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間話 勇者と竜人

すみません。数日休みを頂きました。


 今回の休みに、「カット&ペーストでこの世界を生きていく」を書かれている咲夜先生に会いに行ってきました。

 脳出血という突然の不幸に遭われ、左半身不随という境遇にされされながらも、書籍化作業や読者の皆様を楽しませるために執筆されている姿は感服致しました。

 不便な片手でパソコンを打たれているため、誤字や脱字が生じてしまうみたいです。そんな中で、心無い言葉をかけられる人もおられるようで、本当に残念に思います。


咲夜先生を見守ると共に、心ある言葉や思いを持って感想や一言を頂ければ嬉しいですね。


長々と申し訳ありませんでした。

 ドラゴンキャッスルに降り立った勇者パーティーは、いつもと違うメンバーを代えて、警戒しながら進行を開始していた。


「ツララさんでいいのかな?」


 勇者シュウは魔法使いエティカが連れてきた冒険者ツララに話しかけていた。


「好きに呼んで頂いて構いません」


 シュウの問いかけに、ツララは素っ気なく言葉を返すだけでここにいるのも嫌そうな表情をしていた。


「シュウ、いくらツララが綺麗だからって、声をかけても無駄よ。ツララにはスレイっていう心に決めた人がいるんだからね」

「別に僕は」


 エティカの言葉に聞き耳を立ててていた冒険者や兵士も落胆の表情で肩を落とす。


「シュウには王女様がいるでしょ」

「ナターシャ様とは別に」


 シュウは慌てて否定するが、エティカは面白くなさそうにシュウから離れた。


「ツララ、いこ」


 エティカはツララの手を引いて、シュウとの距離を空けた。間に立たされているダルデは深くため息を吐いた。そんなやりとりをしながら進んでいくと、貝殻で作られた街並みが見えてきた。色とりどりの貝で作られた建物は美しく。魔族が作った物とは思えない光景に勇者パーティーは言葉を失った。


「綺麗」


 誰が呟いたのかわからないが、勇者たちと共についてきた。兵士や冒険者も感嘆の声を漏らす。だが、芸術を理解する者が入れば、芸術を理解しない者もいる。


「はっ、魔族が作った建物なんて気色悪いね」


 サイモンが発した言葉に、綺麗だと思った者たちも考えを改める。自分たちは魔族を倒しにきたのだ。ここにいるのも魔族なのだ。魅力されていた自分たちの心を奮い立たせるように気持ちを入れ替えた。


「行こう」


 真っ先に街へ向かって歩みを進めたのは勇者シュウだった。シュウは剣に手をかけ、ドラゴンキャッスルへと足を踏み入れる。

 街の中に人影はなく、警戒していた勇者たちは肩透かしを食らったように気を抜いた。


「何者だ」


 そんなシュウたちの後ろから声をかける者がいた。一団が見たのはトカゲのような顔と鱗を持つ竜人族の戦士だった。彼はその身に鎧を纏い、剣と盾を構えていた。


「俺の名前はシュウ・アカツキ。人間族の勇者だ。魔族の王を滅ぼすための旅をしている。あなたが竜人族なら貴殿が守るオーブを明け渡してほしい。そうすればこの美しい街を壊す戦いもしなくていい」


 一団を代表してシュウが竜人族に対して、自分たちの存在と目的を伝えた。シュウとしても現れたのが竜人族だとすぐに分かったので、戦わなくていいなら戦いたくないと思った。

 竜人族は、魔族でも人族でもない。精霊族に近い存在なのだ。精霊族が人間族と共存したように、竜人族は魔族と同盟したに過ぎない。

 何よりも竜人族の特徴として魔族が一目置く戦闘力を持っているということだ。魔族の中で肉体最強はオーガ族だと言われている。また、纏う魔力は魔族の中でも最強と言われる夜族なのだが、竜人族はどちらの種族にも匹敵すると言われている。


