『もう一つの力』
相も変わらず自称神はまだ来ない。
筋トレにも飽きていた頃で、新たに手に入れた力である機械武装を試しに試しまくっていた。
それで分かった事だがこの機械武装、火を起こす事ができる。
これでは魔法だ。
いや、行き過ぎた科学は魔法と見分けがつかないとかそういった話ではなく、機械の皮を被った魔法と言ってもいい。
機械武装したガントレットの指先からマッチ程度の火を起こす事に成功した。
ただし、代償として肉体の疲弊が酷い。
どのくらい酷いかというと、三秒間マッチ程度の火をつけると体感一日は動けなくなる。
燃費が悪いってもんじゃない、しかし、燃料そのものを使わない、無から生み出していると考えると、代償としては等しいのではないだろうか?
と、この謎空間に倒れ伏しながら考えていると、また目を引く星があった。
あーなんだかあの星、地球っぽいなぁ、今此処が何処の星系なのか、そもそも俺の元いた世界線だとか、さっぱりわかんないしなぁ、わかるわけもないけど。
一体俺はどこまでドナドナされていくのだろうか?
月っぽいのもあるけど、地球の様で地球ではない惑星だった。
「知的生命体とかいるんだろうなぁ」
ぼんやりとその惑星を眺めていると、機械惑星の時と同じく、体に違和感を感じ始めた。
「ん?」
また内から別の力が湧いてくるのを感じる。
同時に先程まで感じていた疲労感が嘘の様に消えていく。
「どういうこと?」
突然の出来事に驚いていると、また脳内で声が聞こえてくる。
『エナジーを入手しました』
「なにそれ? エナジー…要はエネルギーってこと?」
疑問に答える様に脳内の声は続ける。
『エナジー弾』
『エナジーを消費した弾を撃てます』
その説明に少しだけ嫌な予感がした。
「…まさかな」
右手を前に向けてそのエナジーを放ってみる。
イメージは簡単だった、それこそまるで見た事があるかのように一度は試してみた事があるかのようにすんなりできた。
右手の何もない空間に何かが集まってくる。
それは次第に形を成し、楕円球形となる。
そして、その弾を前方に打ち出す。
ポヒーィィィィィィ。
俺が飛ばしたエナジー弾はそのまま宇宙空間へ消えていった。
「…ちゃう! これエナジー弾ちゃう、エ〇ルギー弾や!!!」
え、ちょっと待って、じゃああの星はまさか!?
「……バ、バイバイ、〇〇〇〇ワールド」
俺は気を取り直してエナジーについて考える。
エナジーとは、要は気の事だろう。
なんだか力とはパワーだと言っている様な気分になるが、つまりはそういう事だ。
神がいつ戻ってくるかわからないが今度は気のコントロールの訓練をしよう。
いざとなればこの力で宇宙を飛べるかもしれないしな。
正直この能力をつけるかどうかは迷った。