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竜人族 1

 ストーカー問題を解決したスレイヤーの下へ新たな問題が迫りつつあった。数が少なくなった船を囲むように魔海の魔物が迫ってきていた。


「師匠」

「師匠と呼ぶなと言っただろ。気付いたようだな」

「はい。今は勇者殿はおられません。戦えるのは数名の冒険者と兵士。そして私だけです」

「そうだな。どうするつもりだ?」


 スレイヤーはグミの瞳を真っ直ぐに見つめる。


「船は絶対に守らなければなりません。だから、守りをお願いできないでしょうか?」

「それでいいのか?」

「はい。戦いは私が指揮します」


 グミの瞳には決意が込められていた。


「いいだろう。存分に戦ってくるがいい」


 スレイヤーはグミの決意に応えた。船を守ることを約束して、グミを見送ったのだ。船に残っているのは僅かな兵士と整備士たちだけとなった。


「師匠。本当に大丈夫なのか?」


 整備士たちが心配そうにスレイヤーに問いかける。


「ああ、船は必ず守る」

「信じてるぜ。剣聖に師匠って呼ばれてるんだ」

「剣聖?」

「そうだ。グミの嬢ちゃんは剣聖に後継者だろ?」

「いいや。あいつは戦士だよ」


 整備士たちはスレイヤーの応えの意味がわかっていないようだった。だが、スレイヤーが説明するよいも船に迫る魔海の魔物と戦うグミを見れば自ずと理解できた。


「あれがグミの嬢ちゃんか?」

「今までと全然違うじゃねぇか」


 整備士たちが驚いたのも無理はない。グミはこの数日間、様々な経験を積み、それを理解することになった。グミが一番理解したことは、戦いとは勝たなければならない。

 勝たなければ誰も守れない。勝たなければ死が待っている。では、どうすればいいか。それは観察することだ。観察して敵を倒す方法を考える。


 今まで剣だけに行き、剣士として生きてきたグミは、スレイヤーによって殺された。魔海の魔物と戦っているグミは戦士として、剣を握り、人を守り、命を刈り取る死神となった。倒す方法を考え、倒すために手段を択ばない。


「魔物たちよ。お前たちを倒すためにどうすればいい。貴様たちはデカい。だが、私の剣は貴様たちの命を確実に刈り取ってみせる」


 真っ赤に染まった鮮血の剣士となったグミは全てを守り、全てを倒す獅子奮迅の戦いを見せる。それでも押し寄せる魔物は尽きることなく、次々とやってきた。

 いくら獅子奮迅の戦いを見せようとグミは独りでしかない。冒険者や兵士も足止めをしているが、巨大な魔物たちをすぐに倒せるものではない。パーティーを組んで数人がかりで魔物を倒しているが追いつかない。


「来たな」


 魔海の魔物たちもバカではない。鈍足なものたちばかりではない。魔海の魔物中でも小物な者たちが船へと殺到し始めた。

 スレイヤーは船から降りて、透明な魔法バリアを張る。それは船全体を覆いつくし、スレイヤーが立つ場所から一歩も船へ魔物たちを近づかせはしなかった。


「おいおい、師匠っていったい何者なんだよ?」

「知らねぇよ。でも、グミの嬢ちゃんが師匠って言うぐらいなんだ。強いんだろ」


 整備士たちが、初めてスレイヤーの凄さに気付いたころ、スレイヤーは魔物たち以外の脅威に気付いていた。


「人間族だな」


 スレイヤーに向かって剣を向ける竜人族の姿がそこにはあった。見た目こそ人間族変わらない容姿をしているが、その肌にはトカゲのような鱗と人間ではありえない耳をしていた。


「ああ、あんたは竜人族か?」

「そうだ。貴様は魔導師だろう。防御系の魔法を解くのなら貴様だけは生かしてやってもいいぞ」


 スレイヤーは目の前にいる竜人族が、高い魔力と戦闘力を持っていることを肌で感じた。バリアだけでは、防げないと剣を抜く覚悟を決めた。


「冗談だろ。自分よりも弱い奴の言うことを聞く必要があるのか?」

「何っ!人間族が舐めたことを言ってくれるものだ。ならば死ね」


 竜人族は魔族の上位種たちと変わらぬ戦闘力を持っているのだ。剣を振り上げ竜人族は、スレイヤーへと襲い掛かる。

 スレイヤーは魔法を展開したまま、双剣を抜いて竜人族の剣を受け止めた。


「ぐっ」


 竜人族の剣はスレイヤーの想像よりも重く鋭い。


「ほう、人間族が正面から我の攻撃を受け止めるか。面白い。貴様、名を名乗れ」

「おいおい、名乗ってほしかったらお前が名乗れよ」

「ふっ、どこまでもふてぶてしい奴だ。よかろう。我は竜人族が八竜剣の一柱、バジリスクなり」

「冒険者スレイだ」


 名乗り合ったことで、仕切り直すように互いに剣を構える。


「いざ」

「尋常に」

「「勝負」」


 二人の声が重なり、二者は剣をぶつけ合う。一撃の重さはバジリスク。手数はスレイヤーという。両者は互いの力の均衡に驚きながらも、バジリスクは笑みを作った。


「ここまで我と打ち合える人間族いたのか。誇れよ人間」


 息も乱さずバシリスクは小手調べも終わったとばかりに剣を片手で振り回す。


「我々竜人族こそが最強だ。それをわからせてやろう」


 バジリスクの体から赤い湯気が上がり、湯気は段々とバジリスクの身体にまとわりつく光となってかたちどっていく。


竜装武ドラゴンソウブ、これを見せる人間族は貴様が初めてだ。誇ってよいぞ」


 明らかに戦闘力が跳ね上がったバジリスクにスレイヤーはバリアを解くことを考える。


「うるせぇよ」


 スレイヤーは迫る戦闘に口元が緩みそうになっていた。


いつも読んで頂きありがとうございます。

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