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猫みたいな感じ

 俺とマホは謁見の間に呼び出されていた。


「勇敢な騎士や兵士と力を合わせ、我が国の危機を救ってくれたそうじゃな」


 国王が玉座でふんぞり返っている。

 騎士と兵士は、何の役にも立っていなかったがな。


「改めて名を聞かせてくれんかの」

「マンマール王国の宮廷魔法使い、マホ・ツカーリエなのです」


 マホが礼儀作法に則って、片膝をつく。


「おお、宮廷魔法使い殿であったか。よくぞやってくれた、感謝する」


 次に国王が俺を見る。

 俺は仁王立ちのまま鼻を鳴らした。


「大魔法使いゲドー様だ」

「はて、ゲドー……? 500年前に、好き勝手に大陸を荒らし回った邪悪な大魔法使いと同じ名じゃな」

「本人だ」

「はっ?」


 俺の回答に、謁見の間にいる面々がぽかんとする。


「500年前の邪悪な大魔法使い本人なのです」

「なっ……」


 ざわざわ。


「本人? 何を馬鹿な……」

「いやしかし、剣すら通じなかった化物を一撃で倒したと……」

「だが500年前だぞ……」


 国王が咳払いをする。


「あー。邪悪な、ごほん、伝説の大魔法使いゲドー? 本当に?」

「様をつけろよデコスケ野郎」

「あー……。ゲドー様?」

「そうだ」

「ずっとマンマール城に封印されていたのですが、復活したのです」

「何と……!」


 ざわざわ。


「あー、マホ殿。それが本当だとして、貴殿らは何を目的に?」

「魔王を倒しに行く道中なのです」

「おお!」


 ざわざわざわ。

 こいつらうぜえな。


「先程、大臣の部屋から魔力を集める小瓶とやらが2、3個見つかったと報告があったのじゃ」

「2、3個なのです?」

「左様。魔法使い殺人事件の被害者は何十人に登るというのに、少なすぎじゃな」

「ふん。集めた魔力の大半は、とっくに魔王に献上済みということだろうな」


 ざわざわざわ。


 腹が膨れれば、そのうち魔王も動き出すだろう。

 俺にとっては大した問題ではないが、こいつらは困るだろうな。


「復活した魔王については、我らもどうにかせねばと思っておったところじゃ」

「伝説の大魔法使いゲドー様と私が、どうにかするのです」

「うむう。それは心強いが、我らに何かできることはないかの?」


 ないな。

 騎士を同行させるとか言われても邪魔なだけだ。


「大臣が魔物に成り代わっていたことで、国政に影響が出ているはずなのです。王様におかれては、それをどうにかするのと、あと壊れた中庭の修復などで忙しいはずなのです」

「それはそうじゃがな……」


 マホが俺の意を汲んで、やんわり断る。


「ではお言葉に甘えて、ゆっくり休める一晩の宿と、多少の旅費を提供してほしいのです」

「それはもちろんじゃ。今夜は我が城でゆっくり休むがよい。少ないが路銀も用意させよう」

「ありがとうなのです」


 国王は残念そうだがどこかほっとしているようにも見える。

 まあ本音を言えば、国王も魔王退治になど関わりたくないはずだ。

 どこかの誰かが魔王を倒してくれるなら、それが一番いいと考えているだろう。


 寛大な俺はその考え方を理解してやる。

 弱者というのはそうしないと生きていけないものだからな。

 絶対的強者であるこのゲドー様とは違うのだ。


 だがその代わり、弱者は強者に搾取されることを許容せねばならない。

 それが弱者に甘んじる対価だ。


「ではさっそく飯と風呂を用意させろ」



◆ ◆ ◆



 豪華な長テーブルに豪華な料理が山のように並べてある。

 座っているのは俺とマホだけだ。


「国王の奴、ディナーに同席しないとは無礼だな」

「たぶんゲドー様の強者オーラに圧倒されて、近づきがたいのです」

「ふむ。そういうことなら勘弁してやろう」


 俺は大量の肉を、ムッシャムッシャと食らった。

 王宮の料理だけあって味はいい。


 俺は満足した。


 次に風呂だ。


 大浴場だ。

 これもさすが王宮だな。


 俺は全裸で堂々と佇む。

 数人の侍女が代わる代わる、俺の逞しい身体を洗う。


 苦しゅうない。

 隅々まで綺麗にしろ。


 身体が綺麗になった後は湯船に浸かる。

 大浴場を独占だ。

 大層いい気分だ。


 やはりこのゲドー様にとって風呂は必要不可欠だな。



◆ ◆ ◆



 寝室に戻った。

 もちろん豪華な個室だ。


 まあ大臣の悪事を暴いたうえに、成り代わっていた魔物を倒して国を救ったわけだからな。

 この程度は当然と言える。


 感謝されるのは虫酸が走るがな。


 そんなことを考えていたら扉がノックされた。


「失せろ」


 俺はもうベッドに入っている。

 今から寝るのだ。


 俺の言葉を無視して扉が開いた。

 マホが入ってきた。

 色気のない寝間着姿だ。


「お邪魔するのです」

「俺の安眠の邪魔をするとはいい度胸だ」

「ゲドー様はいつ寝ても安眠なのです」


 まあその通りだ。


 マホはちょこんと椅子に腰掛けた。


「ゲドー様」

「何だ」

「魔王四天王は残り2人なのです」

「この俺にかかれば何人だろうと同じことだ」

「頼もしいのです」


 当然だ。

 この大陸において、このゲドー様以上に頼もしい存在などいるわけがない。


「城にいる侍女の皆さんと、話をしていたのです」

「ほう」

「マンマールの魔法使いがゴブリンを倒して村を救った話や、ダークエルフを倒してエルフ族を救った話が、噂程度に広まっているのです」

「ちっ」


 嫌な話を聞いた。

 恨み積もるマンマール王国の評判が、俺たちのせいで上がっているとはな。

 ヒメールやマホにしてみれば狙い通りだろうが。


「ゲドー様。ありがとうなのです」

「不本意だ」

「全てはゲドー様が強いおかげなのです」

「まあな」


 まあな。

 まあな。


 仕方あるまい。

 その通りだから許してやるか。


 ふとマホがじーっと俺を見つめる。

 こいつたまに俺のことを見つめているよな。

 何なんだ。


「おい、マホ」

「はいです」

「お前、もしかして俺に惚れているのか?」


 気持ちはわかる。


 俺は強いし逞しい。

 この大陸で最強の存在だ。


 女が俺に惚れるのは自然の摂理と言えるだろう。


「だがな、マホ。お前はまだ俺から見れば子供だ」

「何の話をしているのです」

「しかし気持ちはわからんでもない。俺は寛大だから、今夜は俺の隣で寝ることを許してやる」


 マホは半眼で俺を見つめてから、ため息をついてベッドに潜り込んできた。


「しかし、やはり邪魔だな」

「許してやると言いながら酷い言い草なのです」


 マホは俺の腕の下で丸くなった。

 相変わらずサイズ的に収まりがいい。


 ちっ、まあいい。

 俺の安眠はこの程度で邪魔されるほどやわではないからな。


「ゲドー様、おやすみです」

「早く寝ろ」


 こいつ体温高いな。

 ベッドの中で猫でも抱いている気分だ。


 すぐに眠気がやってきたので寝た。

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