邪悪な大魔法使いは封印されてしまった!
「ふはははは! メガトン!」
俺の魔法で扉が壁ごと爆砕した。
ゆっくりと歩みを進める。
急ぐ必要は全くない。
俺の行く手を阻める奴など、どこにもいないからだ。
ずいぶんと風通しのよくなった視線の向こうには、謁見の間。
そこには鎧姿の騎士がずらり。
「邪悪なる魔法使いゲドー! 騎士の名誉にかけてここは通さん!」
ゲドーとは俺のことだ。
そしてこいつらは有象無象だ。
「メガトン」
轟音と共に雑魚騎士どもがまとめて吹き飛ぶ。
俺は床に敷かれた赤いじゅうたんの真ん中を進む。
やがて目的のものが見えた。
「邪悪なる大魔法使いよ。我が国を敵に回して、いったい何が目的ですか?」
国王と姫がいた。
「お前が国一番の美姫と謳われたムーンカシーナ姫か。なるほど、噂に違わぬ」
「……何が望みです」
「お前をもらってやる。しもべとして長く使ってやるから有り難く思え」
「な……」
国王と姫が絶句している。
何だ、女一人のために一国を敵に回したのがそんなにおかしいか?
力があってほしいものがあれば、奪い取るのが当然だろうが。
「そうはいかぬ。貴様のような邪悪なる者に、娘をやるわけにはごぺぱっ!」
国王が立ちふさがったが、邪魔なので殴り倒した。
俺は姫の眼前まで進むと、ムーンカシーナ姫のあごに手をかけた。
「今からお前は俺のしもべだ。もちろん死ぬまでな」
俯いていた姫が顔を上げる。
額に汗をかいていたが、口元は薄らと笑っている。
「何がおかしい」
「あなたの思い通りにはなりません。国中の神官が総力を挙げて、あなた一人のために作り上げた封印を受け取ってください」
「何……!?」
突如、足元から眩い光。
床に巨大な魔方陣が浮かび上がっていた。
「ぐがっ……!」
身体から力が抜けていく。
鎖でがんじがらめにされたかのように身動きが取れない。
俺は膝をついた。
「がっ、あああああああ!」
くそが!
くそがあああ!
人々に畏怖と恐怖を込めて、邪悪なる大魔法使いと呼ばれたこの俺が!
大魔法使いゲドー様が……!
顔を上げると、姫の顔が見えた。
美しいその顔に勝ち誇った表情を浮かべている。
……ぶっ殺してやる。
この俺を愚弄した罪を、必ず償わせてやる。
俺の意識は途切れた。
俺は封印された。