「勝手な物言いだな」


 種族の違いがあったとしても、竜人族が落胆した表情と、雰囲気になったことが勇者にも伝わってくる。


「戦いを望むのか?」

「自分たちがいかに傲慢なことを言っているのか、わかっているのか?」


 シュウの物言いに、落胆から呆れたような口調になり、竜人族は剣を構えた。


「何よりも貴様らごときが我に勝てると思っているのか?ドラゴンの末裔である竜人を舐めるなよ」

「回避!!!」


 竜人が構えた瞬間、シュウは叫んでいた。シュウの叫び何を意味するのか理解できなかったものは、すぐにこの世を去ることにル。探索についてきた冒険者や兵士の頭部が胴体と離れていく。

 夥しい血の噴水が上がり、声に反応した数名は屈むことで何とか回避できた。しかし、竜人の動きは人間族が目で追える速度を遥かに超えていた。

 冒険者でも上級、兵士に至っては上級仕官ですら、一部の超越者たち以外動きを見極めることができなかった。

 この中で一番の戦力であるはずのシュウですら、叫ぶことはできても竜人の動きに反応できていないのだ。


「人間族の勇者よ。教えてくれぬか?どうして人間族とはそうも傲慢でいられる?どうして自分たちが強者だと考える?お前たちは弱い。数が多いだけのただの弱者だ」


 問いかけながらも、残った人間族を殺していく竜人に勇者もやっと動くことができた。


「やめろ!どうして?どうしてこんなことをするんだ」

「どうして?お前は家に入ってきた害虫に、理由を説明しながら殺すのか?」


 害虫という言葉に勇者も我慢の限界にきたのか、剣に魔法を纏わせる。


「魔法剣 風」


 勇者はラミアを倒したことで、魔法を発動する。これまでの雷や光よりも体が軽くなり、動きも速くなる。竜人の動きについていくことができる。


「スピードは我と変わらぬか」


 竜人は止めに来た勇者の剣を受け流し、殺戮を続けた。残っているのは勇者パーティーと数名の冒険者だけとなっていた。


「とんでもねぇ奴だ」


 生き残っているサイモンは神官の後ろに隠れるように身を屈め、竜人の脅威に怯えていた。


「エティカ」

「無理よ。私の魔法が当たる前に避けられる。範囲魔法なら当たるかもしれないけど。周りにいる人たちも巻き込むわ」


 神官の言葉にエティカも爪を噛み、歯がゆさを感じていた。


「躊躇う必要がわかりませんね。同じ死ぬなら、犠牲になって死んでもらった方が彼らの名誉になると思いますよ」


 竜人を追いかける勇者。何もできずに見守る魔法使い。少しでも息のある者たちを看病する神官。彼らの動きや会話を聞いて、ツララは呆れていた。

 とんだ甘ちゃんであり、どうしてこんな相手に炎蛇や魔狼は負けたのか。ツララは知らない。彼らを支えていた人物たちの存在を。彼らが居たからこそ勇者たちは前回の戦いに勝利することができたのだ。

 だが、もう彼らはいない。それでも勇者たちは戦わなければならない。


「ツララなら、なんとかできるってこと?」


 ツララの呟きに、エティカは攻めるような視線を向ける。


「もちろんです」


 魔族であるツララの動体視力には竜人がハッキリととらえられていた。そして、死体の山が出来上がった場所に竜人が移動した瞬間、ツララは世界を氷に埋め尽くした。


「えっ!」

「極大魔法、銀世界」


 エティカの驚きに応えるように、ツララは竜人も死体も全てを氷の世界へと閉ざしてしまった。


「スゴッ」


 驚くエティカにツララはなんでもないと、凍らせた竜人に近づいていく。


「滅びを望みますか?それとも」


 その魔法と同様にツララの目は氷のように冷たく、竜人に問いかけた。


「殺せ」


 竜人は自らの敗北を認め、ツララに死を要求した。


「貴様ら人間など。全て滅んでしまえばいい。貴様らの心は腐っている。我々の味わった屈辱。それは呪いとなって貴様らに降りかかるだろう」


 遺言のように勇者たちを睨みつけ呪いの言葉を告げた竜人の身体をツララは氷と共に砕け散る。生き残った者たちはその光景をただ黙ってみていることしかできなかった。


 

 

いつも読んで頂きありがとうございます。

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