12:カタコンベ③
スキル『魔術』の効果はたった一つしかない。術式の記録、これだけだ。
構築についてのサポートなんて無いし、構築の途中でストックできるわけでも無ければ、記録した術式を一瞬で起動できるわけでも無い。いわばデータのセーブとロードができるだけの機能だ。
ならどうやって魔術を発動したのか。
答えは単純、構築途中の術式をセーブ、ロードして構築し再度セーブする。これを繰り返すだけだ。
もちろんロードするにも時間はかかる。だけど1から構築するのと途中から構築するのではロード時間を加味してもかかる時間は格段に早いし、途中で妨害されてもセーブして中断できるから着実に術式の構築を進めていける。それにロード時間も性能のいいパソコンならすぐに終わるように、私のスペックなら完成した術式でさえ数秒あれば十分、構築途中の小さいデータなんて一瞬だ。
例え敵に周囲を囲まれていたって、術式を完成させるだけの時間は無くても構築を少し進めるくらいの隙は確保できる。
なら後は簡単、投げ飛ばして隙を作り、ぶん殴っては構築を進め、蹴っ飛ばして距離を開けたら―――
「ライトブラスト!」
盛大にぶちかます、これに尽きる。
撃ち放たれた光の砲弾が密集していたアンデッドたちをまとめて飲み込み消滅させていき、周囲にいたやつらにも少なくないダメージを与えていく。
とはいえ今ので倒せたのは4割程度、残りはさっきほど密集してないため同じようには行かないだろう。
今の一撃でできた隙を利用して術式を再度ロード、構築を変えて起動させる。
「ライトブラスト!」
同じ名前で放たれたのは、先程よりも広範囲に拡散した光の砲弾。多少威力が下がったものの、アンデッドたちを倒すには十分な力でまとめて崩壊させていく。これで大半を倒し終わり、残りはほんの3、4体。
このスキルの利点は、一度セーブした術式なら何度でもロードできること、そして魔術を再使用しているのではなく術式をロードしているためそこからさらに術式に手を加えることができることだろう。
残ったやつらを投げて殴って集めていき、集まったところで再度ライトブラスト。まとめて消し飛ばしてようやく戦闘が終わった。
終わった途端に大量のレベルアップのインフォがすごいことすごいこと。種族レベルは一気に8まで上がったし、スキルレベルも上がって魔術と魔導言語は10、魔力操作とint強化、火・光属性適性は5を超えたため、魔術を取得して0になったSPは一気に22まで増えた。
ここまで大量の経験値が入ったのは、かなりの数を倒しているのと、適正レベルが本来もう少し上だったのかもしれない。攻撃は一度も食らわなかったし、魔術でなら一撃で倒せていたが、動きが遅くて魔法に弱い分力と耐久が高いタイプなんだと思う。それに加えてあの数で押してくるとなると、普通なら多少レベルが上程度じゃあ物量で押し潰されていただろう。
気を取り直して、今のうちにスキルを取得しておくことにする。
まず第一に取るのは『陽光属性適正』だ。これでようやく太陽の下を歩けるようになる。図らずもレベリングの目標は達成だ。
そして他にも取っておきたいスキルがある。『格闘の心得』と『投げ』の二つだ。両方とも初期スキルの一種で、『格闘の心得』は徒手空拳での戦闘に、『投げ』は投擲や投げ技に補正がかかる。今回のことで痛感したが、魔術が使えない状況に対応するためのスキルは必須だ。戦闘スタイルは今のままでいいにしても、威力が無さすぎるためそれを補うスキルが必要だ。両方とも必要SPは1なのでこちらも即座に取得する。
残りSPは10。残りは低すぎるvitやagiを補ったり、格闘に必要なstrを上げる強化スキルを取得しようかと思い見ていくと、いつの間にやらアンロックされたスキルが。おそらく先ほどの大量レベルアップに紛れていたのだろうそれは『回避強化』。おそらく連続で攻撃を躱し続けることで取得可能になったのだろう、効果は回避時限定の身体能力強化。取ろうと思っていた初期スキルの『脚力強化』と併せて取得。『脚力強化』は移動速度や蹴りの威力が強化されるので、二つ合わされば接近されても距離を取りやすいだろう。こちらも必要SPは両方1。
一先ず必要と思われるスキルを取得したため、残りは取っておくことにする。
ステータスウインドウを閉じて顔を上げると、目の前には腐った死体が。
あ、なんかデジャヴ。と思った次の瞬間。
「ヴア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛!」
「ま た かっ!」
叫び声をあげた目の前のゾンビを殴り倒したのを合図にして2回戦が始まったのだった。
~ ~ ~ ~ ~
剥ぎ取りが終わったため回想していた意識を現実に戻す。
ちなみに収穫は芳しくなく、ぼろい布切れが少量手に入ったくらいだった。
代わりに種族レベルが11まで上がったので経験知的には美味しかったが。
第2陣は最終的に第1陣と同じくらいいたものの、レベルアップやスキルの取得もあってそう時間はかからずに終えることはできた。
たださすがに連戦だったため疲れてしまい、MPもかなり減っている。
それでもこのままここにいてまた襲われるのも嫌なので、落ち着ける場所を探そうと移動することにした。




