3ページ目:究極にして最低の攻撃。そして冒険者デビュー!
3話目です。
「キュウ!準備はいいか?」
『うん!ばっちりだよ!』
「よし!じゃあ行こうか。ここ一週間で作ったものはアイテムボックスに入れてるし楽でいいな。」
ちなみにアイテムボックスの容量は魔力の多さによって大きさが異なってくるが、ヤマダの魔力は無限なのでどれだけの荷物を入れても大丈夫なのだ。実はヤマダは異世界に行ったらやってみたいことがある。そう、冒険者になることだ。日本にいた時からもし異世界へ行ったら冒険者をしてみたいと思っていたのだ。
「じゃあ、行こうか!異世界初の街へ!!!」
そうしてヤマダは祠から出て街のある方向も分からないまま出発するために森へ駆け出した。街の方向も分からぬままだ。ヤマダはまだ祠の近くの森にしか出たことはないので当然といえば当然なのだが、テンションの上がった当の本人はまだ気づいていない。
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「はぁ、はぁはぁ、やっべぇぇぇ!キュウ、戦略的撤退だ!はしるぞ!」
そう言うと、キュウを祠にいる間に作った肩掛けカバンに入れて走り出した。後ろに15匹の蛇を連れて。
ちなみにこれらの蛇はバイパーと呼ばれる毒蛇で強力な毒と発達した牙で襲ってくる。正直、今のヤマダのステータスならフルボッコにできるのだが、何せ外見がどれだけ魔王みたいでも中身はただの日本人。15匹もの蛇を見たとき生理的嫌悪に襲われて逃走しているのだ。
「う、うぇぇ、流石に気持ち悪りぃな。うぉ!や、やべ、こ、転んじまったぁ!あ!もう、ダメだ。」
転んだヤマダが顔を上げて見たものは10メートル先からこっちにものすごい速さで向かってくる蛇の集団だった。
ヤマダはどうせ死ぬなら1発くらいおみまいしてやろうと思って、腰を落として構えだ。その瞬間、
「プッ!プスーーー。」
祖父から受け継いだ究極奥義スカシッ屁が放たれた。
次の瞬間、3メートル先にいた蛇の集団が白目を向いて口から泡を吹いてぶっ倒れた。
「な、なんだ?俺の屁で気絶したのか?………ふっ!たいしたことねぇなぁ。俺って罪なやつだぜ!」
いや、全くそんなことはない。たまたま蛇の嗅覚が優れていただけだ。さらにその蛇たちに噛まれてもキュウのスキルで回復できるし、そもそもヤマダが普通に戦っていればこんなことにはならないのだ。
「罪な俺を許してくれ。スネークたちよ。」
そんな訳のわからないことを言いながらアイテムボックスから木の棍棒を取り出して確実に蛇を殺して回った。
「これで、最後っと。よし、アイテムボックスにしまって気を取り直して街へ行くか!」
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それから3時間後の昼頃に5メートルくらいの高さの城壁に囲まれた街らしきものが見えてきた。門の前に門番らしき人が2人立っていて、1人がやってきた人に対応していたので、ヤマダはもう1人のスキンヘッドの男の門番の方へ寄って行った。
「ん?身軽な格好だな。どこからやってきたんだ?」
「はい。ちょっと男のロマンを追って旅をしているんです。あっ、ちなみに食料は木の実とか食べてここまで来ました!」
ちなみにこのセリフは来る途中に考えたものだ。異世界にもロマンを求めて旅をしている人くらいいるだろうと、なんともアホな考えである。魔王のような男に意味不明な事を敬語で言われたスキンヘッドの男の門番は勢いに負けて、
「お、おおう。そ、そうか。身分を証明できるようなものはあるか?あるなら銀貨2枚、ないなら銀貨5枚だ。」
「じゃあ、はい銀貨5枚ですね。じゃあ金貨1枚どうぞ。」
「あいよ。はい、釣りの銀貨5枚だ。」
「じゃあ、行ってきます。門番頑張ってください。」
「ああ!おめぇも頑張れよ!」
そしてヤマダは門をくぐって異世界初の街にあしをふみいれた。
この街はグロリア王国の第3都市に当たるトロワーネという街らしい。国としては人間至上主義を掲げてはいないものの、獣人族などはまだ差別や迫害をうけている。故に奴隷の中で獣人族が多くの割合を占めている。街としては北の山に背を向けて立っているのが領主館、その周りが貴族街、その周りをさらに商業区、庶民の居住区、宿泊街、城壁に近いところに工業区になっている。トロワーネでは特にこれといったものがない代わりに商業、工業などが安定した収益を上げており冒険者も駆け出しから中堅冒険者あたりが滞在しているので魔物からの被害もすくない。
