第一章 大切なもの
昔々 ある小学校に、とても心の優しい 女の子が転校して来ました。
その子の名前は、響 ココロちゃん とても絵を描くことが大好きな 女の子です。
何をするにも 一生懸命な ココロちゃんは 皆と仲良くなるために 皆の事を知ろうと 努力していました。
しかし、このクラスは、残酷にも イジメをする悪魔のような 子供たちの 棲みかに なっていたので ココロちゃんの そんな思いは 伝わる事は ありません。
そして、担任の先生にも 伝わる事は ありませんでした。
それでも 毎日毎日、ココロちゃんは 皆に笑顔で挨拶を......どんなに 無視されても それだけは絶対に 止めなかった。
そんな ある日 ココロちゃんが いつものように
「おはよう!」
そう言って 教室に入り 自分の席に 座ると 隣の席の男の子が 小さな声で ボソッと
「おっ...おはよ...う」
と、ココロちゃんは 驚きながらも 嬉しくて 満面の笑みで もう一度
「おはよう!」
と、返しました。
そんな様子を見てた クラスの女子生徒は ココロちゃんに対して 善からぬ事を 企んでいたのは、この時の ココロちゃんには 知るよしもなく
ある朝 いつものように 教室に入った ココロちゃん
「おはよう!」
笑顔で挨拶......すると、いつもは無視する クラスの女子生徒が
「おはよう!ココロちゃん!」
と、笑顔で挨拶を してくれました。戸惑いながらも 嬉しくて ココロちゃんは 飛びっきりの 笑顔を見せ
そして、いつものように 自分の席に......その瞬間 ココロちゃんは 深い悲しさに 涙がボロボロと溢れ 止める事も できなくなっていました。
教室の片隅では クスクスと 笑いが漏れる
机の上には バカ、死ね、アホ、見るに無残な ラクガキが 机いっぱいに 書かれ 簡単に人の心を 砕く 恐ろしい魔法 そうやって 一つ また一つとココロちゃんは 大切な何かを 無くして いきました。
高校生に なった頃には 大切なもの 全て無くしてしまい あの頃の ココロちゃんは もう、いません。
教室で クラスの生徒が 個々に談笑したり ジャレあったり してる中で 机に頬杖を つきながら窓の外を 見てる少女 それが、ココロちゃん 誰と話す訳でもなく ただ外を眺めて ただ...そこにいる そんな毎日でした。そんな ココロちゃんに 話しかける人なんて いるはずが......昨日までは......
キーンコーン カーンコーン キーンコーン カーンコーン
始業ベルが鳴り 先生が 男の子を連れて 教室に入って来ました。
「起立!礼!着席」
日直の号令が 終わると 先生が黒板に 信条 渚と書き
「今日から このクラスの 一員になった 信条 渚君です。皆さん 仲良くして あげてください。信条君!あなたの席は 窓側の一番後ろの席よ。響さんの後ろ席ね。」
予期せぬ 突然の転校生に クラスがざわつき
それを他所に ココロちゃんの 後ろの席に 座ると ココロちゃんの 肩を軽く ポンポンと 叩く 振り返ると 満面の笑みで
「よろしくな!」
一瞬 ココロちゃんの胸に 矢が刺さった そんな衝撃の痛みが......
ここで また、あの時のように 生徒のヒソヒソと囁く声が 微かに聞こえ あの時の思いが よみがえり 言葉が喉を通らない......そんな状態を見て
「大丈夫?」
その言葉で 我にかえり 震える声で
「わっわた...しに...かまわない......で」
そう答えるのが ココロちゃんの 精一杯でした。
(もう、誰も信じたくない)
ココロちゃんの心は 閉ざされたまま......開くことはないと ココロちゃん 自身も そう、思っていました。
しかし、毎日のように ココロちゃんに 話しかける 渚君の行動に クラスの女子生徒が 黙っているわけもなく 再び あの時と 同じような イジメが始まり ココロちゃんを また、苦しめました。
それも、陰湿なイジメで なかなか表に でるようなイジメではなく 先生や男子生徒には 分からないように 仕組まれていました。
それは、ココロちゃんにしか 分からない 辛いイジメ......一人で 何もなかったように 耐える日々を過ごしていた ある日
後ろの席の 渚君が
「今日、暇?ちょっと 話があるんだけど」
急な事で 戸惑う ココロちゃん それでも 強引に
「放課後 図書室に来て!待ってるから」
放課後
ココロちゃんは 迷っていました。行くべきか 行かないべきか......
その時、クラスの 女子生徒の一人が
「渚君が、屋上で待ってるって!」
「えっ!?」
(屋上?図書室じゃないのかな?変えたのかな?)
「じゃ!伝えたから 行ってあげてね」
「あっ...はい...」
ココロちゃんは 考えて 行くことに......
ココロちゃんの クラスは一階 階段を上って 3階まで行くと 後、半階段上ると 屋上の扉の前 ノブに手をかけ ゆっくりと回す 扉が開いた 瞬間
ドーン!
ココロちゃんの体が 勢いよく 前に押し出され 扉が
ガチャン!閉まる音が 響く
扉の向こう側で 笑い声が聞こえ
「ばーか!調子に乗ってんじゃねぇよ!キモいんだよ!ブース!死ね!」
数人の 女子生徒の 醜い罵声が ココロちゃんの耳に
(そっか......また...騙されたんだ...)
背中を押されて 転んだ拍子に 膝をついて しまった ココロちゃんの膝は 血が滲んでいました。
(きっと......鍵も...)
扉のノブを 回してみる
(やっぱり......)
空は、茜色に染まり 家に帰る 生徒の声や 部活動をしてる 生徒の声が 聞こえる
そんな ありふれた 日常の中で ココロちゃんは一人 屋上に......
(私が、居なくなっても 誰も何も 思わないんだろなぁ......なんのために 生まれてきたのかな?もう......いいよね...)
ゆっくりと前に 進んむ その先には 柵が.....静かに手をかけ ゆっくりと柵を 乗り越え 目を閉じ
(みんな バイバイ)
サヨナラを告げ ココロちゃんは もう一度 空を見上げました。そして、手を広げ 宙を舞う......はずでした......