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おやすみゲドー様

 俺は謁見の間で、玉座に座っている。


 一人だ。


 マホももういない。


 ゲドー大陸は数千年前から変わらず、俺の支配下にある。

 このゲドー王国も繁栄している。


 この大陸の魔法技術は衰退した。

 元々、衰退の兆しはあったが、最強の大魔法使いたるこの俺も別段それに歯止めをかけようとはしなかったからな。


 代わりに科学技術とやらが、徐々に発展している。

 魔力を使わずとも魔法のような現象を起こせる技術のことだ。


 だが魔法使いたるこの俺は、そんな科学技術に関わる気はない。

 ゆえに発展についても好きにさせている。



 愚民どもの営みは変わらない。

 いくつもの新しい国が興り、そのいくつかが潰れたが、大して興味もない。


 この国の外務も内務も、それぞれ担当する大臣が上手く回しているらしい。

 名前すら覚えておらんが、まあどうでもいい。



 俺は大陸の支配者として、そして不老不死の生ける伝説として、変わらず君臨している。


 わざわざ王城まで、俺に会いに来るような物好きはいない。

 当然だ。

 どいつもこいつも、触らぬ神に祟りなしという言葉の意味を知っているのだ。


 だから俺は、今日も玉座で過ごす。

 誰もいない謁見の間で過ごす。


 時折バルコニーに出て、城下町を睥睨することもある。

 愚民の群れが見えるだけだ。


 思えばもう長いこと、言葉を発していない。

 喋る相手がいないからな。


「……」


 俺はふと思い立って、城の裏手まで赴いた。


 そこは小さな墓地になっている。

 俺以外は立ち入り禁止の墓地だ。


 俺は順番に墓石を見渡す。


 オッヒー。


 キシリー。


 シーリィ。


 エルル。


 マホ。


 5つの墓石だ。


 ヒメールの墓石はない。

 奴の骨は別途、国立墓地に埋めてある。


 俺は墓石に囲まれるように、緩慢な動作でその場に座り込んだ。


 眠いな。

 まだ昼間だというのに、妙に眠い。


 まあよかろう。

 昼寝をするには悪くない陽気だ。


 ふと声が聞こえた気がした。


 何だ、しもべどもはすぐ側にいたのか。


『ゲドー様、お疲れ様ですわ』


 誰にものを言っている、オッヒー。

 俺は疲れてなどおらん。


『ゲドー様は偉大な方だ』


 ふん、無論だ。

 キシリーはなかなかわかっている。


『ゲドー様、ゆっくり休んでください』


 シーリィの分際で、生意気を言いおって。


『ゲドー様はさいきょーだよー!』


 エルルは相変わらずやかましい奴だ。

 だがその通りだ。


『ゲドー様、ずっと一緒なのです』


 当然だ、マホ。

 貴様は永遠に俺のものなのだからな。


 さて、少しばかり昼寝でもするか。

 しもべに囲まれながら眠るのもいい。


 いささか身体の動きが鈍い気がする。

 関節があちこち錆びついているかのようだ。


 だが次に起きたときには治っていることだろう。


 俺はゆっくりと目を閉じた。

 

完結しました。

最後までお読みいただき本当にありがとうございます。



「暗殺100人できるかな 第二部」の連載を開始しています。

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よろしければこちらもお楽しみください。

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