「おぉ!ついにやってきたぞ。ふむふむ、建物は石や木でできているのか。道も整備されていて、綺麗な街だなぁ。」
そんな思った事を全て口に出しながらさっき門番に聞いた冒険者ギルドへ向かった。
しばらくまっすぐ歩いていると剣と盾が描かれた看板が右側に見えてきた。
冒険者ギルドは石造りの二階建ての建物になっている。ヤマダは勇気を振り絞って扉を開けた。
その先で見たのは、左手に受付がありおばさんと金髪碧眼のロングヘアの美人な受付嬢がうわっており、右手に酒場のようなものがありまだお昼頃なのにイカツイ顔面の冒険者たちがたくさんいて飲みまくっている。ヤマダが扉を開けたとき酒場で飲んでいた冒険者が一瞬こっちを見てザワザワ騒がしくなったがすぐに仲間の冒険者たちとの会話に戻った。テンプレは起こらないようだ。
ヤマダはとりあえず手前の美人の受付嬢に声を掛けた。
「あのー、冒険者になりたくてきたんだけど。」
「はい。冒険者ギルドに登録していただくと冒険者になる事ができます。」
「じゃあ、登録させてくれ。」
「ではこちらの冒険者になるにあたっての注意事項の書かれた紙を読んでから登録書に必要事項を記入していただきます。もし字の読み書きができない場合は有料で代筆代読させていただきます。」
「いや、大丈夫だ。」
ヤマダはそう言うと、渡された紙に目を通して登録書に名前、年齢、出身地、使用する武器、魔法の欄に名前と年齢以外に適当な嘘を書いた。名前はヤマダにして、年は17で、出身地は名もなき村、使用する武器はショートソード、魔法は火魔法レベル2.水魔法レベル1と書いて渡した。
ちなみに冒険者になるにあたっての注意事項にはこう書いてあった。
一つ、冒険者はG〜Aまであり、さらにその上にSランクが存在しているがSに上がるには人はみんな人外
的な強さなので片手で数えれるほどしかいない。ランクによって冒険者ギルドからの支援が異なる。
一つ、G〜Eランクまでは一週間以内、D〜Bランクは一ヶ月以内、Aランクは一年以内にギルドで出ている依頼を一つ以上達成しない場合除名処分となる。Sランクは制限がない。なお、G〜Eランクへランクを上げる場合にも一定数以上の依頼をこなす必要がある。D〜Bランクへ上がる場合は実践の戦闘を行い認められると上がることができる。また、Aランクに上がるにはギルドからの指名依頼などをこなす必要がある。ちなみにSランクに上がるには大規模な危機から街や都市を救ったりしないといけない。
一つ、強盗、強姦、殺人などの犯罪行為に関しては冒険者ギルドは一切の責任を負わない。もし犯した場合は、ギルドからの助命処分となる。
一つ、冒険者ギルドからの緊急依頼は基本的に断ることは出来ない。断る場合は違約金が生じる。
などなど書いてあったがほとんどが当たり前の事なのでとくに驚くようなことはなかった。
「はい。ヤマダさんですね!登録完了しましたので、最後にこちらのカードをお渡ししておきますね。こちらのカードは冒険者である証とともにランクを示しておりますので無くさないようにお持ちください。ランクが上がるにつれてカードの材質も変化していきます。もし無くされた場合は金貨1枚で作り直すことができます。」
そう言って受付嬢はGと書かれた木でできたカードを渡してきた。
「あっ、そうだ、風呂があってご飯が美味いおすすめの宿とかある?」
「うーん、そうですね。少し高いですけど《小鳥の巣》ってところがありますよ。ここを出て右に五軒行った場所になります。あ、あと私のことはミラとお呼びふださいね!」
少し頰を赤らめた受付嬢が宿屋を紹介してくれた。
「あ、ああ。ありがどう、ミラ。さっそく行ってみるよ。」
ヤマダがミラに礼を述べるとミラがさらに赤くなったのは気のせいだろう、と思いながら、ミラに紹介された宿屋に向かうため、冒険者ギルドをでた。
ヤマダが冒険者ギルドから出て行った後、ミラの後ろにいた受付嬢が声をかけた。
「ちょっと、ミラどうしたのよ!いつもは冒険者に無表情で適当にあいてするのに。顔、真っ赤にしながら、さっきの人に対応して。もしかして惚れちゃった?ん?ん?」
顔を真っ赤にしたみらが、
「うっ、べ、別に!」
「顔、赤くしながらそんなこと言っても全然説得力ないわよ。」
「うぅー、そ、そうよ。惚れちゃったわよ。何か悪い!」
「悪かったわよ。バカにするような言い方して、それにしてもあんたがほれるなんてねぇー。私も応援するから頑張ってね。」
「あ、ありかと、カーラ。」
そんな事になっているとはヤマダは知らない。そしてそんな2人を見ていた男冒険者三人組がいた事も知らない。