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間話 炎蛇ラミア

 死天王であるラミアが致命傷を受け、意識不明の重体で運び込まれたのは三日前のことだった。ミアラを失い眷族たちも傷ついた。彼女たちが生き残ったのは、スレイヤーが身を挺して守ってくれたからだ。


「スレイヤー兄さん」


 ライラがスレイヤーを想って呟いても、スレイヤーが戻ってくることはなかった。ライラのはラミアを含めた眷属たちの回復を行い。ラミアが目覚めたのは治療から三日後のことだった。


「心配をかけたな」


 ラミアはライラの頭を撫でて慈しむ。ラミアは命の危機に晒されたことで、自身の魔力増幅を感じていた。


「いるのだろ……夜王」


 ラミアはベッドの寝ころんだ姿勢のままで、目覚めてすぐに夜王の名を呼んだ。


「炎蛇よ。よくぞ生きて戻った」

「済まぬな。勇者を討つことはできなかった。おめおめと逃げ帰ってきてしまった」


 死天王筆頭である夜王はラミアを引き上げてくれた恩人である。その正体は何千年も生きる大魔族なのだが、その姿を知る者はいない。ラミアの目の前にいるのも眷属である蝙蝠が話をしている。


「何を言う、炎蛇が無事で何よりだ。我はお前に期待しているのだ。お前の執念深さは我も舌を巻く」

「私の気持ちがわかるのか?」

「勇者を追うのであろう?」

「もちろんだ。この屈辱晴らしてくれよう」

「そういうと思っておった」


 夜王はラミアの性格を熟知している。


「魔王様には、すでに許可を得ておる。貴殿は今日より死天王の座を解任する。だが、暴食の名を冠する貴族の地位はそのままである。これ以降、貴殿が何をしようと魔王様の預かり知らぬこととする」

「何から何まですまぬな」

「なに、次こそ勇者を倒して魔王として戻ってくることを期待しておるぞ」


 夜王の言葉には仲間としての温かみがあった。


「勇者は我が討つ」

「うむ。任せた」


 夜王の使者である蝙蝠が姿を消すと、ライラは心配そうにラミアを見た。


「聞いていたな。私は死天王の座を降りた。これより勇者を討つため修羅となる」

「ついてまいります」


 ライラが片膝をついてラミアに忠誠を誓う。眷属である彼女はすでに忠誠を誓っているのだ。今回の誓いは命を懸けて戦いに挑む覚悟が込められていた。


「奴のカタキも討たねばな」


 ラミアとライラの間にはスレイヤーの顔が浮かんでいた。三人の眷属たちが動けるようになってから、蛇姫たちは魔王城を後にした。

 目標は勇者であり、彼女たちは勇者を討つまでは帰らぬ決死の覚悟を決めて旅立った。


 入れ替わるように四日目の朝、スレイヤーは獣人族の少女リサを連れて魔王城へと戻ってきていた。


「様子がおかしい」


 ラミア専用の食堂には見知らぬ魔族がいた。


「すまない。ここはラミア様専用の食堂ではなかったか?」

「うん?なんだお前は?ここは昨日からオーガの姫様。瑠璃姫様の根城だ。関係ない奴は出ていけ」

「どういうことだ?ラミア様はどこに行った」


 スレイヤーは粗暴な言い回しをするオーガに隠すことない覇気と怒気をぶつける。食堂にいたオーガたちは一瞬で意識を失った。

 スレイヤーは八つ当たりを終えて頭を働かせる。リョウボの顔を思い出し、オークを探せば魔王城を掃除する家政婦がいた。


「リョウボさん」

「スレイヤー!あんた生きてたのかい」

「はい。なんとか逃げることができまして」

「よかったね」


 リョウボさんはスレイヤーが生きていたことに心から喜んで涙を流してくれた。スレイヤーはリョウボさんに感謝を伝え、ラミアたちに何があったのか知ることになる。


「ラミア様たちが帰ってきたとき酷いケガでね。唯一ライラ様だけが無事で懸命に看護していたよ。私ももちろん手伝ったけどね。でも、ラミア様が目を覚ますと、夜王様の使者が着て、ラミア様を死天王から解任したんだよ」

「ラミア様はどこに?」

「アモン領さ」

「アモン領?」

「勇者はアモン領へ移動したって夜王様から教えてもらったらしい」


 スレイヤーが帰るよりも前にラミアは旅立ってしまった。砂漠に覆われたアモン領へ。人と魔族が大量に死んでいる。地獄のような場所へ。

 

 スレイヤーが思いをはせている頃。ラミアたちは魔族の軍団が天幕を張る陣営へと入っていく。


「炎蛇様がどうしてこちらへ」

「タマモだな。魔狼殿はおられるか?」

「はい。こちらへ」


 天幕の奥にあるベッドには体を横たえる魔狼の姿があった。


「魔狼殿は?」

「よう、炎蛇殿。ちゃんと俺は生きておりますよ」


 眠っていると思っていた魔狼は片目をあけて炎蛇に応える。


「このような姿で申し訳ありませんね」


 魔狼が起きないことにラミアが言及することはなかった。


「いや、こちらこそ主の領地に邪魔することすまないと思う」

「いやいや、炎蛇殿が来てくれたこと助かります」


 魔狼は素直に炎蛇の助力を喜んだ。


「勇者、我が討ってもいいか?」

「はは、ダメだと言いたいところですが、お願いします。露払いはこちらでしましょう」


 魔狼の体はあまりいい状態ではないのだろう。炎蛇の申し出を受け入れた。こうして炎蛇と魔狼の同盟が結ばれた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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