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勇者の価値

この話で一章が終わりになります。


次話から閑話を挟み、第二章 アモン領 をお送りします。

 ツララが魔王城に来たことで、ライラに質問攻めにされた。ツララも同じだったようだが、何も語っていないようだ。

 スレイヤーも眷属を除く配下の中では、トップになりつつあった。なりつつであり、決してトップではない。


「ちょっとあんた。わかってんだろうね」


 スレイヤーは食堂の端っこで、デカい包丁を持ったオークに凄まれている。スレイヤーが唯一餌としなかったオーク。彼女はオーククイーンのリョウボさんという。


「リョウボさん。勘弁してくださいよ」

「あんたが私の仲間を殺したことは咎めやしないよ。魔族は力が全てだからね。負ける奴が悪いんだ。だけどね。配下のトップは譲れないねぇ」


 リョウボさんはオークの中でキングと並ぶクイーンであり、オークの最高位に属している。単なる戦闘ならば、すでにスレイヤーの方が上ではあるが、リョウボさんの雰囲気に逆らってはいけないと思ってしまう。リョウボさんにオーラみたいなものをスレイヤーは感じていた。


「もちろんです。配下のトップはリョウボさんですよ」

「ふん。本当にわかってんのかね。最近好きにやり過ぎじゃないかい?」

「そんなことはありませんよ。俺の目的はラミア様じゃありませんから」

 

 スレイヤーはボソりと呟くように発した言葉はリョウボさんには届いていないようだった。


「何か言ったかい?」

「いえ、リョウボさんに逆らう気はありません」

「それならいいけどね」


 リョウボさんはフリルのついたエプロン姿でデカイ包丁を肩に担ぎ、スレイヤーを睨みつける。スレイヤーもどうしたものかと困っていると、ララがスレイヤーを呼びに来た。


「にぃにぃ」

「ララ様、こんなところに何用ですか?」


 ララの姿を見たリョウボさんは態度をコロリと変えて、にこやかにララを出迎える。


「リョウボさん。私はスレイヤーにぃにぃに用があります。お邪魔でしたか?」

「とんでもない。こんな使えない男どこにでもお連れ下さいな。配下たちは私が責任を持って監督致します」

「はい。リョウボさんは頼りになりますね」

「もちろんです」


 ララに頼りにしていると言われて、リョウボは上機嫌で仕事へと戻っていった。


「助かったよ。ララ」

「えっ?私何かしましたか?」

「いや、分かってないならいいさ。それより用事があったんじゃないか?」

「そうなんです。ラミア母様が緊急会議を開くから、にぃにぃを呼んできてと言われました」

「そうか、すぐに行くよ」


 緊急会議はスレイヤーがラミアの配下になってから初めてのことだ。最近は食事に困ることもなく、ラミアの機嫌もよかったはずだが、何があったのだろうか。


「ララは何か聞いてるか?」


 ララは首を横に振る。スレイヤーはララの頭を撫でて、ラミアの下へと歩き出した。


「スレイヤー、参りました」

「入れ」


 ラミアに許可をもらい、部屋の中に入ると、すでにライダー、ライラ、ラピスも席に座っていた。いつもは寝室として使われているラミアの部屋だが、その横には会議室として使う部屋がある。

 円卓のテーブルが置かれ、眷属たちが集うのだ。


「これで全員だな」


 ラミアと四姉妹。そして、スレイヤーを交えた六人が席に着く。


「早速だが、本題に入る」


 ラミアの合図でライラが席を立ち話を始めた。

 

「我らの敵、勇者が誕生しました」

「勇者か……」


 ライラの言葉にスレイヤーが反応する。勇者は魔王の天敵であり、魔族にとって倒すべき最大の敵である。そのため勇者が生まれれば、こうして魔族の間で情報を共有し、勇者を倒すことができたなら、次期魔王とも言われている。


「それで?今回はどこから来るんだ?」


 魔族領と人間領が接している場所は全部で三か所ある。


 ラミア様が領主を務める、ベルゼブブ領。

 魔海と呼ばれる人間族と魔族を隔てる巨大な海がある、レヴィアタン領。

 砂漠に覆われた、アモン領。


 三つの領は、それぞれ七大貴族が管理しており、人間族の侵入を阻むため強力な魔族が徘徊している。


「「「……」」」


 スレイヤーの質問に、部屋の中が緊張に包まれる。


「今回はアモン領からだそうです」


 ライラの言葉を聞いて、スレイヤーだけでなくライダー、ララ、ラピスも深く息を吐いた。どうやらラミアとライラしか、この情報を知らなかったらしい。


「そうか、なら強欲の魔狼ベルセルク・K・アモンに権利があるということか」


 ライダーの言葉にそれぞれ思い思いの表情をする。だが、ラミアだけが、スレイヤーを見つめ、スレイヤーはラミアの視線に気づいていた。


「スレイヤー、お前をここに呼んだ意味をわかっているな」


 眷属だけしかいない。場所に配下である者がいる意味、スレイヤーは気づいていた。


「偵察してくればよいのでしょうか?」

「そうだ」

「母様、ならば私が」


 スレイヤーの答えにラミアは満足そうに頷いた。しかし、ライダーが割り込むように自らが名乗りです。


「お前はダメだ。お前は血気盛んであり、勇者を見れば戦ってしまう」

「それの何がいけないですか?」


 ライダーの質問にラミアは呆れ、スレイヤーに説明するように求めた。


「あくまで魔狼領であり、眷属の者がいるだけで問題だ。それが勇者と戦えば、ルールを破ったことになる。魔族はルールが大切だ。お前はそれを守れない」


 スレイヤーの説明に、ライダーは言葉を失い席に着いた。


「やってくれるな」

「かしこまりました」


 スレイヤーは燕尾服に似合うよう、礼儀正しく綺麗に頭を下げた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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