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ゲドー様の必殺キロトン

 力が溢れる。

 熱い奔流が俺の身体を駆け巡る。


 枯れ木のようだった俺の身体に、生気が戻ってくる。


「おおおおお……!」


 俺は歓喜した。


 これだ。

 この感覚だ。


 これこそ邪悪な大魔法使いと謳われた俺だ。

 500年前のゲドー様だ。


 石畳を踏みしめる。

 よろめかない。


 瓦礫を受けて頭にできた傷が塞がっている。

 当然だ。

 500年以上を生きたこのゲドー様は、限りなく不老不死の境地に近い存在なのだ。


「やってくれたなゴミ竜が……。一撃で消し飛べ」


 俺は吠え猛っている翼竜に向けて手を突き出す。


「メガトン!」


 ……。

 しーん。


 あれ?


「メガトン!」


 あれ?


「ゲドー様。魔力が底を尽いているのに、魔法が使えるはずがないのです」


 あああああ!

 くそがあああ。


 いくら封印が解けても、魔力が空っぽでは何もできない。

 そりゃあそうだ。

 魔法使いというのはそういう存在だ。


「ぐぼふぉお……!」


 翼竜が尻尾を振り回して、俺を吹き飛ばす。

 だから痛いんだよくそがあああ!


 しかし致命傷にはならない。

 1段階とはいえ封印が解除されているおかげだ。


 身体には間違いなく力が漲っている。

 あとは魔力さえあれば……。


「ゲドー様」


 マホが俺の手を取る。


「邪魔だ退けゴミが」

「いえ」


 ……ん?


 暖かいものがマホの手を伝わって、俺の身体に流れ込んでくる。

 これは……魔力か?


「お前、魔力を他人に分け与えることができるのか?」

「私だけの特技なのです」


 そんな魔法、500年以上を生きた俺でさえも知らない。

 だがまあそんなことはどうでもいい。

 魔力さえあればこっちのものだ。


 と、マホが手を離す。


「おい、こんな少量では足りないぞ。もっとよこせ」

「分け与えすぎると翼竜を倒した後も暴れそうなので、それでどうにかしてくださいです」


 ちゃっかりしてやがる。

 こんなスズメの涙ほどの魔力ではメガトンさえ使えない。


 下位の爆発魔法であるキロトンなら、ぎりぎり一回はいけるだろう。

 だがまともに撃っても翼竜を倒すには至るまい。

 あの手のデカブツはしぶといのだ。


 しかしこのゲドー様に、不可能の文字はない。

 俺は最強だ。


 俺は手のひらを翼竜の頭に向ける。

 狙い澄ます。


 翼竜が俺のほうを向く。

 動きが一瞬止まったところを狙う。


 今だ。


「キロトン――!」


 翼竜の頭だけが、ピンポイントで爆散した。

 地響きを立てて巨体が倒れる。


 爆発魔法は範囲を広げれば威力が低下し、逆に範囲を絞って圧縮すれば威力が上がる。

 俺ほどの大魔法使いともなれば、範囲の調整など朝飯前だ。


 頭部を失った翼竜の巨体はぴくりとも動かない。

 後処理は兵士どもに任せればいいだろう。


「ふはははは! この俺にかかればこんなものだ」

「あれほど少量の魔力で翼竜を倒すなんて、すごいのです」

「倒せると思ってなかったのかよ」


 マホが無表情でぱたぱたと手を振る。


「一撃とは思ってなかったのです」

「まあな。このゲドー様以外には無理な芸当だろうな。はーっはっはっは!」

「さすがなのです」

「ふはーっはっはっは! もっと讃えろ」


 だがしかし、成り行きとはいえこの国に力を貸してしまった。

 胸糞悪い。

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