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くるていろ  作者: 朝九時ゆざめ
始めに
1/3

『踏み出した一歩はあえて踏み外す一歩』

初投稿です、よろしくお願いします。

更新は頑張って週一、できればいいなぁ(遠い目)


 俺は何気ない日常こそが大事と考えている人間程、意外と非日常に憧れているのではと思っている。


 というのも、現実には差し迫ったスリルは殆どないし、社会の歯車として貢献せずとも、バイトだって立派な歯車で、ある程度の金額を稼ぐ事が出来れば一人で生きていくだけならどうとでもなる。


 などと、大学を卒業したが、どこにも就職する事が出来ずに日々バイトに明け暮れている自分を常々そう慰めて生きているのだ。


 元々何かしたかった夢があるわけでもなく、ただ生きているだけの生活に満足している自分は、もとよりこうなる予定だったのだろう。


 親を楽させたいとか、彼女が欲しいとか、豪華な生活がしたいとか、そういった欲求とは無縁であるし、生きていればそれでいいと考えてさえいる。


 つまりは向上心がないのだろう、しかし、今のこの世の中ではそう考えている人間がいる事ぐらい普通ではないだろうか。


 自分は社会に適合できないと勝手に自分自身を決めつけている。

 そうじゃない、きっと俺にも、何か出来る事がある筈だ。

 なら、自分が心の底から求めている物はなんなのだろうか?

 俺が本当に求めていることは―――、


 「あーアホらし」


 一通り布団の中で妄想を垂れ流した後、起き上がる。

 後一時間もしない内にバイトの時間だ。

 俺は着替えて身支度を整えると、いつもの様に気持ちを切り替える。

 そう簡単に日常は崩壊しない。


 「さて、行きますかっ、と」


 玄関を開けて、外に一歩踏み出すと、眼前には宇宙空間が広がっていた。


 「どうも、神です!!」

 「あ、どうもこんにちは」


 開口一番に威勢のいい声がとんできたものだから、ついご近所の人に挨拶するような返事をしてしまった。

 眼前には見慣れたアパートの手摺から見える青空はなく、ゲームの中でしか見た事のないバーチャルな空間である。


 「え、なに、これ?」


 一歩、また踏み込む、見えない足場というか板の様な感触はあるが、奇妙な浮遊感を感じる足場へとまた一歩。

 突如背後から戸の閉まる音がする。

 振り向くと、玄関の扉が消えて、其処には虚無が広がっていた。

 慌てる事を通り越して呆けていると、


 「やぁやぁ高梨雄一君、ちょっと異世界に行ってみないかい?」


 目の前には少女の声をしてはいるが、いかにもな悪ガキ少年の見た目をしている自称神がいた。


 「スパッツか……」


 短パンかスカートかで性別を判断できそうだったが、スパッツは困る、ちなみに俺はどちらでもアリだ。


 「ちょっとキミぃ、良からぬこと考えていないかな?」

 「そんな事はない、断じてない」


 ホントかよ、といった顔でこちらを見ている。

 そうだよ、断じてロリコンではない、単に子供好きなだけだ。


 「ロリコンは皆そういうんだぜぇ」

 「ちげぇよ、男の子も好きだよ!」

 「おにーさん……それって、もしかして……」

 「違ァう!! 俺は紳士なんだよ、わ~かってるぅ!?」

 「開口一番に履物を全力で鑑定しているおにーさんってば、説得力ないぜぇ」


 くっ、コイツ、煽ってやがるな。

 大丈夫、俺はロリコンじゃない、健全だ。

 冷静になれ、そんな茶番染みた言い合いとかはどうでもいい、今はこの状況の確認が先だ。

 俺は辺りを再度見回して、目の前のガキに質問する。


 「なぁ帰れねぇの、これ」

 「帰す事も出来るけど、話を聞いてからでも遅くはないよ、折角の機会なんだ、損はさせませんぜ!」

 「損も何も、得が何かがわからないんだがね、温泉旅行が当たるとか?」


 むしろ現在進行形で時間を奪われている以上、損しかないのだが、どうしよう。

 時間、止まってたりしないかな?

 ドッキリではなく最早マジモンの超常現象ならそれぐらい融通が利かないだろうか。


 「さて、この度、常日頃から社会の底辺でアクセク働く高梨雄一君には異世界に行って冒険する権利が発生しました、向こうは剣と魔法のファンタジーワールド! …ただし、一度向こうへ行ったら帰ってくる事は出来ないでしょう」


 「何故俺なんだ、言っとくが俺は勇者適正値みたいなものがあるとしたらそんなに高くない自信があるぞ」


 「知っているとも、神様は大体の事を知っている、おにーさんが心底人間として生産性がなく、そしてなによりも今いる社会に馴染めていないのも」


 好き放題いいやがるな、コイツ。


 「でも、それは今いるこの世界だからだ、おにーさんの内に眠っているものはこの世界では解放できない、そしてそれはこの世界では解放してはいけないものだ、君はそれを自らの内にしまい込み、誰にもバレない様に隠し通している、それがいけない事だとわかっている」


 このガキは大層俺の事を買っているようだが何の事だかさっぱりわからん。

 聞きようによっては社会不適合なのを大仰に言っているだけの様な気もする。


 「そんな君だからこそ! 異世界へご招待しようというのだよ」


 「異世界ねぇ…」


 夢なら覚めるだろうし、いっそ覚めない夢でもいい。

 バイトには遅刻するだろうが、夢から覚めれないのだ、仕方ない。


 「いいぜ、行こうじゃないか」


 そんなに俺は現実世界というのが嫌だったのかと思うと、きっとそうじゃない、非日常を願っていたのだ。

 だからきっと、今日、俺は道を踏み外したのだろう。

 俺の言葉に自称神はニヤリと笑った。


 「契約成立だ」

 

ついになろうに投稿やっちまったぜ!

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