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ゲドー様の必殺メガトン

 山のふもとに洞穴があった。

 見張りと思しきゴブリンが2匹立っている。


「どうするのです?」


 遠目に見ながら、マホが俺に聞いてくる。


「ゴブリンごときにどうするも何もあるか」


 俺は鼻を鳴らすと、ずかずかと洞穴に近づいていく。

 黙って俺に続くマホ。


「ゴブ?」


 俺たちに気付いたゴブリンが間の抜けた声を上げる。


「ゴミども。別に恨みはないがどうでもいい。死ね」


 俺が宣言すると、片方のゴブリンが棍棒を振り回しながら襲い掛かってきた。

 俺はそいつを拳で殴り倒した。


「逞しいのです」


 マホが俺を褒める。

 まあ確かに俺の肉体は、魔法使いにしては相当鍛えられている。

 少なくともゴブリンごときに負ける道理はない。


「ゴッブー!」


 もう片方のゴブリンが高らかに叫んだ。

 どうせ仲間でも呼んだのだろう。


「さっさと出て来い。まとめて塵にしてくれる」


 ぞろぞろ。

 洞穴から数匹のゴブリンが出てきた。


「何だこれだけか。まあいい、さっさと――」


 ぞろぞろぞろ。

 洞穴から数十匹のゴブリンが出てきた。


「多いのです」


 ぞろぞろぞろぞろ。

 洞穴から数百匹のゴブリンが出てきた。


「おいィ!?」


 どこにこんなに詰まっていたんだこいつら。


「ゴッブーーーーーーーーーーーーーー!!」


 数百匹のゴブリンが飛びかかってきた。


「うおおおお!」


 俺は先頭の1匹を殴り倒す。

 2匹目を殴り倒す。

 3匹目を殴り倒す。


 4匹目の棍棒に殴られる。

 5匹目に蹴られる。

 6匹目7匹目8匹目にのしかかられる。

 9匹目10匹目11匹目たくさん。


「ぐぼあああああああ!」


 ドゴッガスッボカッバキッ。

 フルボッコにされる。


 あああああ。

 痛い痛いやめろゴミどもくそがあああ。


 ふとゴブリンとゴブリンの隙間からマホを見る。

 あいつやばいんじゃないのか。


 俺は口をあんぐりと開けた。


 マホは杖をスイングし、次から次へとゴブリンをぶっ飛ばしていた。

 こ、こいつ強え……。


 マホに近づくゴブリンがどんどん吹き飛んでいく。

 だがしかし。


「きりがないのです」


 数百匹とかアホかよ。

 いくら何でも増えすぎだろ。

 そりゃあこれだけ大量のゴブリンに畑を荒らされたら、村も寂れるわ。


 そして俺もまずい。

 いくら常人以上の自然治癒能力があるとはいえ、これだけ四方八方からボコられたらそのうち死んでしまう。

 何より痛いんだよくそが。


 マホが耐えかねて詠唱し、魔法を発動させる。


「トラエルシーダ」


 マホの周囲に結界ができて、ゴブリンの接近を防ぐ。

 ってお前だけかよこら。


「ぐおおお……」


 俺はゴブリンどもにボコボコにされながら、必死に這いずってマホに近づく。

 手を伸ばす。

 魔力だ、魔力さえあれば。


 あとちょっと。

 もうちょっと。


 マホがちょっとだけ手を伸ばし、俺の手を握った。

 よし。


 魔力が流れ込んでくる。

 マホが手を離そうとするが、俺はしっかりと握り締める。


 まだだ。

 もっとよこせ。

 俺の怒りはちょっとやそっとじゃ収まらん。


 しかしそろそろ身体のほうが限界だ。

 骨や内臓が悲鳴を上げている。


 俺はマホの手を離すと、顔を上げた。


 よくも好き放題やってくれたなゴミカスども。

 肉の一片も残さず消え失せろ。


「メガトン――」


 轟音。

 俺を中心に大爆発が起こった。


 熱と爆風と衝撃が巻き起こり、土煙が一帯を覆う。

 結界に包まれたままマホが吹き飛んでいくのが見えたが、まあ結界があるから大丈夫だろう。


 土煙が晴れた後には、クレーターの中心に俺だけが佇んでいた。

 ゴブリン数百匹分の手や足や頭や肉片があたりに散らばっている。


「ふははははは! ゴミどもがバラバラに吹き飛びおったわ!」


 しかし爽快ではあるが、ゴミの跡形を残すとは、やはり俺の魔法も万全ではないな。

 ちっ。


「わー」


 マホが戻ってきて、棒読みでぱちぱち拍手をした。


「派手なのです」

「500年前の俺なら、こんなものじゃあない」

「伝説の邪悪な大魔法使いは恐ろしいのです」

「語呂が悪いから伝説か邪悪かどっちかにしろ」


 俺はクレーターの中心に座り込む。

 全身ボロボロでさすがに厳しい。

 まあ多少は気が晴れたからいいがな。


「ゲドー様は大丈夫なのです?」

「放っておけば治る」

「では治るまで待つのです」


 マホが涼しい顔で、俺の側にちょこんと座る。

 どうでもいいがこいつ、俺が吹き飛ばしたことへの文句は一言も言わないんだな。

 なかなかの根性をしてやがる。


 とはいえこいつも自分だけに結界を張っていたし、お互い様か。


 俺は足手まといになるような女は好きではない。

 そういう意味では、今のところマホはまあ合格点だ。


 これからもこの大魔法使いゲドー様のために、よく働いてもらうとしよう。

 光栄に思えよ。

 ふはははは。

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