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剣客

ブックマークが増えてた……嬉しい( *´艸`)

 オーガ族に承諾をもらうため、スレイヤーはオーガ族が管理している地下階層にやってきた。この階層は全てオーガの管轄であり、主にオーガの住む長屋と屋敷、そして畑が存在する。


 スレイヤーが畑に近づくと、フンドシ姿のオーガたちが稲を植え、育った苗を刈り取っていた。地下はコメを育てるための人工的な環境を整えており、一年中コメが収穫できるように整備されていた。いくつかの畑を温度を分けて管理しているのだ。


「オーガ族の方、すまない。ちょっといいか?」


 畑を耕すオーガたちは、誰も彼も筋骨隆々で強そうな者達ばかりだ。オークたちが太って腕力が強いのに対して、オーガたちは鍛え抜かれた体を持って強靭な強さを誇る。


「うん?なんだオメェ」

「俺はラミア様配下のスレイヤーという者だ。あんたらが作っているコメを少し分けてほしくてきたんだ。誰に許可をもらえばいいか教えてもらえないか?」


 スレイヤーの言葉に、オーガが首を傾げる。


「何言ってんだオメェ。オーガ以外に譲るわけねぇべ」

「そんなこと偉い奴に聞いてみないとわからないだろ。頼むよ」


 スレイヤーが頭二つ分大きなオーガの肩に腕を回せば、スレイヤーの方が足が付かずに宙ぶらりんになる。


「オメェ、馴れ馴れしい奴だな」

「そうか?それにしてもスゴイ体だな」

「おう、毎日畑で鍛えてるからな」


 赤肌をしたオーガは自慢げに胸を叩く。


「あんたほどの人物を従えている人だ。気前もいいんだろ?頼むよ。会うだけでもダメか?」

「う~ん、姫様は人見知りだからな。オラたちともたまにしか会ってくだされねぇ」

「なら、誰なら姫様に会えるんだ?」

「護衛をしているイチさんと、姫様の世話をしているバァ様ぐれぇでねぇか?」


 赤オーガは悪い奴ではないようだ。こちらの質問に素直に応えてくれる。


「なら、その護衛の人でも構わないから、会わせてくれないか?」

「それなら丁度いいだな?そろそろ見回りの時間だしな。もうすぐここを黒い頭巾を被ったオーガが通るはずだ。あの人なら」


 赤鬼が話している途中で黒頭巾を被った小鬼が通りがかる。


「あれが護衛か?」

「おっ、そうだぁ。あの人は、イチさんと言ってモノスゲェ強いんだ。あの人なら姫様に会う許可をくれるんじゃねぇか?」

「そっか、ありがとな。これは俺が作った干し肉なんだけど。よかったら食べてくれ」


 スレイヤーはオーク肉で作ったソーセージを赤鬼に渡し、イチの下へと向かった。


「そこのあんた。ちょっと時間を作ってもらえないか?」

「なんでござんしょ」


 スレイヤーの言葉に黒頭巾は振り返り、問いかけに応じてくれる。話してみればオーガたちは悪い奴ではないのかもしれない。


「俺はラミア様の配下で、スレイヤーという者だ。ラミア様にコメを食べさせてあげたくて、よかったら譲ってはもらえないだろうか」


 スレイヤーは赤オーガにしたように、イチにも同じ質問を投げかける。


「それは困りましたねぇ。あっしはしがない剣客でござんす。あっしにそんなことを言われてもわかりませぬ」


 以外に高い声をしたイチさんは、赤鬼と同じような答えを返してきた。


「そうか……なぁあんたがオーガの姫様?の護衛だって聞いたんだ。よかったら、コメをもらう許可をもらうために会えないだろうか?」


 イチさんは黒頭巾をさらに深く被り、申し訳なさそうな声を出す。


「すいやせんねぇ。あっしも単なる客人でして、ここの親分さんには世話になっておりやす。あっしの方から迷惑をかけることはできのですわ」

「そこをなんとか頼めないだろうか?」


 断るイチに食い下がるスレイヤー。その態度にイチさんも根負けしたのか、ため息を吐いた。


「ハァー、こればっかりはあっしではどうにもできやせん。それでもって言うんっていうなら、あんた命かける気はござんすか?」


 イチの雰囲気が変わり、剣呑とした雰囲気にスレイヤーは距離を取る。


「なかなかやりますねぇ。あっしの初撃を避けやしたか」


 正直何をされたのかわからない。初撃ということは何かしら攻撃を受けたのかもしれない。しかし、まったく見えなかった。黒頭巾に覆われたイチが動いたようには見えなかった。


「攻撃したんだよな?」

「わかっておられないのに躱したと?これはまた驚いた。あんさん、相当場数を積んでなさる」


 イチはスレイヤーが危険を察知して逃げたことに感心したようだった。しかし、スレイヤーの心は祖父から受けた虐待紛いの訓練の日々を想い出しただけだ。


「地獄は何度か見たことがあるからな」

「それは面白い。お前さんがあっしに一撃でも入れられたなら、親分さんへのお目通り、口利きしてもようござんすよ」

「本当か?絶対だぞ」


 スレイヤーが承諾すると、イチの懐から杖のような棒が見えた。先ほどもその棒で攻撃したのかもしれない。


「我が剣は居合。一瞬の閃光を感じろい」


 イチの動きは瞬く閃光のようにスレイヤーへ迫る。一閃される一筋の煌めき。「ガキン!」放たれた一撃は透明な壁を斬りつける。これまでどんな攻撃も凌いできたバリアが砕け散った。


「スゲッ」


 スレイヤーは自信があった魔法を破られ、素直に感心した声を上げた。


「イヤハヤ、スゴイのはあんさんだ。あっしにしても手加減はしていませんよ」


 フワリと黒頭巾が外れて黒髪の白い肌をしたオーガの女性が顔を出す。顔は整った可愛らしい人だったが、しかし両目は固く閉じられていた。


「いやいや、あんたの剣はスゴイな」

「何を言われる、あんさんの魔法こそスゴイ、あっしの剣はただの剣じゃない。あっしように拵えた特別製だ。それを防いだ御仁はあんさんが初めてだ」


 互いに矛と盾をぶつけ合い、認め合った二人は意気投合した。二人は互いの健闘を称え合う。


「あっしは昔から目が見えませんで、この剣一本で生きてきたんですよ」

「目が見えていないのにあの剣か、スゴイな。俺は祖父の恩恵で何とか生きてこれたけど。一か月前から魔王城に来て、やっと自分の居場所をみつけたところだよ」


 互いの境遇を語り合い、親交を深めた。スレイヤーとイチは二刻ほどの時間を過ごした。


「イチさん。最初の話だが、どうかな?」

「あんさんの頼みだ。聞いてあげたいのは山々だが、親方様の許可がなくてはやっぱり差し上げることは出来んです」

「そうか……それで、親方さんには会えないか?」

「それなら話をつけてもいい」

「本当か?」


 スレイヤーはイチの言葉に嬉々として笑顔になる。


「あんさんは素直な御仁だな」

「そうか?よくわからない奴だって言われるんだけどな」

「あんさんの纏う雰囲気が、素直だと告げている」

「そんなことわかるのか?」

「目が見えやせんので、人とは違うモノが見えるんですよ」


 イチさんが笑い歩き出す。


「親方様のところに案内しよう」

「ありがたい」


 スレイヤーもイチさんに続いて歩き出した。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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