4ページ目:屁で倒したとか言えない、絶対に。
「ここが《小鳥の巣》か。すいません。1人大丈夫ですか。」
ヤマダは宿の中にいた受付のおばさんに声を掛けた。
「あいよ、ちょうど今一部屋空いてるよ。1人一泊銀貨1枚と銅貨5枚だよ、風呂と朝晩飯をつけるなら銀貨2枚になるよ。」
「じゃあ、風呂とご飯付きでとりあえず2泊お願いします。後で追加で泊まることってできますか?」
「できるよ。じゃあ全部で銀貨4枚だよ。二階の左奥の部屋だよ。飯の時は宿で鐘を鳴らすからそれを聞いたら降りて来な。あんまり早かったり遅かったりすると用意できないからね。」
ヤマダはおばさんに銀4枚を渡して指定された部屋に入った。
「はぁー、疲れた。キュウもう鞄から出てきてもいいぞ。」
「もーでていいのぉ?」
…………キュウさんやそう言う事は出て来る前に言おうね。
「ま、まぁいいか。今日は宿の飯を食べたら休もうか。」
「おっとさん、キュウお腹すいたー。」
「お、そうか。今日のところは森で取ったキノコと木の実でいいか?」
「うん、いいよー。」
「えらいなー、キュウは。明日はうまいもんくわせてやるからなー。」
「えへへー、キュウえらいー?」
アイテムボックスから木の実とキノコを取り出すとさっそくキュウは食べ始めた。
「あぁ、えらいぞ、キュウ。流石俺の娘だ。」
おい、ヤマダ。いつからお前は親バカになったんだ。
「でも、いつまでも宿生活じゃあなあ。思い切って屋敷でも買うか!白金貨1枚持ってるし大丈夫だろう!」
すると、
カーン、カーン、カーン
「お、飯の時間だな。キュウはどうす、ってもう寝たのか。じゃあ1人で行くか。」
今日の晩飯はちょっと硬めのコッペパンのようなパンと何かの肉のステーキとスープだった。聞いていた通り美味かった。でも胡椒などの調味料はあまり使われていなかった。
「おばさん、胡椒とかってあんまり使ってないんだね。」
「そりゃあそうだよ。使いたいのは山々なんだけど、胡椒と塩は高いからねぇ。」
そうなのか、いいことを聞いたな。創作魔法で作って売ればしばらくの生活費くらいは稼げそうだな。今度売りに行ってみるか。
「ふーん。おばさん、ごちそうさま。」
「あいよ。明日の朝も飯出るからね。忘れずに来るんだよ。」
そう言ってヤマダは部屋へ戻った。それから風呂に入って夜の間に胡椒と塩を作ってから眠りについた。
次の日、とりあえず森で倒した?バイパーを売るために、キュウを連れて冒険者ギルド向かった。
「すいませーん、魔物の素材を買い取ってもらえますか?」
「あ!ヤマダさん!はい!大丈夫ですよ。ではこちらに置いてもらっていいですか?」
ヤマダはミラが指定した場所にバイパー15匹全部出した。
「…………え、えぇぇ!こ、これどうしたんで°か?」
「いや、西にある森で取ってきたんだよ。」
「う、嘘でしょ。確か、バイパーって危険度Cの魔物ですよ。それを1人でこんなにも。どうやって倒したんですか?」
「い、いやぁ。ちょと本気だしちゃったらさ。」
言えない死ぬと思った寸前に出たスカシッ屁でたおしたとか。絶対言えない。
「ヤマダさんって強いんですね!」
うっ、ごめんよミラ。嘘は言ってない、嘘は。
「買い取ってもらえないのか?」
「いえ。買い取らせていただきますね。解体に少し時間がかかりますのでまた、夕方ごろにお越してください。」
「分かった。夕方にまた来るよ。」
「はい!お待ちしていますね!」
ヤマダは夕方まで時間で昨日から考えていた屋敷を買うため、冒険者ギルドを出た。
「お、あったあった。ここが不動産屋だな。」
扉を開けると小太りの男が声を掛けてきた。
「へい、らっしやい。本日はどのようなご用件でございますか?」
「ああ、屋敷を買いたくてな。」
「そうでござんしたか。何か条件などはありますか?」
「そうだな。庭が大きくて、風呂があるところで出来るだけ貴族街から離れているところならいい、あと金額は考えなくていいから。」
「へいへい、了解しました。明日の朝には調べて見繕っておきますのでそれ以降にまたお越しください。」
「わかった。よろしく頼むよ。」
不動産屋を出るとちょうど太陽が沈みかけていた。
「そろそろ買い取りの査定おわってるかな。」
ヤマダはそんな独り言を呟きながらまたきた道を戻って冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドにはいると、
「ヤマダさーん!こっちです!ちょうど査定がおわったところですよー。」
とミラが冒険者ギルドの裏の倉庫から扉を開けながら出て来るところだった
「倉庫の方まできてもらっていいですか?量が多いので倉庫で解体して貰ってたんですよ。」
ヤマダは言われた通り倉庫の方へ歩いて行った。
倉庫に入ると作業を終えた解体屋と思わしきムキムキの男が5、6人座り込んでいた。
「では、査定の内訳の説明をおこないますね。まずバイパーの皮一枚銀貨5枚、そして牙は金貨1枚と銀貨7枚ですね。その牙から出る毒は金貨1枚で買い取らせて貰います。バイパーの皮は薄い割に頑丈なので初心者な防具などに人気があるのでいつ売りに来て頂いてもそれなりに高く買い取らせていただきます。また、牙に関しても初心者冒険者の武器として需要があるのでこれもそれなりの値段で買い取っらせてもらいます。毒に関してはあまり大きな声で言えませんが貴族からの需要があるのでこの値段になっています。買取金額はそれぞれ15セットずつあるので合計、金貨48枚になります。どうぞご確認の上お持ちください。」
そう言って金貨48枚入った麻袋を渡してきた。
「うん、ちやんと金貨48枚はいってるね。」
「すごいですね、ヤマダさん!なかなか一度にそれだけの金額を手に入れる人なんてほとんどいないですよ。もっと、喜んでもいいのに。」
「あ、ああ。もちろん嬉しいよ。じゃあまた明日ね。」
「はい!まってますね!」
俺は金貨の入った麻袋をアイテムボックスにしまって途中屋台で串に刺さっている肉を15本買ってから宿屋の部屋戻った。
「キュウ、今日はお肉だぞ。ほれ。」
アイテムボックスから串の刺さった肉を全部出した。肉から串を抜いてキュウの前に置いてやる。
「わー、お肉だー。おいしーよ、おっとさん!」
そう言いながら嬉しそうに(表情は分からないが)肉を頬張っていく。
ちなみにキュウは1日1食でも大丈夫だ。しかもスライムなのでなんでも食べることができる。
今日の晩飯は昨日と同じパンと肉がゴロゴロ入っているシチューだった。肉が口の中で溶けていき、とても美味かった。
風呂から上がったヤマダはキュウと遊んでから眠りにいつた。