れたりした覚えは無いし、スイッチとなるような何かを踏んだ覚えも無ければそのような効果が発動したエフェクトを見た覚えも無い。もしかしたら発動しても分からないトラップなんてものがある可能性もないとも言い切れないが、魔物は魔術1発で倒せるレベルなのにトラップだけその難易度っていうのはちょっと考えづらい。とりあえず保留。
もう一つは呪いのかかっているアイテムを持っている可能性。けれど最後にアイテムを拾ったときには状態異常にはなっていなかったし、一応インベントリの中を確認してみたけどそれらしいアイテムはなかった。この可能性は無しだろう。
他に考えられるのはフィールドにかかっているエフェクトであること。毒の霧やダメージ床などその場所にいるだけで状態異常になったりダメージを受ける部屋である可能性だ。とはいえ部屋の構造や様子は状態異常になる前からずっと変わっていないし、それらしいエフェクトも無し。こちらも保留。
残るは見えない敵がいる可能性。何らかの方法で擬態しているのか、それとも何らかのスキルがないと見えないのか―――と考えたところで初期スキルで取っておきながら今まで全然使っていなかったスキルを思い出した。
魔力感知。そもそも魔法使い系で行こうと決めた際に、もしこのスキルがないと魔力を認識できないのではないかと考え入れたスキルだ。結局このスキルは周辺の魔力を感知するスキルで、自分の魔力はスキルなしでも個人差こそあるものの問題無く認識できるとのことだった。ちなみに個人差というのは、現実では無い魔力を認識する感覚をつかむのにシステムアシストがあってもどうしても個人差が発生するのだとか。なお魔術の場合はともかく、魔法の発動にはスキルとステータスが満たされていれば発動できるので感覚をつかむ必要はないらしい。
ともかく、魔術を発動た時に感じていたもの―――魔力を認識することはできているので、その感覚を広げて周囲を探ってみると、自分のものではない魔力を感じた―――自分のすぐ後ろから。
「~っ!?」
すぐさま後ろを振り返り、バックステップで距離を取る。
目の前には何もない。だが確かにいるということが魔力感知で伝わってくる。ついでに言えば奴から距離を取ったからか先ほどまで感じていた体の重さがふっと無くなった。やはり奴が原因だったのだろう。
と、目の前にいる何かがいきなりこちらに向かってきた。とっさに横に身を投げ出し何とか躱すが、かなりギリギリだった。見えないことによるアドバンテージはやっぱり大きい、予備動作が見えないためやりづらいのだ。
どうにかして見えるようにする方法はないものかと考えて、そういえば昔読んだ漫画では目にエネルギーを集中することで通常見えない力を見ていたことを思い出した。魔力で同じことができるかわからないが、とりあえず試してみようと目に魔力を集中させて―――
『ウケケケケヶッ!』
「~~~~~~っ!?!?!?」
見えた。そしていた。
白い靄の塊に目と口のように見える部位だけがあるその姿。おそらく幽霊だろう。
というか識別を持っていないせいで魔物の名前がわからないのが結構面倒だ。これはもう後で取ってしまおう。
そんなことを考えながら、ダメージ分のお礼を返そうと腕を振りかぶって―――
『ウケケケケヶッ!』
すり抜けた。そりゃそうだ、幽霊に物理攻撃が通用しないのはよくあることだ。であれば対処法だって予想はついている。
目に魔力を集中させることで幽霊が見えた。なら手に魔力を集中すれば、果たして。
『ウケッ!?』
掴めた。やはりこれで正解だったようだ。
幽霊は拘束から逃れようとジタバタしているが、逃がさないようそのまま手に力を籠め続けて、そして握り潰した。




