間話 スライムのスラ
スライムは魔物の中で最弱と言われている。本能のまま生きることしかできるず、その本能も食べることに特化している。
戦うと言っても食べるために飛びかかるしかできない。そのため返り討ちに合って、殺されるスライムがほとんどだ。
スライムは自然発生するように生まれてくるので、死んだスライムのことなど誰も気にしないだろう。
だが、一匹のスライムは状況が違っていた。たくさんのビッククロビカリに囲まれ今にも殺されそうだったスライム、一人の魔人族に命を救われる。
救われたスライムはすぐに本能からビッククロビカリを食した。満たされた食欲の後に魔人族が傍によってきた。
「俺とお前は似てるな」
魔族の呟きの意味を理解できなかった。だが、魔族は固いパンを差し出してきた。ビッククロビカリだけでも満足できたが、固いパンは美味しかった。
「はっ、スライムをペットにするのも悪くないな。お前を我が従者とする」
魔法が唱えられた。魔族から何か暖かいモノが伝わってきて、それが気持ちよいので暖かいモノに身を委ねた。
「どうやら成功したらしいな。スライムを使役するなんて聞いたこともないが、今の俺には丁度いいだろ。今日からお前はスラだ。そして、俺はスレイヤー。よろしく頼む」
スラと名を付けられ、差し出された手に飛び乗る。
「スラの身体は冷たくて気持ちいな」
それからは幸せな日々だった。魔族を追ってきたオークを撃退して丸々一匹のオークを食べた。力が漲るのを感じた。それからは強力な魔物や魔族をたくさん食べた。
地下迷宮では食事は事欠かず、スレイヤーが持ってきてくれる食事は魔力の高い物が多かった。
「キュ」
自らの魔力が高まり、強くなった自分に付いてくる者たちがいた。同じスライムやビッククロビカリなど、日に日に後ろを付いてくる魔物は増えていった。
「随分仲間が増えたな」
たまに来るスレイヤーが自分のマスターであることが理解できるようになった。魔力が高まるにつれて、色々なことが頭の流れてくる。
後ろをついてくる魔物たちは自分に怯えているのだ。怯えて食べられないように従っている。
「スラにそんな能力があるなんて知らなかったぞ」
マスターが頭を撫でてくれる。暖かくて心地よい。色んなことがわかるようになって分かったことがある。戦うときに飛びかかるだけじゃダメだ。もっと効率よく戦う方法を学ばなければならない。
それからは他の魔物や魔族がどうやって戦うのか、どんなことができるのか見るようになった。ビッククロビカリはスライムと変わらない。
食事をしようと飛びかかる。ただ、スライムと違うのは集団で行動しているということだ。他の魔族を見れば魔法を使っていた。
試しに何かしてみようと魔法を念じてみれば、炎を出すことができた。自分にも魔法が使える。スラはもっと強くなれると喜んだ。
「うん?なんだか、この間来た時よりも瑞々しいな」
マスターが自分に構ってくれる。嬉しい。しかも強くなるにつれてマスターがたくさん褒めてくれる。嬉しい。もっと強くなろう。もっと褒めてもらおう。
そうやって毎日に強くなるために頑張っていた。しばらくマスターの姿を見ていない。どうして会いに来てくれないんだろう。寂しい。
「スラ、いるか?」
マスターの声だ。マスターが会いに来てくれた。
「キュ」
「スラ、お前の力を貸してほしい。一緒に来てくれないか?」
マスターから力を貸してほしいと言われた。嬉しい。自分は強くなった。マスターが助けてくれたときよりも強くなった。だから、マスターのために自分は戦う。嬉しい。
「キュ」
「来てくれるのか、ありがとう」
マスターが用意してくれた箱はピッタリと体が収まって心地いい。
「リョウボさん行ってきます」
「ああ、ラミア様を頼んだよ」
水筒の中から聞こえてきた声でどこかにいくのはわかった。言葉も理解できる。マスターを助けるんだ。頑張ろう。
スラはスライヤーのために力を使うことを誓っていた。それはマスターであるスレイヤーのことが大好きだから。だが、スラが思っている以上にスラの能力は異常なモノだった。
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