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奴隷商はどこから奴隷を調達するのか

 俺は宿でマホの分も合わせて2部屋取ってやった。

 有り難く思え。


 宿の1階は食堂になっている。

 俺は一番豪華なディナーを注文した。


 そう。

 もうディナーの時間だ。

 日没は過ぎている。


「マホの奴、この俺を待たせるとはいい度胸だ」


 奴隷を物色しに行ったマホが戻ってこない。


 俺は日没までには宿に来いと言った。

 俺の言葉を違えるとは万死に値する。


 俺は豪華な肉とか野菜とかパンとかスープを口に放り込む。

 大した食事ではないが、まあ宿のレベルのわりにはがんばっているほうだろう。

 許してやる。


「お客様、どなたかとお待ち合わせですかい?」


 宿の主人が話しかけてくる。


「マホだ」

「お連れの方ですかい?」

「そうだ」

「お連れの方はお一人で?」

「だったら何だと言うんだ」


 俺は肉を齧りながら話をする。


「いえね。この町は、他所の国の方が、日が落ちてからもお一人で出歩くにはちいとばかし物騒でしてね」

「あん?」

「ご存知の通り、この町は奴隷市が盛んでして」

「結論から言え」


 俺が睨みつけると、宿の主人は慌てて答える。


「いえいえ。余所者が一人でいると、奴隷商にさらわれることがあるんですわ」

「何い?」


 しかし考えてみれば、奴隷市が盛んということは奴隷の調達も盛んということだ。

 そして奴隷なんてものは正規品ばかりではない。

 さらわれて奴隷になっているような間抜けも一定数いるだろう。


 マホは余所者で一人で、見かけは非力に見える。

 日が落ちてしばらく経つが戻ってこない。


 まさかとは思うが、さらわれる間抜けの一員になっていないだろうな。


 マホは攻撃魔法こそ使えないが、ああ見えて杖での戦いはかなり強い。

 相手がゴロツキだろうが肉弾戦で遅れは取るまい。


 だがそうは言っても一人だ。

 このゲドー様を除けば、世の中に絶対などない。


 俺はディナーを綺麗に平らげると立ち上がった。


「仕方あるまい。この俺が直々に探しにいってやる」

「お気をつけて」


 俺は外に出た。

 もう夜だが、露店の明かりのおかげで歩くのに不自由はしない。


 マホの奴。

 この俺の手を煩わせるとは、後でしつけが必要なようだな。


 とはいえ不本意ながらあいつがいないと俺も困る。

 くそが、面倒なことだ。


「おい」

「へいらっしゃい」

「マホを見なかったか?」

「……どんな方で?」


 使えない奴だな。

 マホで通じろ。


「青色の髪の杖を持ったローブ女だ。小さい」

「ああ、小さい……。午後あたりにうちの商品を見ていきましたねえ」

「どこにいる?」

「なかなか目当ての奴隷が見つからないとかで、裏路地のほうに行かれましたねえ」

「そうか。大儀だ」


 そういえば俺の奴隷に対する注文について、難易度が高いとか愚痴を零していたな。

 普通なら余所者なら立ち入らない区域まで足を伸ばしたのだろう。


 俺は裏路地に赴く。

 露店が立ち並んでいるが、雰囲気が暗い。


 売りに出されている奴隷の質も違う。

 こいつらもさらわれてきた奴隷かもしれんな。


「おい」

「へい」


 俺はいかにもな悪人面の奴隷商に声をかける。

 奴隷商はこの俺を値踏みするように見つめる。


「マホを見なかったか」

「どんな方で?」


 マホで通じろよ。

 全く使えんゴミだな。


「青色の髪の杖を持ったローブ女だ。小さい」

「ああ……小さい」


 得心がいったように奴隷商が頷く。


「それならこの路地裏を通って、もっと裏通りに行きましたわ」

「大義である」


 俺は細い路地裏に立ち入る。

 歩く。


 唐突にぞろぞろと、4人のゴロツキに囲まれた。


「へっへっへ、ここは通行止めだぜ」

「悪くねえ身体つきしてやがんな」

「まあまあ高値で売れそうだぜ」

「ウホッ」


 ククク。

 そういうことか。


 さっきの奴隷商とこいつらはグルだな。

 俺は口角を釣り上げた。


「抵抗すんなよ。痛い目にはあいぎゃお!」


 俺はゴロツキを殴り倒した。


「てめえ!?」

「やっちまえ!」

「ウホッ!」


 ドカッバキッグシャッ!


 俺は全員をのすと、一人のゴロツキの胸ぐらを掴み上げた。


「ひっ、ひいい。許してくれ!」

「聞きたいことがある。素直に教えれば命だけは助けてやる」

「なっ、何だ!?」

「青色の髪の杖を持ったローブ女をさらったな? 小さい」

「小さい……あ、ああ。それなら確かにさらった」


 ついている。


「どこにいる」

「あ、あっちの奴隷倉庫だ。さらった奴隷は全部そこに」

「そうか」


 俺は4人のゴロツキを殴って全員気絶させた。


「ふん、有象無象どもが」


 俺は奴隷倉庫に向かう。

 あろうことかこのゲドー様をさらおうとしたのが運の尽きだ。

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